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夏 -4-
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でも、そこで諦めるのもおもしろくない。
どうせ難しい恋なら、攻略するところまで楽しめばいい。いつか絶対に振り向かせてやる!
そういう前向きな気持ちが、安原にはあった。だからこそここまで続いたのだろうか。
連絡先を交換して、時々二人きりで出掛けて、家にまで呼んで、恋愛初心者なりには上々の成果だと思う。根気強さも彼の長所だった。
初めて出会った調査の時、『大人をからかう』という体で少し大胆なことまでもしたことがある。
「でも、滝川さんも好きです」
「……へっ」
半分驚いて、半分引いたような表情をされたとき、安原は密かに「やった!」と思っていた。
まだ認められていないのは仕方ないこととして、引くという行為=つまりちょっとは信じた、ということだ。
この調子でいけば案外簡単に攻略できそうだ。
この頃はまだそんな風に考えていたものだが、ある時あまり手応えを感じなくなっていた。
同じ手を使いすぎて、慣れられてしまったのだ。
完全に冗談だと捉えられていた。
これではせっかくの順調なステップも、まるで意味がない。その頃から少しそういう手を使うのを控えるようになった。
でもまるでやらないと逆に怪しまれる。当人から「何かあったのでは?」と勘ぐられてはそれこそなにも意味をなさない。絶妙に使い分けてそれなりに滝川の気を引いていった。
そんなこんなを続けて三ヶ月程で、彼は滝川の連絡先をついにゲットできたのだ。ゼロから始めたにしては結構なハイペースだが、それでも安原にとっては気の遠くなるような長さだった。
むしろ『普通ではない』と分かっていながら今日まで好きでいられていることを自分で不思議に思うほどだ。
こればかりは安原本人もかなり驚いた。
それから度々出掛けたり、電話を掛け合ったり、いろんなことをやった。その一つひとつのどれもが、安原にとって自信へとつながる大きなステップであった。
出掛ける度に「これってなんだかデートみたいだな」なんて乙女みたいなことを思ってみたりもしたが、実際滝川からしてみれば『年下の友人と遊びに出掛けてる』レベルの話だった。
本気で振り向かせるには、まだまだ先は遠かった。
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