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痛みで目が覚めた。
中学を卒業したばかりの蓮は薄く目を開けると、いつもと変わらない日常に絶望し、また目を閉じた。身体の表面ばかりか、深部までもが痛む。
「いつまで寝てるんだ。」
父親が発する独特の低い声で、びくっと肩が動くが、痛みと怠さですぐに起き上がることができない。その様子にイラついたのか、脇腹を蹴られる。痛みに唸ると再度蹴られ、蓮が痛みに耐えながら慌てて身体を起こすと、満足したのか彼はキッチンに消えていく。
昨夜は酷かった。手足を縛られ、恐怖で震える身体をお構い無しに強姦された。何年も前から実の父親にされる行為は蓮の心を蝕んでいた。
いつまで寝てるんだと言われたが、まだ朝の7時だった。今日は高校に入学して10日目の朝だ。時間には余裕があるものの、汚れた身体を洗わなければならない。入学早々遅刻や欠席をするわけにはいかないと思い、蓮は痛む身体と心を無視して支度を始めた。
学校は家から電車で20分のところにある高校だ。学力は蓮の住む県では中の上であり、校風は自由を重んじるゆるい雰囲気のため、受験を控えた中学生にとって人気校であった。蓮は家から遠い高校へ通いたかったが、父親は許してくれなかった。家を出る手段が絶たれ、あと3年間も我慢しなければいけないのかと悟ったときには涙が止まらなかった。しかし、住めば都とはよく言ったもので、家を一歩出れば高校は楽しかった。まだ10日しか経ってないが、クラスのみんなは優しくて、家での出来事を忘れさせてくれるくらい居心地が良かった。
支度を終えて部屋を出ると、父親はもういないようだった。蓮の朝ごはんはない。いつものことだから、空腹感は無視して、父親がいないことにほっとしながら玄関を出た。電車に乗ると、一駅前から乗っていたクラスメイトの智樹が声をかけてくる。
「蓮、おはよう。」
おはようと返し、無意識に自分の袖を引っ張る。縛られていたせいで赤黒く変色していた。誰にも見られないように夏でも長袖のシャツを着て、人と会うときに袖を引っ張るのが癖になっていた。
他愛もない話をして学校に着く。クラスメイトには、幸いにも同じ中学だった同級生はいない。他クラスには数人いるが、一学年400人近くいるような学校であるため、誰も蓮を気にする人はいない。それが蓮にはありがたかった。中学のころの自分は、思い出したくもない過去だった。
援助交際しているとクラスの男子たちの間で噂になり、裸の写真を撮られたり、性欲処理の相手になったりした。実際、援助交際を父親にさせられていた。知らない男が何人も家にきて、泣き叫ぶ蓮を犯してお金を渡していた。外でも会った。その時に見られたのだろう。クラスメイトには、違うと言えなかった。事実をどう誤魔化して良いのか分からなかった。ただ、脅されて、裸にされたときは父親たちにされたことが蘇り、パニックになりながら泣いて謝ったが、クラスメイトたちは笑いながら写真を撮った。主犯格のクラスメイトたちは影ながらそのような行為を行っていたため、幸か不幸か、その他の生徒には、ただ蓮がいじられているように見えていただけだろう。そのせいで、本当に辛い時に助けを求めることは出来なかったが、一方何も知らない生徒がいるおかげで高校では変な噂も立たずに生活することができている。主犯格のクラスメイトたちは別の高校に進学し、卒業後一度も会うことはなかった。
「蓮?どうした?」
智樹に覗き込まれた。
「あ、な、なんでもないよ。大丈夫。」
HRが始まるまでの間、ボーっとしながら無意識に中学時代を思い出していたら、目が虚ろになっていた。慌てて正気に戻るが、智樹は心配したように蓮を見つめた。
「たまに蓮、ボーッとしてるよな。なんか思い詰めてることあったら言えよな。」
自分でも気付かないほど心に深い傷を追っている蓮にとって、心配してくれる優しい友だちに会えたことは奇跡のようなことだった。
「ありがとう。よくボーっとしちゃうんだ。癖みたいで。」
笑って応えるが、うまく誤魔化せてるか分からない。智樹はまだ心配そうな顔をしているが、HRが始まったため自分の席に着いた。何をどう、友だちに頼ったら良いのか、今の蓮には見当もつかなかった。
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