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俺の会いたかった人-2
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イケメン4人に囲まれた貧相な俺は、かなり浮きまくりだが、久々に友達とワイワイ出来たことに感動している。
大杉が気を使って先に学園に戻ると言い出したので、じゃあ皆で帰ろうぜと俺は言ったのだが、最初から打ち合わせでもしていたかのように百瀬と俺を置いてさっさと帰ってしまった。
「佐藤、やっとふたり切りになれたな」
尻尾を振りまくった駄犬がおかしな気を起こさないように、わざと素っ気ない態度をとるしかない。
「夕飯でも食って帰るか?」
百瀬は爛々と輝く目で何回も頷くと、夕食にはまだ時間があるからデートしようぜと提案してきた。
「デートって何するんだよ。俺付き合ったこと無いから分かんねえ」
「あ!俺もだった」
こんなにモテる男なのに、付き合ったことが無いと聞いて信じられなかったが、百瀬が嘘をつくとも思えない。
「セフレは居たくせに、恋人は居なかったんだな」
憎たれ口をたたく俺を相手にせず、こぼれそうな笑顔で隣を歩く男を愛しいと思った。目的も無いままただ二人で歩くことが、こんなに楽しいとはな……。
「お前よぉ、本当にケチだよな。今日ぐらい飲みに行っても罰は当たらねえだろう」
少し砕けた口調の男の声に気を取られた俺は、何気なくそちらへ顔を向け、釘付けになった。
その男は黒のシンプルなTシャツを着ており、胸には「男気」と赤い文字で書かれていた。彫りの深い顔に金髪の巻き毛、長身で色白な所を見ると、どこか外国の血が混ざっているのかもしれない。
だが、俺が釘付けになったのはその男ではなく、隣に歩いているケチだと言われた中肉中背の男の方だった。
ふと懐かしくて切ない気持ちで心をいっぱいに満たされて、一時も目が離せなくなった。
その男は少し伸びた黒髪を後ろで一つに束ねている。少しよれた白のワイシャツに、濃いグレーのスラックス姿だ。どこにでもいそうなくたびれたオッサンというイメージだが、俺が見間違えるわけが無い!
「親父(おやじ)!」
確信を持った俺はその男に向かって大声で叫んでいた。騒がしかったその場が瞬時に静まり、親父と呼ばれた男は俺の顔を見ると、一瞬固まり目が落ちそうなほど見開いた。
「は、やと?……隼人!」
しかし俺の名前を呼んだかと思えば、ハッとした表情をして逃げ出してしまった。ここで逃がしてたまるかよ!俺はなんの迷いもなく走り出していた。
「佐藤、あの人を追えばいいんだな?任せろ」
俺よりも断然早い百瀬が重い本を抱えていながら、猛スピードで駆け出していった。俺もそのあとを追ったが普段の運動不足が祟って足がもつれそうだ。
その時後ろから男気Tシャツを着た男が俺をひょいと荷物のように抱えあげ、百瀬のあとを追って走り出した。ぐっ、腹が苦しい。
いくら俺がしょぼくて貧相な体をしているとはいえ、一応176cmのまあまあ長身の男だ。その重さをまるで感じないかのように走り続ける男に驚いていると、徐々にスピードが緩まって立ち止まり、そっと俺を降ろしてくれた。
「郁人、いつも話してる愛息子だろ?何も逃げなくてもいいだろうが」
「角松……だが俺は合わせる顔がないんだ」
百瀬に捕獲され腕を掴まれている親父が、苦しそうに言葉を吐き出すと、泣きそうな顔でうなだれている。
この男気Tシャツの伊達男は角松と言うそうだ。角松の話によると、親父は普段から俺の話をしていたようだ。それを聞いただけで胸がいっぱいになり、我慢ができなくて頬を生ぬるい涙が伝って落ちた。
「おじさん。俺は佐藤の友人で百瀬と言います。いきなり初対面で手荒なことをしてすみません」
親父を掴んでいた手を離し、百瀬が自己紹介を始めた。親父はハヘッ、と間抜けな顔になり、こちらこそどうもどうもと挨拶を返している。
「「ぶはっ」」
角松と涙も引っ込んだ俺が、そんな二人を見て同時に吹き出すと、親父が顔を赤くして照れくさそうに微笑んだ。
「感動の再開が台無しだな。郁人、俺の家に連れてくぞ。いいな、ちゃんと話し合えよ」
そう言いながらお前いい味出すな、と百瀬の肩をビシバシ叩いて大笑いしている。俺はこの角松って人を一目で気に入ってしまった。
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