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5 鶴見はだめっ子!ぐず!ヘタレ!
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◆ ◆ ◆
俺はうちのクラスのやつらが昼休みをどこで過ごしているか、きっちり把握している。
お気に入りの場所だけじゃない。
もしそこが他の生徒に占領されていたときに逃げ込む第二、第三の候補地も頭に叩き込んである。
たとえ、どんなに影が薄くて、地味なやつでも絶対に見つけられるのだ。
「鶴見《つるみ》っ!」
二階のトイレの右から三番目の個室。
ここに例の男が潜んでいることを俺はお見通しだった。閉ざされたドアを今すぐ蹴破りたい衝動をこらえながら、やさしくノックする。
「聞きたいことがある。出てこい、鶴見」
「うひゃああああ!」
薄っぺらいドアの向こう側、パーティが催されているような物音がする。
ワアワアと歓声をあげたり、拍手したり、地団駄を踏んだり、壁を叩いたり。
「おい、鶴見。聞いてっか?」
もう一度ドアをノックすると、今度は息を殺したようにシンと静かになった。
間も無くして、音もなく扉が開き、なかから青白い指がぬるりと這い出してきた。そこからすぐに出てきてくれると思ったが、指はとまったまま動かない。
この妙なペースに合わせていたらきっと日が暮れるだろう。
じれったくなって、ミミズみたいな指を思いっきり掴み、体ごと外に引っ張り出した。
「あうっ!」
逃げられないようにしっかり抱きとめてやると、鶴見は俺の胸に顔をうずめて「ぷぎゅう!」とパンクしたタイヤのような声をあげた。
毛量がやたら多くてマッシュルームみたいにもっふりと膨れた頭がくすぐったい。
鶴見はだいぶチビだ。
俺よりも頭一つ半ぐらいは小さい上に、とてつもなく丸い猫背。
せめてしっかり背筋を正せば、それなりのスタイルに見えるだろうに。
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