アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
5.密の様子。誉の様子。
-
-コンコン
誰かが部屋をノックした。
東は「誉が帰ってきたみたいだよ」といづみに言った。なんで分かるのだろうか…。
「私だ。ただ今戻ったよ。」
「あぁ、おかえりなさい。入っても大丈夫だよ〜」
-ガチャ
「失礼する。ん、監督くんじゃないか。どうしたんだい?」
「あ、誉さんに用事があって帰ってくるまで東さんとお話してたんです」
「そうかい。すまないね、ちょっと待ってもらえるかい?」
「はい!」
「ふふふ。誉〜?」
「なんだい?」
「僕もいて構わないかい??」
「あぁ。”むしろ”いてほしい。」
誉はカバンを下ろし、上着を脱ぎ楽な格好をとった。
それにしても…、といづみは先程の誉の言葉に引っ掛かりを覚えた。”むしろ”いてほしいとはどういうことだろう。あまり探りを入れない方がいいと思いあえてスルーしたが、やはり気になるもので、まぁ後でわかるだろうといづみは呑気に考えていた。
誉は自分の分の紅茶を用意すると言って、東の戸棚を探り始めた。数日東の部屋で暮らしていて慣れたのだろう。目当ての茶葉を見つけ紅茶を入れ始めた。
誉が紅茶を入れている間、いづみは先程の誉が入ってきた光景を思い出した。
東はあのノックが何故誉だとわかったのか。
誉は律儀に帰ってくる時に部屋をノックすることも知った。普段から人の部屋に入る時は普通にノックはするが、基本入っても大丈夫か、と誉は聞かない。
「新しい詩を閃いたから聞いてくれ!」と言って入ってくるのがオチだ。
だが、密が熱を出し誉が東の部屋へ行くようになってから少しばかり様子が変わった。
以前のような元気がなくなり、しおらしくなった。
まあ、所構わず閃はする。が、閃いたその場で詩を読んだりすることがなくなった。
まあその話もまた後で聞ければいいか、といづみが楽観的に考えている間に紅茶を入れ終わったようで、誉はティーカップを持ち、東の隣へ腰掛けた。
「待たせてしまってすまないね」
「いえいえ。こちらこそいきなりすみません」
「それで用件は??」
「えっとですね、密さんが熱出した時のことを聞きたいんです。」
「ふむ。実はいつから熱があるかは知らないんだ。最初に密くんに熱があるのを知ったのが私というだけで…。」
「そうなんですね。その時のことを教えて貰ってもいいですか?」
「あぁ。朝食を食べた後頃かな。いつもなら朝食に降りてくるのに密くんが来なくて、今日は寝坊だろうかと思ってな。それにその日は少し仕事があって外に出ねばならなくてそのままにしていたんだ。それで稽古が始まる頃に密くんの姿をまだ1度も見てないことに気づき、部屋へ見に行ったんだ。そしたら密くんがまだ寝ていて、『起きたまへ密くん。稽古の時間だぞ』と声をかけても起きないもので…。それで苦しそうな顔をしているものだから、頬を触ったらとても熱くて…」
「あの時は本当にびっくりしたよ。誉と密が稽古に来るのをレッスン室で待ってたら誉がレッスン室まで走ってきてね、扉を思いっきり開けてびっくりしたの。それでね、『密くんが大変だ!』っていうからみんな大慌てでね〜」
「そうなんですね…。あの日私も他の劇団のお手伝い長引いて稽古の始まる時間に遅れてしまって…。それに、私が朝の時に密さんの異変に気づけていれば…」
「いや。監督くんは悪くないよ…。私がちゃんと密くんを見ていなかったから…」
「はいはい。2人ともそこまで。あまり自分を責めすぎてはいけないよ?」
「すみません。」
「すまない。」
「とりあえず、監督は左京くん達に話をしに行かなきゃでしょ?」
「あ、はい!そうです。」
(東さんなんで分かったんだろ…)
「あ、あの最後にひとつ聞きたいんですけど…」
「なんだい?」
「前日の密さんに様子がおかしかったりしませんでしたか?もしくは熱を出してからの様子がおかしかったことでも構わないです。」
「そうだね…。前日と言 いうわけではないのだけど…夢見が悪いと言っていたね。それに、第2回公演の時も少しおかしかった。」
「何がおかしかったんですか?」
「いや…よくわからないんだ。なんとなく、ぎこちないというか…」
「そうなんですか??私は全然わかりませんでした」
「僕もわからなかったなぁ」
「もしかしたら私の勘違いかもしれない。」
「いや、でも!密さんと同室だからこと、他の団員より長く時間を共有してるからこそわかることかも知れませんよ??」
「そう…なのか?」
「きっとそうですよ!誉さん、東さんお話ありがとうございました」
「いえいえ。監督困ったことあったらまたおいでね。いくらでも話を聞くよ」
「私も密くんが良くなるために何か出来たらいいのだが…。お役にたてなくてすまない」
「いえいえ!!そんなことないです!密さんが良くなるよに頑張りますね!!東さんもありがとうございます。それでは失礼しました」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
6 / 18