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その日の放課後、また直接町の図書館に行った。光希への気持ちを確かめたかった。図書館に入り、学習コーナーに行くとすでに学校終わりの光希がいた。光希を見た瞬間、心拍数が上がり頬が紅潮する。自分はやはり光希に恋をしているのだろうか。もしそうなら、自分が何をすべきなのか、全くわからない。
蓮に気付くと光希は笑って手を振り、コーナーを出てきてくれる。2人で休憩スペースに行くと、光希は、今日も会えたな、とはにかんで言う。その表情や言動の一つひとつにいちいちドキドキして、心臓が忙しない。光希を前にすると、心臓を落ち着かせるのに必死で、ボーッとする癖も、手首の裾を引っ張る癖も出なくなった。
光希は優しい瞳で蓮を見つめ、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「蓮、昨日のことだけど…無理にとは言わない。蓮が言いたくなったらいつでも聞くし、いつでも頼っていい。ただ、お願いだから、一人だけで抱え込まないでほしい。」
じわじわと胸を暖かくするような言葉をかけられて、思わず泣きそうになった。こんなに優しい言葉はかけられたことがない。光希くんになら、と考えてしまう。助けを求めたら、きっと助けてくれる。心身ともにギリギリのラインを保っている蓮にとっては、光希の存在は光そのものだった。でも、自分の汚い部分が露呈されて軽蔑されるのが怖い。光希はそんな人ではないということは分かる。それでも、実の父親にまで裏切られ、とことん地獄に落とされた蓮にとっては、自分のことを話すということは非常に勇気のいることだった。
「…うん、ありがとう。」
感謝の気持ちを伝えるしかできないけど、今の自分にはこれが精一杯だ。
光希は話そうとしない蓮を責めることはせず、目を細めて微笑むとクシャクシャと蓮の髪を撫でた。そのときばかりは、蓮も心から笑うことができた。
「…蓮?」
そのとき、聞き覚えのある声が聞こえた。声のする方をみると、智樹が驚いた表情で立っていた。
「智樹くん。」
蓮も驚いて名前を呼ぶと、智樹は驚いた表情から笑顔になった。
「蓮、この図書館に通ってたのか?俺今日部活休みで、テストも近いから勉強しようと思って初めてここにきたんだ。そしたら蓮がいるからビックリしたわ!」
偶然会えたことに喜びと嬉しさを感じ蓮も微笑む。その光景を見ていた光希は、制服も同じであるため智樹と蓮が同じ学校だということを理解し、ホッとしていた。智樹の第一印象は良く、蓮も信頼しているような雰囲気がある。
智樹は蓮を見ると、またまた驚いたような表情をした。
「うわ、すげーイケメン。この方は…?」
「あ、立花光希くんっていって、僕たちの一個上の先輩だよ。学校は違うけど、最近ここで知り合って…。」
ほんのり頬を染めて光希を紹介する。
「先輩なんだ!俺、智樹っていいます。よろしくお願いします。」
「立花です。よろしくね。」
蓮は、自分の大切な人と大切な人が知り合って、なんだか嬉しかった。信頼している2人に囲まれて、久しく感じていなかった幸せというものを実感する。
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