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夏 -10- ※死表現 注意※
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怖いものは苦手だ。
高校に頭ごなしにオカルト批判派の面倒臭いタイプの教師がいたが、「生きてる人間の方がよっぽど怖い」という者もいるが、それでも安原はそういったものが大の苦手である。
それなのに何故こんなところにいるのか、という話だが無論滝川がいるからに決まっている。
苦手なものと好きな人を天秤にかけられるほど(そして好きな人の方が勝ってしまうほど)には、安原は度胸のある人間だった。
しかし。
(これは反則だよなあ……)
視界の先でゆらゆらと漂う人影を見て、思わず目を伏せた。
安原はその人物を知らない。名前には聞いていたが、実際にその目にかけたことはなかった。
しかしそれでも視線をそらさずにはいられなかったのは、その人物が“見るも無惨な姿”で発見されたからだ。
かたわらで泣き崩れる青年。その横で安原、滝川、リン、ジョンはそれを海から引き揚げる。波に洗われて血はほとんど流れていたが、その傷口はやはりとてもたえられたものではなかった。
熱いものが喉元を込み上げてくるのをぐっとこらえ、全員で足早にその場を引き揚げた。
吉見家の洞窟には、いつも『死体が流れ着く』。
それを安原は思わぬ形で目の当たりにしてしまった。
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