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やっと長い1日が終わって帰る準備をする
ふと窓の外を見てみると楽しそうに笑って2人で帰っている律と海の姿が見えた
ツキリと胸が痛む
自分で言い出したこととは言え僕が立てなかった場所に海は立っている
僕は自信が持てなくて、昼休みの30分関友達として隣に座ることしかできなかった
嫌われないように顔色を伺って、律の話を聞いて、それでもそんな時間だけが僕の宝物だった
「すげえ悲しそうな顔、いい気味」
「う、わっ…びっ、くりした」
声が聞こえて前を見ると2人の男子生徒が立っていた
昨日の朝、僕に馬乗りになって殴ってきた人と、昼休みに突然殴ってきた人
我ながら、自分を殴ったことのある人がこんなに沢山いることに呆れる
「忘れてたとか言わないよな?放課後ゆっくり聞かせろって言っただろ?」
「あ、はい…特に話すこともないんですけど…」
「俺らが聞いた事に嘘なく全て正確に答えろ、嘘ついたらどうなるか分かってんだろ」
「分かりました」
彼等が聞いてきたのは、本当に律と付き合ってたのか、とかどうして付き合うことになってどうして別れたのか、とか
迅さんとはどういう関係なのか、とか
今海と律が付き合ってるのは本当か、とか
本当にただただ質問してきただけだった
それらに全て正直に答えた
聞いているうちに気づいたのだが、おそらくこの人たちは海のことが好きなのだろう
信者だ
海が律のことを好きなのはこの人たちから見ればすぐに分かることだ、両思いであることも分かるはず、それなのにどうして付き合っていなかったのか不思議だったんだろう
「最後の質問だけど、さっきあの二人を見てる表情からして、お前は近藤律のこと好きなんだろ?
なのになんで浮気なんかした?それも二人にバレるようなところで」
「…それを聞いてどうするんですか」
「うるせえ、気になるだけだ、お前は正直に答えるだけでいい」
「…言わなきゃダメですか」
「早く答えろ」
強く言われて、答えようと思っても、考えがまとまらない
そもそも僕は浮気をしたつもりはない
迅さんとの行為は無理矢理だったものでお互いになんの感情もなかった
でも律からしてみれば僕が他の人と関係を持っただけでダメだったんだろう
それなら僕はたしかに何度も浮気していたことになる
律と付き合っている間にも学校で無理矢理犯られたこともある
でもそもそも律の中に僕に対する気持ちは海と会った頃から薄れてきていた
別れる直接の原因と言えばそこだろう
「何考えてる?誤魔化さずに早く答えろ」
「…ただ、僕に律の心を留めておける力がなかった、それだけです」
「でもお前が浮気をしたから近藤律はお前と別れたんだろう、そもそも、浮気の相手は誰なんだよ」
そこを聞かれると色々とややこしくなってくる
迅さんとはなんの関係もないただの同室仲間だと言ってあるのに、浮気をしたのが迅さんだと言えば相手は必ず怒るだろう
「僕を海の代わりに抱いてきた人達その他諸々です」
嘘は言っていない
「…まあ俺らもお前に淫乱だなんだ言ってきた身だからあんまりとやかく言える訳では無いけど、不憫な奴だな」
「つまり無理矢理やられたことを浮気だって言われて別れたのか、しかもお前は海を守るために犯られてたのに」
「お互いに納得してのことです」
この人たち、なにを絆されてるんだろう
憐れむような目が心地悪い、調子が狂うので恨むならとことん恨んで欲しい
そんな目には慣れていない
「もう、いいですか?帰っても」
「お前と海は双子なんだよな?」
「はい、証拠なんてないですけど、まあ姿形を見ていただければ」
僕は海とは似ても似つかない汚い存在ではあるけれど、他人から見れば似てるんだろう
それこそ代わりにできるくらいには
「…誕生日おめでとう」
「は、?」
思わず声が漏れてしまった
誕生日、おめでとう?
今までは海にしか言われなかったし、言わなかった言葉
そうか、今日、誕生日だったのか
だから、律と海が、2人で帰っていたんだ
僕に嬉しそうに話してきたように、ケーキを作って2人でささやかにお祝いをするのだろう
ダメだ、最近どうも涙腺が緩んでいる
「ありがとう、ございます…」
「それくらいで泣くか?」
「まあ、表立っては何も出来ないけど、頑張れよ
今まで色々と悪かった、勘違いしてたみたいだ」
2人は去っていった
「海、誕生日おめでとう」
小さく呟いて寮に戻った
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