アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
3
-
「…泣いているの?」
「…あ、」
そう言われ、頬に手を当てると確かに濡れている。知らぬうちに涙が出ていたようだ。…伊織の記憶を見たからか、伊織が感じたものが全て俺の中へと流れ込んで来てしまった。
「…僕なんかの為に泣かなくても良いのに。今見たものは全て忘れた方が良い。…次起きた時にはもう、消えているといいね」
「…恨んでないのか?」
「え?」
そう聞くと、伊織は面を食らったような顔をしたが、直ぐに困った様に笑った。
「最初は少しだけ恨んだかもしれない。けれど今はもう、慧に忘れて欲しいだけなんだ」
本当に、忘れて欲しいだけなのだろうか。今でもなお、俺に流れ込んでくる程に強く刻まれている記憶は、忘れてほしいと願っているようにはとても思えない。俺が見た記憶も、一部でしかないのだろうが。
その後は結局あまり眠れず、翌日の顔面は更に酷くなっていた。OMG。
「…おはようなぎ」
「……顔が死んでるぞ」
共通の部屋であるリビングへと行くと、眉間に皺を寄せた諒は俺の挨拶には答えずにそう言う。今日もオブラートに包む気はゼロらしい。鬼ね。
朝起きると、伊織はまだ俺の部屋から離れられないようだった。夢にまで見てしまったし、これは今日も厳しいかもしれない。
「…ちょっと寝れなくて」
「…どうでもいいが、もう時間がないんじゃないか。先に行ってるぞ」
その言葉に時計をはっと見ると、既にいつも起きる時間はとうに超えていた。オワタ。部屋に戻り40秒で仕度をしたが、諒は先に行くという言葉の通り、既にいなくなっていた。ドライにも程があるぜ。
「…っと、すみません」
遅刻遅刻〜!!と急いで教室へと向かっていると、角でぶつかってしまった。運命かよ。定番の流れか。ここで俺が食パンを咥えていたら完璧だった。…問題は此処が男子校だというところか。
「いえ、大丈夫です。ですが急いでいては危ないでょう。今後は走らないように」
「すんません……あっ」
あれ、もしかしてこの声は。と、顔を上げると案の定予想は的中していた。運命かよ。ディスティニー(笑)
.
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
15 / 28