アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
文化発表会準備2
-
遥「2人とももうご飯食べたの?」
郁人「うん,それでまぁ食後の軽いウォーキング?的な感じで色々歩いてた」
隆彦「ここの学園って昼休みが長いからな」
遥「そうなんだ」
郁人「ハルは?」
遥「僕?僕はまぁお昼ご飯は…てへ?」
隆彦「また食ってないのかよ…そんなんだからこんなに細いんだよ!」
そう言いながらタカくんは僕の腰を掴んだ。
遥「ちょと,離して~」
郁人「ハルはこれからどこか行くの?」
僕とタカくんのやり取りをいつもながらのスルーでかわしたイクが訪ねてきた。
遥「僕は屋上に行こうかと思って」
郁人「そうなんだ。一緒に…あっ,ご一緒してもよろしいですか?姫」
遥「イクそう言うのはやめてって言ってるじゃん。恥ずかしいよ,人前で…」
隆彦「人前じゃなかったらいいんだな…」
遥「そうは言ってない。でもいいよ。行こ?」
こうして3人で会うのは久しぶりでついつい口元が緩む。道中クラスでの出し物を話していた。
隆彦「じゃあ主役は遥なんだな」
遥「うん,あんまりやりたくはないんだけどね」
郁人「なんで?ハルの白雪姫可愛いと思うよ?」
遥「可愛いか可愛くないかとかじゃなくて僕はほかのクラスや学年の人達に嫌われてるから…。
僕なんかが主役をやってイメージが悪くならないかなって…」
事実今もいろんな感情の視線が僕に向いている。
イクやタカくんに迷惑じゃわないか不安でいっぱいになっている。でも前にこのことを言ったら叱られたので言わない。
郁人「うーん。いいんじゃない?
そう言うのは気にしなくてもさ。だってみんなだってきっとハルが今言ったこと分かってると思うんだ。
それを踏まえてもハルがいいって言ってくれたんだよ思うよ?」
屋上の扉を開きながらイクがそう言う。
そうだと嬉しいんだけど…正直不安しかない。
隆彦「そんなに心配なら俺に任しとけって!ぜって大丈夫にしてやるからさ!」
遥「タカくん…」
隆彦「ん?」
遥「脅して回る気?」
隆彦「違うわ」
どつかれました…。痛いです。
遥「痛いなもう…。それより2人のクラスはどうするの?」
郁人「俺らのクラスは歌だよ」
遥「無難なところだね。やっぱり劇や歌,そういった類のものがやっぱり多いんだね」
隆彦「まっ簡単だしな」
あの日からよく来ているここ。
フェンスに指をかけ下を見る。少し前までピンク色だった当たりは今じゃすっかり緑色。
時が流れるのは速いものだと実感される。
遥「あのさ…」
隆彦「ん?」
郁人「なあに?」
遥「もしも僕が突然2人の前から姿を消したら…どうする?」
僕と2人のあいだに風がふいた。
僕の命は今も削られている。それは2人の速度よりもずっと早く。1ヶ月に1度の検診の日,月山先生に叱られた。
月山『あのね遥くん,何度も言うけど薬は多くとればいいって言うわけではないんだよ?
この薬はそれなりに強い。副作用だってある。心配なのは分かる。他人にバレたくないから必要以上取ってしまうのはよくあるケースだけどね…たくさん飲めば飲むほど体にも悪いし,効果も薄れていく。いい?気をつけるんだよ』
分かっていた。
沢山飲んでも意味が無いことも…。
もしも僕が普通の家に生まれていたのなら,家族や友人に助けを請うのだろうか。
イクやタカくんに泣いて生きたいとすがりつくのだろうか…。
『助けて』
その一言は僕が今まで何度口に出すのを我慢して飲み込んだんだろう。いや違うな…。
いつからその言葉を言っても意味が無いと,誰も僕を助けてなんかくれないと気づいたんだろう。
自然の音だけが響く。
2人とも言葉を発してはくれない。
フェンスから空を眺めているため後にいる2人の顔は見えない。迷惑だったかな。
郁人「…ハルはさ何かほってたらほんとに消えそうで怖いと思うことはあるな。
いつも人のことばかり気にかけて自分のことはほったらかしてて…」
隆彦「近くにいるはずなのに遥だけどこかに行っちまう気がして。
俺は遥がいなくなったら探す。どんなに時間がかかろうとそんなの関係ない。それでも見つからなかったら…まぁ,うん」
郁人「俺も探す。ハルは俺らの親友だもん。勝手に消えたら許さないよ。…でも見つからなかったら…」
郁人/隆彦「泣くかな」
驚きを隠せず2人の方を向く。
その顔はふざけている訳でもなくて本気で言ってて。
思わず困り眉でふにゃりと笑ってしまった。
遥「泣くんだ…」
隆彦「泣くな」
郁人「うん泣くね」
2人のその言葉が嬉しくてでもどこか胸がぎゅっと痛くて…2人がぽんっと頭を撫でてくれる。その手が優しくて暖かくて…。2人が帰ると言った時,僕はギリギリまでいると言って残った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
27 / 222