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風邪をひく5
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要side
俺が…悪かったんだろうか。
今,目の前で儚い笑を見せる遥が言った答え。
噛み締めるようにゆっくりと紡がれた"大切な家族"という言葉は何故か重みがあって。
ただ気になっただけだったんだ。この3日遥は寝言で「シン」とずっと言っていた。
時折「瞬さん,麗」とも言うこいつはまるでそいつらに助けを求めるかのように縋り,涙を流した。
その度俺は自分のタンスからタオルを取り拭いてやる。まるで何かを探すようにさまよう手を俺の手と重ねたり。俺らしくもないことばかりして…でもその度安心したように手を強く握って眠るこいつを可愛いと思ってしまった自分がいた事に1番驚いた。
要「お前は…」
遥「ん?」
要「お前は普段絶対に弱音をはかない。誰かに頼ることもしない奴だ」
遥「…」
眉を下げ困ったように笑うこいつを一昨日の夜,着替えさせる時驚くほど軽かった。
そしてその細い体にはいくつか傷があった。古い傷。
要「熱出した時くらいたまには甘えろ」
遥「ふふ,なんか要って瞬さんみたい。瞬さんにも甘えろって言われた記憶が沢山あるよ」
そう楽しそうに笑う遥を見ているだけの俺はこいつに何をしてやれるんだろう。限られた時間共にいることのできない俺達。長い人生の中でほんの1,2回の瞬き程度。
その程度の俺が…いや,こんな言い訳をしなが深く関わることを恐れている中途半端な俺が何をどう変えることが出来るんだか。思い上がりもいいところだ。
隣で柊の奴が作ったお粥を頬張る遥。
俺が今考えたことは所詮偽善者の考えできっとその遥のいう"家族"とやらは行動に移したんだ。
だから4人は"家族"になれたんだろう。
踏み込めない偽善者の俺と"家族"になるために行動をしたそいつらとの違いは明白だ。
これは俺の想像だが多分遥の言う"家族"はきっと血が繋がっていないだろう。そしてその3人は男なんだと思う。
俺はいつか聞くことが出来るだろうか。
こいつの抱えるものを。そして俺も一緒に抱えてやることが出来るのならば…。
自分には出来ない事だと諦め俺はまたこいつから逃げるのであった。
それが後悔を生むことになるなんてこの時の俺は何故気づかなかったんだろうか…。
この時もしも俺に踏み込み勇気があったら…なんて叶わない願いを抱えることなんてなかったのに…。
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