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Aschenputtel:灰かぶり
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翌朝、眼が覚めるとすぐ隣には兄さんがいた。
「昨夜はシンデレラと随分楽しそうだったな」
その声に血の気が引く。昨晩の情事を見られていたのか?だとしたら、シンデレラがひどい目に…
「お母様にはバレてると思うよ。だからか、今朝からシンデレラの姿が見当たらないんだ。」
「…そんなっ!お母様は?!!」
「先程散歩から帰られたよ。」
僕はその言葉を聞いてお母様の元へ飛んで行った。お母様は不愉快そうに眉をひそめる。
「何です、騒々しい。」
「シンデレラはどこです?!」
「あの子?あの子は…そうねぇ、今頃母親の墓にでもいるんじゃないか?」
鈍く光るお母様の瞳は人としての何かが欠如していた。僕は走って裏庭の墓地へ行くと、シンデレラは声を押し殺すように泣きながら彼の母親の墓を磨いていた。タールで真っ黒に汚された墓を。どんなに磨いたって落ちるわけない。それでも必死になるシンデレラに僕はいたたまれなくなって、裏手の資材置き場のタールを取ると僕は優雅に紅茶を嗜むお母様にかけた。お母様は発狂して怒り狂うが、僕はそれ以上にお母様を恨んでいる。なぜああも酷いことができたのか、せめて少しでも頭を冷やせと僕はお母様を無視して再びシンデレラの元へ向かった。
結局墓は元どおりにはならなかった。泣き腫らし虚ろな目で僕を見つめるシンデレラがあまりにも不憫で僕はギュッと抱きしめた。僕がそばにいたのに何もできなくてごめんと、謝って、謝って、それでも足りなくて、、、今日は舞踏会も辞めると伝えるとシンデレラはそれだけは出るようにと言った。僕は嫌だったが、家のためにと言われ仕方なく準備をして家を出た。
…
城は思ったよりずっと豪華に飾り付けられていた。玉座に座る姫様は凛として美しく、それでいて誰も寄せ付けない空気も醸している。簡単に挨拶を済ませると僕はお母様が何かしないかとその一挙一動を監視することにした。シンデレラがいない今、僕にできることなどそれくらいだ。
僕が仏頂面で壁際に立っていると、女性を引き連れた兄がやって来る。僕は逃げようとしたが声をかけられてしまい、結局兄に捕まってしまった。
「姫様は綺麗だなー」
「そうですね。」
そんなもの興味ないけど。
「シンデレラは今頃何をしているんだろうな?」
「…貴方やお母様が言いつけた無茶な仕事をこなしているのでしょうね。」
「怒ってるのか?」
「当たり前でしょう。愛する人を傷つけられれば誰だってそうです。」
「ふぅん、愛、ね。…もしシンデレラがここに来て姫に見初められたらどうする?」
「そんな事あるわけない。例えそうなったとしても僕は誰にも彼を渡すつもりはありません。」
「シンデレラが望んでも?」
「…っ……それでも、です!」
無意識に唇を噛む。シンデレラが僕以外を…今の生活を辞めたいと言った時、僕はすんなりと受け入れられはしないだろう。例えその方がシンデレラを幸せにしたとしても。僕は彼なしには生きられない。
「ところで、あそこにいる彼はとっても綺麗だけれど、どこかで見たような気がするんだよね。」
兄の言葉に広間の中央を見ると、綺麗な男が立っていた。そして、そこに姫は駆け寄り、男は跪いて姫の手の甲にキスを落とした。
「…シンデレラ?」
そのまま優雅な音楽に合わせて男と姫は踊る。その場にいる全員がその美しさに息を飲む。やめてくれ、見せつけないでくれ。シンデレラなんだろう?僕よりも姫を選ぶのか?そんなの…そんなの……
「おい、待て!!」
兄さんの声が遠く後ろの方で聞こえる。僕は気が付けばドロドロの道を走っていた。涙で視界が歪む。耳に聞こえるのは自分の嗚咽で、不思議なくらい冷静に自分を客観視していた。
仲睦まじい二人の姿はまさに絵から飛び出して来たかのように美しく華やかでお似合いだった。
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