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12月24日
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クリスマス・イヴ。
敬虔な聖教徒でもない癖に、イベントの時だけ躍起になって張り切るのは日本人が根っからのお祭り気質であるが故か。
由良は珍しく心が冷めていた。
筋肉は頬を上げ、口の端を上げ、目尻を下げて笑顔を象る。
けれど紙で作った色とりどりの輪っかの飾りも、モミの木も、目の前のケーキにも由良の心はピクリとも動かされない。
ご馳走にはしゃぐ自分より年下の子供達を尻目に、ソッと由良は施設を出た。
毎年の事である。
なんとなく、本当になんとなく、由良はそういったイベントが好きではなかった。
それが自分の生い立ちのせいだとは思いたくなくて、けれどそれ以外の理由を見つける事も出来ず“なんとなく”という言葉で誤魔化している。
なんとなく、苦手なのだ。
団欒というものが。
キラキラ輝くイルミネーションに彩られた街並みに、恋人達が溢れている。
波を泳ぐ。
宛もなくふらふらと、スルスルと………人波に揺られていると気が紛れる。
それは本当に偶然で。
だからこそ、きっと必然で。
運命なのだと、思った。
「………犬塚さんっ」
行き交う人々の群れの中、俯き孤独を纏って歩く犬塚とすれ違い、咄嗟にその腕を掴んだ。
「触るなっ」
触れるや否や、凄まじい勢いではね除けられた手は宙を舞い大きな声は一瞬、周りの人々の足を止める。
可哀想なくらいに真っ青な犬塚の顔を見て、由良は………愛しいと、思った。
「………こんなに寒いのに、お前の掌が温かいのはなんでなんだろう」
薄く笑って、掠れ震える声で呆然と呟く犬塚に由良もまた、薄く笑った。
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