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今まで気が付かなかったけど、今俺が着ている服は自分の物ではない。
俺の家の物ではない柔軟剤のいい香りがする、陸上の練習着のようなものを身につけていた。
俺の体より遥かにサイズがでかいソレを見つめながら
不思議そうに首を傾げた俺に気付いたのか、今まで沈黙を貫いていた白石くんが口を開いた。
「 ごめん、それ俺の部活着。お前.......結構汗かいてたから.......でも制服で寝たらしわになると思って勝手に俺の服に着替えさせた.......それ、今日は着て帰っていい。」
そしてまた申し訳なさそうに顔を背けた。
その傷ついたような顔を見てハッとした。
白石君は自分が着るはずだった練習着を俺に貸してくれ、
部活にも行かず俺が目覚めるまでここに居てくれたんだ。
元はと言えば俺が閉じ込められただけで、白石君は何の関係もないのにここまで良くしてくれたし、そもそも俺を見つけて助けてくれたのは白石君だ。
俺だって逆の立場だったら彼と同じ事をしただろう。
なのに。
それなのに俺は自分勝手な考えで、彼に腹を立てていたのだ。
先生には伝えないで欲しいとか変なこと言って白石君も困っただろうに、お礼もなしにあんな風に睨まれたらそりゃ傷つく。
つくづく自分の最低さに呆れて胸が痛くなった。
どうして俺はいつも自分のことしか考えられないのだろう。
目の前の白石君が辛そうに唇を引き結んでいるのを見て、
恩を仇で返すような真似をした自分が情けなくて堪らなくなるのと同時に、ごめんなさいって気持ちでいっぱいになる。
ふらふらと覚束ない足取りで、なんとか部屋の隅に居る白石君の所まで行く。
その場にいた全員が心配そうに俺を見ているのが分かる。
見兼ねた千里が途中で手を差し出してきたけど、それを払って
自分の力で歩いた。
ちゃんと謝って礼を言うために。
白石君に向き直って真っ直ぐに見つめた。
相変わらずの不安そうな顔で見下ろされ、またズキンと心が痛む。
「 えっと.......色々とごめん、迷惑かけた。」
助けてくれたのにひどい態度を取ってしまった事を申し訳なく思って言うと、白石君は小さく頷いた。
やっぱり.......怒ってるかな。
自分が悪いのに、白石君の素っ気ない態度に傷つくなんて
どうしようもないクズだ。
それでもちゃんとお礼を言わないと。
「 それから.......助けてくれてありがとう、本当に。」
鼻の奥がツンとした。
目の裏が熱くなってなんだか泣きそうになる。
そんな俺の顔を見て、何故だか白石君も辛そうな顔をした。
「 大丈夫、気にすんな。早く家に帰ってゆっくり休め。」
そう言って俺の頭をガシガシ撫でて、困ったように眉を下げて体育の時みたいなくしゃっとした顔で笑った。
ごめんね、ありがとう。
心の中でもう一度そう言った。
「 俺、涼の荷物取ってくるからここで待ってて。」
白石君にペコリと頭を下げたあと、千里がそう言って保健室を出て行った。
体が熱く、頭がズキズキと痛い。
ついでに全身が怠く、立っているのもきつかったから
横にあったソファーに腰を下ろし背もたれに体を預ける。
「 じゃあ....俺もこれで失礼します。」
白石君がそう言って保健室の扉をガラッと開けた。
チラリと振り返った彼と目が合った気がしたのは多分気のせいだろう。
部屋を出て行く彼の背中をぼんやりと眺めていた。
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