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兄からの電話-1
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親睦会から無事に帰った俺は、体力の限界が来て、リビングのソファーに沈んでいた。
百瀬は相変わらず化け物並みの体力が残っているようで、風紀の仕事が残っているからと言って、これから学園に行く為、制服に着替えに自室に引っ込んで行った。
滅多に鳴る事のない俺のスマホが着信を告げたので、驚いて飛び上がってしまったが、誰にも見られていなくて良かったとホッとしながら通話をオンにすると、懐かしい兄の声が耳に穏やかに響いて来た。
兄は元気だったかと普通に話を進めると、向こうの大学の話をしたり、俺の学園が有名私立校で設備が整っているから羨ましいと言い出した。
おまけに俺に好きな人は出来たのか、と呑気に聞いて来たのだ。
何も無かったかのように振る舞う兄の声を、信じられない思いで聞いていたが、流石に大人しくは出来なかった。
「好きなやつ作ってる場合じゃねえだろ!家庭がバラバラになってんのに、なに平気ぶって話してんだよ!」
俺が切れているにも関わらず、相変わらず飄々とした態度で話を続ける兄に困惑してしまう。
『僕は、こっちで好きな人ができたよ。まあ、この世で一番好きなのは隼人くんだけどね』
何でそんなに冷静な声を出しているのかと腹が立った俺は、どうしても強い口調で噛み付いてしまった。
「なんであっさり俺を置いてったんだよ!俺がほんとに好きなら、もっと足掻けば良かっただろ!」
『……隼人くん。好きだからこそ僕は君から離れたんだよ』
「何だよそれ、意味がわかんねえ」
『君の感情は、僕に対する同情なんだよ。初めはそれでいいと思っていたけどね。君からは恋愛的な愛情を求める事は無理なんだと気が付いたんだ』
ーー同情?本当にそれだけだったんだろうか。
『弟になる君にこんな不埒な気持ちを抱くのは、禁忌だと分かっていたよ。でも我慢する事は出来なかったんだ。本当にごめん』
「待て!謝んのは俺の方だろ!あぁもう頭がこんがらがって来た……立て前は要らねえから本音で話せよ」
あくまでも冷静な兄は『分かったよ』と明るく言うと、俺と出会った頃から遡って話をしてくれたのだ。
******
和也は両親に愛情と期待を込められて、大切に育てられた。
必要なものは買い与えられ、無駄なものはなぜ無駄なのかと納得するまで説明をされたので、無闇矢鱈と欲しがったりはしなかった。
両親は和也の事をあまり子ども扱いをせず、ひとりの人格者として接してくれた。
そんな親に認められたい、期待に応えたいと思うようになり、勉強もスポーツも全力で取り組んだ。
そして面白いように結果も伴って来ると、両親が喜ぶ姿を見てもっと向上していきたいと思い、努力を惜しまなかった。
そうしている内に、品行方正な優等生に仕上がっていったのだ。
ただ親に褒められたかっただけなのに、根付いた優等生キャラはなかなか崩す事が出来ず、息を抜く事が難しくなっていった。
誰にでも優しく、校則はきちんと守り、成績も常にトップを維持する。しかも生まれつき美形だった和也は文句なしの人気者だった。
しかし本人は時にはむかつく相手もいたし、優しくすれば付け上がられ嫌な思いも沢山した。
自分がモテているのは分かっていたが、影ではやっかみもあり、人知れず嫌がらせも受けた事があったのだ。
制服だって少しはお洒落に気崩したかったし、髪も染めてみたかった。
いつしか成績上位を狙い、テストの点数を上げる事が第一目標になった頃には、勉強ですら苦痛に感じるようになっていった。
そんな窮屈で息苦しい毎日を送っていると、限界が来るのは当然で、いつ壊れてもおかしくない状態になっていた。
そんな時、弟ができると両親から告げられたのだ。
全くの他人ではない従兄弟を子供の頃は何回か見たことがある。
叔父夫妻は人付き合いが苦手だったので、殆ど親戚の集まりには参加しなかったこともあり、従兄弟の存在も忘れかけていた。
その日連れて来られた従兄弟……もとい弟になる隼人は痩せこけて、薄汚れた服を身につけていた。
詳しく話を聞くと、叔父が家を出てしまい一人になった小学生の隼人が苦しい生活を強いられていた、というショッキングな内容だった。
しかし不思議と可哀想だとは思わなかった。むしろ生命力の強い隼人という男の子に強く惹かれていった。
逆境にもめげず必死で生きようとした隼人に憧れを抱き、ただならぬ感情を持った和也は、それが初恋だとすぐに気がついたのだ。
しばらくすると隼人はまともな生活のお陰で健康的な明るい男の子になり、その存在は和也の癒しになった。
和也はまだ幼い隼人に恋をした自分に嫌悪していたが、どんどん好きになっていく気持ちを抑える事は出来なかった。
苦しい日々を癒してくれる大切な存在に洗いざらい話した後、隼人がそれまで以上に自分を大切にしてくれるようになり、かなり救われたのだ。
予備校帰りに年上の男性に声をかけられた時は驚いたものの、好きな男の子がいるので応えられないと言って断った。
すると将来その相手と上手くいくように男同士の交わり方を勉強してみないかと提案されて、身体だけの関係が始まった。
その男性に抱かれて家に帰ると、その男性と隼人を置き換えて自分を慰めた。
そんな日々を続けていたが、結局技術は高められても心の中はいつも冷めていたし、虚しさが残るばかりだった。
それでも好きだという気持ちは押し隠し、いつまでも隼人のそばに居たいと思い続けて適度な距離を保っていたある日、隼人の夢精を知った和也は隼人に大人の魅力を感じてしまい、我慢の限界を超えてしまった。
それからはめくるめく官能の世界に溺れ、愛する隼人と繋がれた事にこの上ない幸せを感じていたが、同時にいつかは終わる関係だとも思っていた。
隼人の好意は決して恋愛感情ではないと気が付いていたのだ。成長期に強い快楽を覚えさせられ、ある程度の依存はあるものの和也は愛されていると自惚れる事はしなかった。
それに隼人は和也の両親にも引け目を感じていたし、自分との関係に悩んでる節があった事は悲しいが感じていたのだ。
それでも隼人に身体だけでも愛されたいと思った和也は、関係を断ち切る事が出来なかった。自分は弱かったのだ。
だから、両親に見つかった時には、もうこれ以上隼人を縛り付けないで済むのだと、ほっと胸を撫で下ろしたのだ。
自分のものと隼人が和也を思う感情は違うものだ。やっと解放してあげられる事に安心して、胸のしこりも残さずスッキリした気持ちで海外へ旅立てた。
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