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「これで3冊目なんだ…せっかく金貯めて買ったのに、またハズレで……仲間も死んじまったし、もう気力がねぇよ…」
3冊目
こんな高い本を3冊買うほど、沢山のクエストやモンスターを倒してお金を掻き集めて、やっと買えて
それなのに……
「ーーーっ、
ちょっとその本見せてもらっていいですかっ!?」
力が抜けた手からスルッと本を取って、パラパラ読んでみる
(こ、れは……)
確かに、この本は1つのパーティーがレベル35のIDをクリアした時の話が書いてある
ーーーだが、このパーティーはこのIDを1回しかクリアしていない
たかが1回で攻略した気になって本を書いて、それをこんなに高い値段で売って…
(1回じゃ、分かるものも分からないじゃん……っ、)
モンスターの攻撃は基本的にランダムだ
だから、もしかしたらこの目の前で項垂れてる人が受けた攻撃は、攻略本のパーティーでは出てこなかったのかもしれない
最低10回は行かないと…IDの全ては分からないと思う。
(はっきり言って、どっちもどっち…かな……)
こんな付け焼き刃のような1回行っただけの攻略本を出す方も出す方だし、買う方も買う方だ。
(でも、それでもこんな本に頼らなきゃ…やっていけないんだ……)
そうだよ、だって死ぬかもしれないんだから。
高いもの買って少しでもそのリスクを減らせるのなら、みんなこぞって買うに決まってる
(っ、悔しい……、)
…これなら、いっそ僕が攻略本書いた方がいいのでは?
最安値で売って、少しでもみんなを救いたい。
(でも、まだ僕このIDクリアしてないし…もしTMと違う場面あったら、僕の本も〝ハズレ〟って言われちゃう……)
その為にも、4年前の記憶を掘り出して書くより目の前のIDを確かめながらクリアするのが先決だ
現状はとても酷い。
きっとここのIDじゃなくもっと上のレベルのIDでも、同じようなことが起こっているはず…
「ーーーっ、ぁの、」
「……?なんだ?」
「もう一回、今度は2人で行きませんかっ?」
「……………は、?」
呆然とする目の前の人を、しっかり見つめる
「僕だったら、クリアまでいけます…行ってみせますっ。5人じゃない分リスクはあるけど、でもーーー」
「な、何言ってんだてめぇ!!」
ガシッ!と両肩を思いっきり掴まれた
「〝僕だったらクリアできる〟だと…?自惚れてんじゃねぇよ!お前に何ができる!それに、ここ5人用IDだぞ!?それを2人だけで行くとか自殺行為にも程があるだろ!」
(っ、あはは…確かにそうかも、)
僕何言ってるんだろうね。
もう何十回もパーティー参加を断られて、頭がおかしくなったのかも
「大体、てめぇ弓だろ!?そんな弱ぇ職に命任せられるかよ!それにお前、見るからに弱そうじゃねぇか!!」
「ーーーっ、!」
今日何度も聞いた、その言葉
(嗚呼……)
僕の中で、何かが切れた。
「……明日の朝8時、この場所に来てください。」
「は、?」
「最高に信じられる攻略本をお渡ししますので。
僕が現れなかったら、死んだと思ってください。」
「ぇ、ちょ、おま、」
呼び止めようとする声をフル無視して、フラリと立ち上がる
そして、そのまま
「っ!? おい、やめろ!!」
全速力で、IDの中に入っていったーーー
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