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昔の夢16
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"家族"
本当の家族は知らない。
次に出来た家族との血の繋がりはなかった。
呼び方もずっとさん付けだった。欲しいものがあれば買ってくれたし,欲しくなくても買ってきてくれた。
貰ったものは数え切れなくてその中にはちゃんと優しさもあったんだろう。
けれど僕は1度も「好きだ」と言われなかった。
誰にも…。鈴谷夫妻にもシン達にも。でも違った。
言われるのを待つのが正しいんじゃない。
自分から行動に移して自分から言ってみることが大切なんだと。
シンの腕の中から無理やり出る。
3人の前に自分から行く。
驚いた顔を隠そうとはしていないと言うより出来ていない3人は固まっている。
遥「家族と言う言葉で縛るのが怖かった。普通の家族には僕達はどう頑張ってもなれないから。だから必死になって3人に嫌われないようにしてた。本当は誰かとの繋がりが欲しかったの」
ずっと欲しかった。
人との暖かい繋がりが。けれど面倒くさいと思われるのが嫌で3人に好いてもらえるように,捨てられないようにって自分を繕ってた。
遥「本当はずっと誰かに"好き"と言われたかった。永遠なんて言葉は存在しないと他人は言うけれど,けど僕はずっと繋がっていられる絆が欲しいの」
頬を伝う涙には気づかない振りをする。
目をそらしたい。けど逸らしちゃいけないんだ。自分の面倒くさいところもちゃんと見てもらわないと…。本当の家族にはなれないから。
瞬「ふっ…」
最初に口を開いたのは瞬さんだった。
僕の腕を引き僕を自身の胸の中に収める。そしていつもはしないのにぎゅっと抱きしめられた。
遥「しゅ…」
瞬「俺は…お前がここに来てからずっと家族だと思っている。血の繋がりがあるのが普通だと世間が言うのなら最初から俺は普通なんざ願い下げだ」
そういい僕のおでこにキスを落とす。
いつもは絶対しないような行為に僕は目を見開き顔を赤らめる。
瞬「クク,俺は遥が好きだ…まぁ俺はお前ら3人の保護者だけどな」
僕だけではなく大人な2人の保護者でもあるみたい。
僕の涙腺は崩壊しそうなほど涙をためていた。
麗「じゃあ次は俺だよな」
遥「?」
麗「瞬さんちょっと借ります」
ひょいっと効果音が付きそうなほど軽々と持ち上げられ瞬さんと同じように抱きしめられる。
瞬さんの次は麗の香りに包まれる。
麗「俺は瞬さんともシンさんとも違って親や保護者というよりは弟のように思ってる。初めてあった時からずっとだけど…。」
遥「れっ…」
麗「心外だよね…俺そんなに信用ない?血の繋がりとかそんなの蹴散らすくらいの勢いで行けばいいんだよ!!俺らが付いてるから,な?俺も遥が好きだよ」
たまっていた涙はこぼれ落ちる。
止める術を無くしたようにただただ流れて…。
瞬「おい,シン。いつまでそうやってるんだ」
麗「そうっすよ!!ほら遥です。次はシンさんの番ですよ?」
そう言いながら麗は泣いている僕をシンの方に向け腕で軽々と持ち上げられ前に出される。
まだ驚いているようなシンは僕を視界に入れた途端これまで以上に強く優しく抱きしめてくれた。
深海「遥!!俺達は多分普通じゃない。きっともう普通には戻れない。裏の世界の住人である俺たち3人はもう表の世界には戻れない。だから俺達と家族になれば遥はもう表だけど住人じゃあいられなくなる。だから"好き"というのはやめていた。」
それは初めて聞くシンの本音。
嘘偽りのない喋り方。本当に思っていたこと。
シンもずっと考えて悩んでいたこと。
深海「遥,俺はお前が好きだ。大好きだ。お前達3人を愛している。遥?俺達はちゃんと家族になろう。今日ここからまた始めればいい」
少し体を離し僕の顔を見ながら笑を浮かべこちらを観ている。シンだけじゃない。瞬さんも麗もいる。
僕はその夜初めて大声で泣きわめいた。
喉がかれるほど,泣きすぎて目が真っ赤になるほど。
それでも泣き足りなくて…。
その間ずっと抱きしめていてくれたシン,ずっと見守ってくれた瞬さん,ずっと声をかけてくれた麗。
12月24日の明け方
僕は家族が出来た。
それは普通とは呼べないもので。
けれど大切なんだ。やっと素直になれた。
2度家族を失い,誰も好きにならないと決めていた。
けれど僕とシンの歯車は重なりそして瞬さんと麗の歯車を重なった。
一人ぼっちの
黒猫は家族を手に入れたのでした。
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