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127時間
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帰りは肉まんを買って貰った。二人でコンビニの前で肉まん食べながらどーでもいい話をしてさ、あー肉まん食ってる先生かわいいなー、実は猫舌とか犯罪級に可愛い。ふーふーと冷ます仕草も、それをみて笑うとすこしむっすりした顔をするのも、可愛い。そんなこと考えながらシャッターをきると、先生は眉間にしわをよせて「盗撮は犯罪ですよ」なんて言ってきた。犯罪はアンタの可愛さですよ、と返してやりたいのを飲み込んで「恋人の写真撮るのが夢だったんですよ」とか適当に返して、俺も肉まんを頬張る。
幸せだなーと思いながら、ふわふわした気持ちで帰宅路を歩く。胸の数字は着々と減っていく。127になってる数字、もうあんまり気にならなくなっていた。
明日死んでも構わない、そう思ってしまうほど、先生の傍にいるのは心地いい。
好きだな、やっぱり好きだ。寒がりなのか厚手のコートに長いマフラーをした先生の背中を見つめながら歩いた。落ち葉を踏みながら、俺の前を歩く先生と白い息。カメラを構える時間ももったいないとばかりに、穴が空くほど先生を見つめる。先生は俺の視線に気づくと、「すけべ!」と言って意地悪そうに笑う。可愛い。
「俺、こっちだからね。夜道気をつけるんだよ、学生。」
「男だから平気です。それより先生、バイバイが寂しいっす」
「ははっ、よーしよし、また明日も明後日も会えるよ」
来週は会えないかもしれないけどな。だから一分一秒も無駄にしたくないね、先生の傍にいたいね、アンタの胡散臭い笑顔を見ていたいね。贅沢してるよ、俺。
「ちゅうしてください」
「はい?今?ここで?」
「誰もいないとこでするもんなんでしょ」
「いやいや。たしかに誰もいないけど。…ほんとクソガキだねぇ、もう。ほらちょっとかがみなさいよ、俺のお口が君の唇まで届かないから」
「えっ、口にしてくれんの?!」
「はぁ?……あー。そっか、なおはお子ちゃまか。」
「嬉し死ぬかもしれないです、今、俺すげー幸せ」
「………幸せ、ねぇ。それはよかったよ。」
俺より随分背の低い先生のために少しかがむと、先生は俺の耳と頬に手のひらを添えて、耳元で一度、ちゅ、と恥ずかしい音がした。そしてすぐ、唇に。あ、そっかよく考えてみたらこれ、ファーストキスだ。
よかった、死ぬ前にキスというものを体験できて。それにしても先生、手慣れてるなぁ。やっぱり大人なんだな。
するり、と離れていく先生の手のひら、体温、あぁ、もう。名残惜しいです、好きです、好きです、大好き。
「おやすみ、また明日ね」
そう言ってくるりと背を向けた先生の背中、やっぱり俺はじっと見つめることしか出来なくて。せめて背景に混ざってしまう前にとシャッターを切るのでした。
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