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文化発表会当日12
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出てきたのはいいけど…ダメかも。
寒い。とりあえず下に降りてるけど身体が震えている上手く歩けない。
思い出したんだ…。
全部,全部。自分がなんで捨てられたかも。
シン…シン……助けて。
逢いたいよ。おの大きな身体に飛びつきたい。
いつものように抱き上げてほしい。いつものようにおでこに,頬に,優しいキスをしてほしい。
肩口に頭を置いてあの少しのタバコと,お酒の匂い…後シンの暖かい香りを胸いっぱい吸いたい。
1階に着いたものの体育館に向かうべきか保健室に向かうべきか迷う。
体育館にに行ったとしても体調は変わらない。
だからといって保健室に行くともしかしなくとも来るのは橘先生だ。
苦手なんだ。
熱の時,発作を起こした僕を助けてくれたのは橘先生だけど2人になると僕の過去を探ろうとする。
あの目が…怖い。
そんな時だった。
体育館に繋がっている渡り廊下から複数の足音が聞こえた。
誰だろ…こんな時に。
物陰に隠れるようにして向かってくる人達に耳をすました。けれど強ばった体はすぐにそこの声を聞き力が抜けた。
ふらっと物陰から姿を出す。
拓也「どこにいっ…あっ遥センパイ!!」
壁に身体を預けた状態で呼ばれた方へ向く。
よく見れば年下組から少し離れた後ろの方に残りのメンバーの顔も見える。
和也「もぅ~遥センパイ酷いですよ…何も言わずにどっか行っちゃうなんて~」
遥「ごめんね?」
壁から背を話した時その勢いでタオルケットが下へ落ちる。
大輝「寒いのか?」
僕が手を伸ばすよりも先に大輝くんの手がそれを拾った。
遥「少し…」
笑ってみせるけど手足の感触はもうほとんどない。
僕のことを数秒見たあと自信が着ていたブレザーを脱ぎ僕の肩にかけた。
大輝「寒いんだろ…着とけ」
遥「でも…いいの?今日正装の日なのに」
基本的高等部に来る時は中等部生徒は正装をしなければならない。
大輝「いい,俺はかっちりした服嫌いだがら」
遥「でも…」
大輝「黙ってろ」
持っていたタオルケットを頭からかぶらされ言葉が遮られた。
…申し訳ないけど甘えさせてもらおう。
郁人「良かった。迷子にでもなってるかと思ったよ」
柊「ここで迷子になるとかはありえないでしょ~」
和也「…有り得ますよ。遥センパイ,中等部校舎で迷子になっ」
遥「和くんお口チャック」
和也「…言い方可愛い」
何かを呟いた和くんはほっとこう。
…さてどうしたものか。迎えに来られてしまったとなるともうどこかの空き教室で休むわけにも行かない。
俊樹「…遥,お前随分と暑苦しい格好だな」
遥「少し寒くて」
要「それ誰の着てんだ」
遥「これ?大輝くんが貸してくれた」
郁人「ハルって小さいからすっごくぶかぶかだね。ただでさえ低いのにがもっと低身長に見えるよ」
小さいとか,低いとか,低身長とか…。
全部当回しだけど直訳すればぜーんぶ"チビ"って事だよね…。
隆彦「…」
遥「?」
ずっとこっちを向いたまま何も言わないタカくん。
不思議に思い首を傾げてみる。それでも動かないし喋らない。
«グイッ»
遥「わっ…」
やっと動いたと思ったら思いき手を引かれた。
何も身構えていない体はいとも簡単にタカくんの腕の中にすっぽりと収まってしまった。
拓也「ちょっと…何してんのさ」
和也「公衆の面前で手を出していいと思ってるの?」
棘のある言葉を受けながらもタカくんは僕の頬と首に手を沿わした。反対側の手は手首から滑るように手に触れる。
途端真剣な顔が一変し酷く驚いたような顔になった。
そしてただでさえ近い身体はタカくんに抱きしめられる形で包まれる。
隆彦「おい!誰でもいいから急いで体育館に居た保険医呼んでこい!!」
郁人「ちょっ隆彦どうしたのさ急に」
遥「タカくん?」
隆彦「いいから早く!!柊っていったか,お前保険医の従兄弟だろ走って呼んでこい!!おかしいと思ったんだよ…確かに涼しいが毛布かぶるほど室温は下がってねぇよ」
未だ誰もタカくんの焦りの意味が分かってはいない。
意味が分からずただその焦りに圧倒され押し黙っている状態だ。
隆彦「遥お前…身体が有り得ねぇぐらい冷えてる」
郁人「え?…ちょっとごめんハル」
少しだけの隙間ができ顔を上げる。
そうすればイクがタカくんと同じように頬と手に触れる。
郁人「ッッ…俺呼んでくる。保健室前で待ってて。柊って言ったよね君。君も着いてきて」
イクはほおけている柊の手を引っ張り体育館へと走って行ってしまった。
それを眺めていると急に浮遊感が襲ってきた。
隆彦「捕まっとけ遥…誰でもいいから先に行って保健室を開けてもらってくれ」
何かを言おうとしたけど頭が上手く回らない。
言われた通りタカくんの服を掴むことしか出来ない。
何かを察したのか大輝くんが僕の方に目を向けすぐに職員室へと走っていった。
その後ろを俊樹もついて行ってしまった。
遥「タカく…」
隆彦「頼むから体調が悪いなら悪いと言ってくれ…お前手が震えていた。何を考えてんのかは知んねぇけど迷惑がかかるって考えてるなら殴るからな」
僕は服越しに伝わる体温と心音を最後にそこで意識を遮断した。
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