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僕と嘘。
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(.....ここは......どこ....?)
目を開けているのに周りは真っ暗だ。
夢の中だろうか。
すると、男の人の声が近づいてくる。
「ふざけるな! お前のせいで!
お前がいるだけで、俺は不幸になるんだ!!」
どうしてそんなことを言うの?
僕が何をしたって言うんだよ....!
「やっぱりあの時に手放せばよかったんだ!」
やめて。 やめてよ。
お願い.....!
「この.......疫病神め.....!!!!」
「................っ...!!」
「....はぁ.......はぁ....。」
僕は飛び起きる。
またこの夢か。
夢の中で叫んでいたのは誰だったろうか。
「...............痛い......。」
心がズキズキする。
今日は霧咲君と一緒に登校すると言うのに、
朝から気分は最悪だ。
この夢は何度も見て来たが、
未だに詳しいことは分からない。
僕はこの歳になっても、
自分で自分のことを把握しきれていないところがある。
もしかしたら、
思い出さないようにしているのかもしれない。
そう考えると、僕は都合のいい人間なのだろうか。
時計に目を移すと、いつも起きる時間になっていた。
早く準備しなきゃ。
待ち合わせの駅に着くと、
柱に寄りかかって寝落ちしかけている霧咲君を見つける。
「...おはよう.....ございます.......。」
僕は緊張気味に声をかける。
「あっ、真白。 おはよー。」
霧咲君は眠そうな顔で返事をする。
「....眠そうですね......。」
「うん。朝には弱いんだ。」
霧咲君にも弱いものがあるのか。
「それよりも、俺は真白の体調が気になるな。」
「.....えっ......。」
さっきまで眠たそうな顔をしていた彼が、
急に真面目な声で話し始める。
「いつもより元気がないし、顔色が悪い。」
「何かあったの?」
何故君がそんなことを気にするのだ。
理由はわかっている。
朝見た夢のせいだろう。
けれど、このことは彼には言えない。
言ってはいけない。
「.....いえ.....何も無いですよ.......。」
不自然な程、目線を落として答えてしまう。
これは僕が嘘をつく時の癖だ。
「真白。 嘘ついちゃダメでしょ。」
やはり彼にはバレてしまった。
だが、この話は彼に聞かせるものでは無い。
嘘だとバレていても、否定し続けなくてはならない。
「....嘘なんて.....ついてませんよ.....。」
少し声が震えていただろうか。
「....そっか..。」
霧咲君は意外にもあっさりと諦めた。
しかし彼の口調は悲しげだった。
何故だろう。
「さぁ。 行こっか。」
彼はこの重い空気を吹き飛ばすためか、
いつもの笑顔でそう言う。
朝から彼に気を使わせてしまった。
嫌だな。
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