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夏 -6-
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友人との電話を切った直後、また別のところから電話が鳴った。ディスプレイには、『滝川さん』と表示されていた。
「えっ安原くん帰っちゃうの!?」
「友人が事故を起こして危篤らしくて……」
すみませんと何度も頭を下げながらも、変える準備の手は止めなかった。申し訳なさそうな表情や態度とは裏腹に、彼の心は嬉しさで満ち溢れていた。
電話の相手はもちろん、滝川だった。
「久しぶりですね。どうしたんですか?急に」
『本当に急で申し訳ないんだが、今からこっち帰ってこれないか?』
「今からですか?」
来ればいいなとは思っていたものの、まさかこんなに早く来るとは思っていなくて驚きの声が漏れる。それと同時に、やっぱりどこか嬉しかった。
本当はすぐにでも飛んで帰りたいところだが、安原は返事に戸惑う。
「僕、いま沖縄ですよ?」
『そこを何とか頼む……!俺達も緊急事態で身動きが取れねえんだよ……』
そういう滝川の言葉にはどうしようもない苦悩が感じてとれた。よほどの緊急事態なんだな、と安原は思った。
現在滝川らは、能登にあるとある料亭へ調査に赴いている。そこでいちばん頼りの所長が憑かれ、とても危険な状態なんだそうだ。
戦力が著しく低下している状態で、現場を離れるわけにはいかない状況。一分の隙も許されないのだという。
そこで安原の力が必要なのだ。
しかし、今から帰るにも着くのは早くて明日の夜ごろだ。それに何と言い訳する?さすがにもうひとつのバイトの方で緊急要請がかかったので帰りますとはさすがに言えない。
何と言うか……?
「じゃあ、滝川さんが危篤だということにしときましょう」
『……って、そこはナルちゃんじゃねえのかよ!』
「渋谷さんは別にお友達ではないですけど、滝川さんとはそれなりに親しいと思ってますから。友人が危篤ならさすがに帰してくれませんかね」
極めて明るい口調でそう言った。
嘘も方便。安原はあんがい怖いもの知らずだった。
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