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朝のホームルームが始まる前の騒がしい教室。
噂好きの女子生徒と、それを囲むように群れを作っている男子生徒の会話が響いている。
どこのクラスにも権力を持ったボスキャラ的な女子というものがいるもので、いつも男女問わず取り巻きを引き連れ、作ったような高い声で言葉を飛び交わせている。
今日の話題はある男子生徒。
「 ねぇ!聞いた⁈ 今年入ってきた新1年生の中で、首席で合格した人、入試全教科満点らしいよっ!!」
「 うっそ!まじで⁇ バケモンだろ!」
「ほんとだって!生徒会の子から聞いたもんっ 」
「 あ、その子私も知ってる!!なんか、中学の時に陸上で全国大会出場したんだって!」
「 え、私が聞いたのは、助っ人で出たバスケの試合でバスケ部より点とって優勝したって話だったよ!!」
「 嘘だろ⁈どんだけハイスペックなんだよそいつ! あー、
バスケ部入ってくんねーかなー!」
「 俺委員会で入学式出たんだけど.......生徒代表で挨拶してた
奴....めちゃくちゃイケメンだったぞ。しかも高身長。」
「......まじで!.......漫画のキャラみたいじゃん!」
先に言っておくけど、その話は全部本当。
事実、真実、そして現実。
どうして俺がそんなこと知ってるかって?
「 その1年名前なんていうの⁈ 」
「 えーっと、確か〜........ 」
何人かの声が重なって、大音量である男の名前が叫ばれた。
「「「 桜木 千里 !!!!」」」
だってそいつ俺の実の弟だもん。
すごくすごく優秀な俺の弟。
自分の知らないところで褒められて、羨ましがられて、
尊敬され、期待を抱かせるくらいにはできの良い人間らしい。
俺とは違う人種のおめでたい人。
まぁ、血は繋がっているんだけどさ。
ちなみに千里にバスケを教えたのは俺で、入試前につきっきりで勉強見てやったのも俺。
陸上だってもともと俺がやってたことだ。
すぐに俺の真似をしたがる。
でも千里はなんでも軽く成し遂げる。
なんてことないような顔でポンッと結果を残すのだ。
だから中学の時に俺が入ってた陸上部に、あいつが入部してきた時は心底嫌だった。
案の定千里は俺や先輩の記録を出し抜いて最速を更新し、
県大会や全国大会にほいほい出るもんだから笑えた。
血の滲むような努力をしても、千里はいとも簡単にそれを上書きしていく。
それも笑顔で。
だからとても馬鹿馬鹿しくなって俺は陸上部を辞めた。
せめて高校が別になれば比べられることも無くなるだろうと思って、勉強してこの学校に首席で入学した。
千里に比べれば霞むが、もともと勉強は得意な方だった。
少しは認めてもらえるかなと思った。
そしたら千里は見事に俺と同じ高校を受験した。
俺が入学したきっかり1年後、あいつも首席で合格したのだ。
あいつは自分が1番じゃないと気が済まないタチの人間だ。
そして全教科満点。
バケモンかよ。
どうやら俺はまたあいつに縛られるらしい。
誰も俺を 「 桜木 涼 」 として見てはくれない。
あのできの良い 「桜木 千里」 の「兄」という認識。
実の親さえも、俺は千里のオマケなのだと言った。
劣っている方は要らないのだ。
俺を先に生んだくせに。
所詮そんなものだ。
いつも比べられ、千里の兄というだけで勝手に期待されて、
そして勝手に失望されるのだ。
もう飽きた。
俺は千里とは違う人間だ。
あいつみたいに欲張りじゃない。
でもみんな最終的にあいつを選ぶ。
残るのはオマケの俺。
17年間生きてきて千里に勝てた試しがない。
どうせ抜かされるのなら最初から頑張らない方がいい。
兄としてのプライドなんてものはとうの昔に捨てた。
なんのやる気も起きない。
嗚呼、なんて退屈なんだろう。
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