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「男子更衣室」と書かれた教室の、1番奥のロッカーにドサっとバックを入れて、中からジャージを引っ張り出す。
ざわざわと騒がしい男子の声が部屋に響いて煩い。
なんでみんなこんなにテンション高いんだ.......。
昼食の後の体育だぞ、死ぬよ。
ゲラゲラ笑ってじゃれあっている男子達を見てると謎に冷静になってきた。
持久走と、50メートル走はかるんだよ。
横腹痛くなっても知らないよ。
.......俺はご飯食べてないから大丈夫だけども。
でも今になってお腹空いてきたかも。
しょうがないか、さっきは時間も食欲もなかったし。
50メートル走はまだしも、持久走を満腹状態で走るのは流石にキツイから丁度良いかもしれない。
プラスに考えよう.......よし、ラッキー。
本気出して走って千里に負けるなんて恥ずかしいから、程よく
手を抜いて適当にやろう。
クラスの真ん中くらいの順番で、目立たないように。
めんどくさいな……。
「 .......あのさ、早く着替えてくれないと鍵しめられない。」
憂鬱になってため息を吐いた時、不意に背後から声をかけられて体がビクッと震えた。
驚いて振り返ると、更衣室の鍵を片手の指に引っ掛けて不機嫌そうにこちらを見ている男子生徒と目が合った。
いつの間にか、騒いでいた男子の群れはグランドに行ったみたいで、更衣室には俺と目の前の人しかいない。
体育の時の戸締りはいつも体育委員がしないといけないから、
最後の人が着替え終わるまで鍵をかけられない。
鍵を持ってるということはこの人は体育委員なのだろう。
急いで着替えないと迷惑をかけてしまう。
「 あっ、ごめん。すぐ着替えるね。」
.......えっと、誰だっけ。名前が思い出せない。
ちらっとジャージの胸元に刺繍されている名前を盗み見ると、
「 白石 」という文字が見えた。
.......白石くん、.......よし。
顔と名前を頑張って一致させた。
.......それにしても白石くんめっちゃイケメンだ。
相変わらず不機嫌そうな顔をしているけれど、
背がすらっと高くて頭が小さい。
整った顔のパーツの1つ1つもカッコいいし、短めに切られた髪は無造作にセットされていて爽やか。
こんな人同じクラスにいたんだ。
知らなかった。
ほとんどクラスの人のことなんて気にしてなかったからなぁ....
と思いながら、着替えるためにブレザーを脱いだ。
ネクタイをシュルッとほどき、シャツから腕を抜き取ると、適当にたたんでロッカーに放り込む。
上半身裸のまま体操服を手に取り、なんとなく視線を隣に向けると、また白石くんと目が合った。
すると白石くんは決まりが悪そうに目を伏せた後、ふいっと
そっぽを向いてしまった。
.......なんとなく顔が赤いような気がしたのは気のせいかな。
不思議に思いながらベルトに手をかけて下の制服を脱ぐと、
白石くんはとうとうくるっと背を向けて更衣室のドアを開けた。
「 俺.....外にいるから、終わったら出てこい。早くしろよ。」
そのままバタンッと扉が閉まって1人残される。
.......あれ?
もしかしたら気を使ってくれた?
別に女の子じゃないんだから、着替え見られたってどうってことないのに.......。
とりあえず早く着替えないといけないな、迷惑かかるし。
素早くジャージを羽織ってチャックを1番上まで上げる。
生地が厚くてごわごわするジャージは四月に着るにはもう暑い気がする。
グランド用のシューズを持って更衣室を出ると、
壁にもたれかかって鍵をいじっている白石くんがいた。
「 まっててくれてありがとう。ごめんね」
「 .......別に良い。」
待っていてくれたのが申し訳なくて、でも素直に嬉しかったから笑顔でお礼を言うと、白石くんは小さく頷いた。
________キーンコーンカーンコーン
廊下にチャイムの音が響いた。
ん、チャイム.......?
「 ねぇ、これって予鈴だと思う.......?」
不安になって隣にいる白石くんを見上げてダメ元で聞いた。
「 .......本鈴だな。」
澄ました顔でサラッと答える白石くんを見上げたまま、
サァッと顔が青くなったような気がした。
まずい。非常にまずい。
「 ほんっっっとにごめん!!!マジでごめんっ!!」
俺だけならまだしも、俺のせいで白石くんまで授業に遅刻だ。
本当に申し訳ない、俺のあほ。
とりあえず今は早くグランドに行かなければならない。
何も考えずに白石くんの腕を掴んだ。
「 行こっっ!!!!!!」
そしてもう手遅れだろうけどそのままグランドに向かって
全力ダッシュした。
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