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深夜、リビングで物音がして顔を出すと、冷蔵庫を開けたまま、藤崎が缶ビールを傾けていた。
「藤崎さん」
俺が名前を呼ぶと、藤崎は疲れた顔で微笑んだ。星と月を起こさないように自分の部屋に俺を連れて行く。
「なんであの時間、帰って来たんだ?」
本来だったら、今日の午後、藤崎は帰宅する予定だった。
「出張中も、お前たちの様子は監視カメラでチェックしてた。慌てて月が電話をかけているのが見えたからな。硝の体調が急変したんじゃないかと思って、予定を変更して帰ってきた」
「硝は大丈夫なのか?」
「ああ。風邪を拗らせて肺炎を起こしていたが、一週間ほど入院すれば良くなる」
藤崎はベッドに座る俺の横に、少しも距離を開けずに座った。
「お前も今日は疲れただろ?眠いんじゃないか?」
そう言いながら、藤崎が俺の目の下を親指でそっと撫でた。
「別に眠くなんてねえよ」
色々なことが一辺に起こったせいで、体は疲れているのに、気が高ぶって眠れそうになかった。
藤崎が、スキンヘッドに殴られた俺の口元をゆったりと舐める。
「じゃあ、眠くなるように運動しようぜ」
いつもは反抗的な態度をとるところだが、今日はその考えも悪くないと思った。
俺が口づけを返すと、藤崎がくすりと笑った気配がした。
藤崎は俺を押し倒すと、口の中に舌を差し入れた。口の中で暴れる舌が、傷口に触れ、俺は小さく声を漏らした。
「痛いか?」
「別に」
俺の答えに、藤崎はまるで自分が殴られた様な顔をした。
そっと傷口に触れ、何度もそこに口づける。
「海、こんな目に合わせてすまない」
俺をぎゅっと抱き締めながら、藤崎が言う。
俺はその言葉に目を見開いた。
こいつ散々俺のことを楽しそうに殴ってきたくせに、こんなことで謝るのか。
俺は藤崎の不思議な倫理観に眩暈がする思いだった。
多分こいつは自分で決めたなら、俺が犬と交尾しているところでもワインを飲みながら優雅に鑑賞できるだろう。だが、自分の知らないところでは例えひっかき傷ひとつでも俺につくのが許せないような気がする。
こいつが異常なのは、はなから分かっていたが、今日改めてそれを思い知らされた気分だ。
「海。星と月を守ってくれたんだろ?ありがとな。お前は優しい子だな」
先ほど星に言われたのと同じ言葉なのに、藤崎の口から出ると、泣きつきたいような気持になる。そんな自分に愕然とした。
何が嫌だって、こいつの異常性を分かった上で俺がそんな風に感じることだ。
こいつは甘やかすのがうまい。それがこいつのやり方だと分かっても、逃げ出すこともできないのに、一体どうやってその手を拒めばいいのだろう。
「今日はたくさん気持ちよくしてやるからな」
俺の内心の葛藤など知りもしないように、藤崎が耳元で囁いた。
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