アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
親睦会の班決め-1
-
学園では毎年の恒例行事として入学して間もない一年生の親睦を深めるために、学園の裏山を登ったあと川辺で飯盒炊爨をする事になっている。
ついでに「大自然の家」と呼ばれる宿泊施設に一泊して、更に仲間意識を持とうという厄介なオプションつきだ。協調性にかける俺にとっては全くだるい行事だと憤りを感じてしまうのだ。
ひとクラス40人を5人ずつの班に分け、連帯責任という名の罰ゲームにビビりながら、ルールで縛られた息苦しい環境の中、仲間達と共に一つのことをやり遂げよう、みたいな感じが息苦しくて仕方が無い。
俺はお情けで、空いているグループに人数集めとして拾われる身なので、班決め合戦に参加する必要は無い。今回も人数が集まらなかった班に混ぜてもらう事になるだろうと、皆が決め終わるまで目を開けて瞳孔を開いたまま薄く寝るという秘技を披露していた。
しかし一人の男の存在が俺の平和な微睡を壊しやがった。朝丘陽向だ。こいつは席替えをして俺から遠くの席へ離れた地点で用済みだと思っていたのだが、何故だかしつこく絡んで来るのだ。一時期の百瀬を思い出させるやつだが、百瀬よりもはるかに強引なのでウザさも半端ない。
班決めに対して何か特別な思い入れでもあるのか、班長に立候補したと思えば積極的にメンバー集めを開始して、ちゃっかり俺の名前を記入しやがったのだ。それを見た連中は朝丘が俺に脅されているんじゃないかとコソコソ話をしている。腹立たしい。
「朝丘くーん。僕達も入れてよ」
キャッキャッしながら我がクラスのチワワ男子達が寄って来た。
「悪いな!今回は男臭さをテーマに集めてるんだ。君たちのようなかわい子ちゃん達には向かないと思う。また次の機会にな!」
かわい子ちゃん達……けっ。虫唾が走るとはこういう時に使うのだなと心のメモにそっと書き足しておいた。
かわい子ちゃん達と呼ばれたチワワどもは、大喜びで頬を染めながら「次は絶対に一緒だよ」なんて言いながら去って行った。とっとと消えろ。
俺がなぜここまで不機嫌かというと、カレー係に任命されてしまったからだ。朝丘のやつ班長命令だとかで勝手に決めやがって、職権乱用にも程があるぞ。
てっきりレトルト食品でも温めて、ご飯にかけるだけだろうと楽観視していたら、野菜を切って炒めて煮なければならないと説明を受けた。それを知った時は、当日に使うズル休みのネタを探したものだ。
それすら先読みされて、当日の仮病は徹底的に調べるし、寮の部屋まで迎えに行き無理矢理にでも連れ出すつもりだから覚悟しておけと、言ってる内容からはかけ離れた爽やかなイケメンスマイルで宣言されてしまった。
今までにないキャラなので扱いに困っている。こいつに俺の不気味さは通用ぜず、何が面白いのかやたらと構って来るので裏があるとしか思えない。
朝丘が喧嘩の強い百瀬に密かな憧れを抱いているのは本人が隠しもしないので知っている。俺を通して百瀬とお近づきになりたいのか?とも考えたのだが、俺は同室者の名前を誰にも知らせていないし、百瀬にもかなり厳しく口止めしているので寮長ぐらいしか知らないはずだ。
あともう一人、百瀬と仲の良い中等部では生徒会長で王子様と持て囃されていた神崎だけは知っているそうだ。
カレー係くらいでごねるとか恥ずかしいヤツ~と思わないで欲しい。カレーは俺の一種のトラウマだ。
親父が帰って来なくなってからは、半額シールが貼られる時間帯を立派な体格をした主婦たちに紛れてスーパーで戦いぬき、商品を勝ち取った俺は鶏肉と玉ねぎだけのシャバいカレーを作り置きして飢えをしのいでいた時期があるのだ。
カレーばかりで飽きが来た頃には、カレーの材料すら買うお金がなくて、給食のみで生きながらえていたのだが、その虚しい生活を嫌でも思い出してしまう。
今日こそ親父が帰って来るんじゃねえかと静かに期待して、親父に食べさせたくて鶏肉は多めに残し、俺は玉ねぎばかりのカレーで我慢していた。
結局帰って来なかったがな。
その頃のギャンブルにも似た生活に思いを馳せていると、声をかけられてしまった。
「佐藤くん大丈夫だよ。僕もカレー係だから一緒に頑張ろうね」
ーーん?こいつ誰だっけ?
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
34 / 96