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163時間
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「おーはよー。なおちゃん。昨日ズル休みしたろ」
「……おはようございます、なんで普通に話しかけてくるんですかねアンタは」
「ヤバイ、反抗期じゃん。副担任なんだから普通じゃなーい?」
先生は普通だった。一昨日あったことも全部忘れてしまったのか、いつも通りだった。俺はその態度にまた落胆して、ため息をかき消すようにイスを引く。先生の顔を盗み見ても、ただ微笑んでくるだけだった。いつも完璧なその笑顔に押し負ける。
「先生ー、つかぬことをお聞きしますけど、昨日、俺の夢の中に遊びにきました?」
「ンーなにそれファンタジー?そんなことができるなら全生徒の夢の中に遊びにいって、宿題忘れんなって言ってやりたいねー」
「デスヨネー。」
やっぱり夢は所詮夢でしかないんだよな。ただ、たださ。やっぱり消えてくれないんだ、この胸の、この数字がさ。ずっと俺の胸の上にあるんだ。しかも少しずつ、数が減っていくんだ。
「先生、俺の左胸になんかみえます?」
「米粒なら見えるけど」
「ウッソ!!」
「うっそー。はいはい、そろそろホームルームはじめよっかー、今日宮園先生お寝坊みたいだからねぇ」
ほんと食えない先生だ。担任の宮園先生の痴態を平気で晒したりするし、俺のことは簡単に騙すし。だけどそのおかげでクラス中から笑いが起こる。…俺は、いつも先生に救われている。馴染めなかったクラスでも、先生のおかげでこうやって馴染めているんだから。胸の数字が166に切り替わる。怖い、これ、なんのカウントダウンなんだろう。
ホームルームが終わると、165に。二限目の授業の途中に164に、三限目の終わりに163に。一時間ごとに数字が減っていくことに気がついた。
そして確信した、この数字は 一時間ごとに一つずつ減っていくんだと。やっぱり何かのカウントダウンなんだ、そっか。もしかしたら俺は、163時間後にはこの世に居ないのかもしれない。なんのファンタジー?なんのオカルト?信じられないな、これで小説でも書けそうですね。
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