アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
最期の願い ※死設定
-
その日がくることは、誰もが平等にあることで、それがいつ来るかはランダムに決められる。
何故それがイマ、自分の番なのかなんて、答えは誰も知らない。
ただ確実にそれは目の前にあり、逃げることのできない現実であること。
それだけが確かなことだった。
少し体調の悪い日が続き、病院に行ったら突如告げられた『余命』
信じられなくて...受け入れられなくて、現実から目を逸らす。
ただ静かに、確実に、病魔は俺を蝕み、それが現実だと突きつけられた。
「洸ちゃん?」
少し振らつく俺に、心配そうな名瀬の顔。
だけど、まだ彼は知らない。
これから何が起きるのか。
「なんでもない」
助かる見込みは無いと聞いて、俺は病院での治療を拒んだ。
それなら最後まで大切な人と居たいから。
お涙頂戴なんてストーリーは好きじゃない。
だから、何も言わない。
ー言えるわけ無い。
どうしたら綺麗な想い出で彼の中に遺れるかな?
名瀬は俺が居なくなっても、笑って生きてくれるかな?
居なくなる俺が考えるのは傲慢なのかもしれない。
だけど考えずにはいられない。
喪うことの怖さを知っているから、勝手だけど心配させて。
後何回名瀬に抱かれることができるのだろう。
狂おしいほど愛しい気持ちは、何度身体を重ねても変わらない。
「...とも、もう1回シよ?」
普段は言わない言葉に訝しがりながらも、再度自身を奥に挿れ突き動かす。
もっと、何も考えられなくなるまで、ぐちゃぐちゃにして欲しい...。
涙で濡れる頬にキスをし、強く抱きしめながら何度も絶頂へと誘われる。
もう無理だって思った瞬間に意識が薄れていった。
些細な出来事の積み重ねでアナタとの日々は繰り返された。
特別なことなんかじゃなくて、当たり前の毎日。
それが幸せだって気づかせてくれたのはアナタだった。
仕事をこなしながらも、名瀬との逢瀬は今まで以上に増えた。
幸せだと感じる日々。
だけど、異変はすぐに襲いかかる。
仕事中に倒れて気づけば病院へ運ばれていた。
「洸ちゃん!洸ちゃん!!」
涙ぐむ名瀬の顔。
医師から病名を聞かされたんだろう。
命がもう終わりかけてることも。
それは医師への伝言だった。
倒れて運ばれてきたら名瀬にだけは伝えて欲しいと。
「な...せ、笑って?」
俺の声を聞いて、どうしようもないくらい困った表情になる。
「ごめん、ね...何も...言わなくて」
「洸ちゃん、ヤだよ。こんなの、イヤだ」
手を伸ばし、名瀬の頭を撫でようとするが、全く力が入らない。
もうこんなにも身体が言うことを聞いてくれないなんて...。
「洸ちゃん...!」
もがく俺の気持ちが伝わったのか、名瀬がギュッと手を握る。
「好き...だよ...。だ、から、泣かないで...」
涙でいっぱいの名瀬の瞳。
大好きなのに、泣かせたくないのに...。
「キ...ス、して」
きっと最期のお願い。
それを理解して、名瀬は優しく口付けしてくれた。
何度も、何度も...。
「洸ちゃん、俺も大好き。絶対洸ちゃんのこと忘れないよ。綺麗な顔も、可愛い声もその仕草も、甘えん坊でわがままなとこも...洸ちゃんの全部が好き」
涙目で、最高の笑顔。
最後にその顔見れたから、もう大丈夫だよね?
「あ...りが、と...」
微笑んで、目を閉じた。
泣かないで、アナタの笑顔が好きだから。
消えいく俺がたった一つできることは、アナタの笑顔を守ること。
今は泣いてもいいよ。
でもこれから俺を思い出す時は、笑ってて。
ずっと見守ってるよ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
6 / 44