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俺の部屋の時計が指している時刻は、もう日付が変わるくらいの遅い時間だった。
でもお母さん達は帰ってきてないみたいだ。
........よかった。
冷たくなった布団の上で、自分の膝を抱き締めてキュッと丸くなる。服を着ていないから寒くてたまらない。
カタカタと揺れる身体の震えを止めようと掌を擦り合わせてみても、体感温度が変わることはない。
千里はシャワーを浴びてるっぽい。
ヤルだけヤって兄を放置して自分は呑気に風呂かよ。
.......と思ったけれど、割といつものことだ。
自分がいつ気を失ったのかは覚えてない。
あいつの好きな時に身体を差し出して、あいつが飽きるまで抵抗せず受け入れる。
全身が汗と精液でベタついていて気持ち悪い。
惨めだ。
こんな歪な関係はいつ終わるんだろうか。
あいつから解放される時はくるのか。
先の見えない恐怖を感じて怖くなる。
こんなの異常。
千里が何を考えているのか分からない。
普段は凄く可愛げがあって素直。
そういうところは俺も好きだ。
でも俺を抱いている時は怖い。
泣きたくなる気持ちをぐっとこらえる。
ぐるぐるとかき混ぜられたような気持ち悪さが
お腹に広がる。
多分中にまだ精液が入ったまま。
鉛が入ってるみたいなずんっと重たい感じ。
キリキリと痛んで何も考えられない。
気持ち悪い。
吐き気がする。
今すぐにでも嘔吐して、胃のムカムカを取り除きたいけど、
生憎昼から何も食べていないので吐きたくても吐くものがない。
親がいつ帰ってくるか分からないから、とりあえず服だけでも着よう。
重たい体に鞭打ってなんとかベットの上で身体を起こした。
ベットから降り、足を床につけて立ち上がった時、
膝の力が抜けてカクンとその場にへたり込んだ。
同時に腰に鈍い痛みが走り、顔をしかめる。
......くっそ。
足に力が入らない。
まぁ、何時間もベットに押さえつけられて足開いてたら
そうなるよね。
腰を筆頭に色々なところが痛くて辛い。
立ち上がれずに、ため息をついたら
ガチャっと音がして部屋のドアが開いた。
ビクッとして振り返ると、そこに立っていたのは千里だった。
.......焦った。
もし今部屋に入ってきたのが親だったら、この状況をどう説明すれば良いのだろうか。
「 涼っ、大丈夫? 」
千里が心配そうに駆け寄ってきて、持っていたバスタオルを
俺の体にかけた。
眉を下げて、申し訳なさそうに瞳を揺らしながらこちらを
じっと見つめてくる。
さっきまで俺の意思なんか御構い無しに抱き潰してきたくせにこういうところでそんな顔するなんてズルい。
ほんとは、心も体も全然大丈夫なんかじゃなかったけど、
なにも言わずただコクンと頷いた。
「 お風呂連れてってあげるね。」
「 .......う、ん。」
千里は軽々と俺の身体を横抱きにして立ち上がった。
千里の体や髪からふわっと石鹸の香りが漂って落ち着く。
そのまま階段を降りて風呂場まで連れて行ってもらった。
一緒に入ってあげようか?と言われたけど、千里はたった今
風呂に入ったばっかりだし後処理くらい自分でできるから、
大丈夫、と言って断った。
「 ....シーツ、洗濯しとくからお風呂終わったら俺の部屋に
おいで......今日は一緒に寝よ?」
「 ................ 」
「 .......涼。」
「........分かった。」
俺が頷くと、千里は満足そうに微笑んで脱衣所を出て行った。
体が重い。ついでに心も。
冷え切った体には40度のお湯も熱湯に感じる。
我慢しながら、シャワーで頭からお湯をかぶって全身を温めた。そして気が進まないながらも後孔に手を伸ばし、自分で指を入れて中の精液をかき出した。
とっくに慣れた筈の作業なのに、今は物凄く憂鬱。
そして自分への嫌悪感が酷い。
体と髪を洗って浴槽に浸かり、最後にもう一回体を洗って
浴室を出た。
相変わらず腰が痛くて歩きにくいけどさっきよりはマシ。
倒れないように壁を手をつきながら、なんとか階段を上がって千里の部屋の前に立つ。
ドアノブに手を掛け、ちょっと開けるのを躊躇う。
開けようか開けまいか迷って狼狽えていると、ふいにドアが
向こう側から開けられて顔面に木の板が直撃した。
「 .......っつ、いった。」
「 え、涼いたの!?ごめん、気がつかなかった...... 」
鼻を押さえて顔をしかめた俺への謝罪を、苦笑いと共に済ませた千里はドアを開けて俺を中に招き入れた。
奥どうぞ、と言われたのでベットの壁際の方に移動する。
そのまま壁にピタッとくっついて千里が寝るスペースをあけると、いそいそと千里もベットに入ってきて一緒に横になった。
「 .......おい、もうちょい向こう行けよ。狭いんだけど。」
せっかく千里の為に壁に寄ってあげてるのに、千里はさらに俺の方に寄ってきてキュッとくっついてくる。
小さい時からそうだった。
一緒に寝る相手が誰であれ、夜は人肌が恋しくなるらしく、
くっついていた方が安心して眠れるらしい。
どんなに周りから完璧で天才だと言われても、
この場面だけ切り取ってみればただの甘えたの弟でしかない。
「......ねぇ、涼。」
電気が消えて真っ暗の部屋の中で、千里の呟きがぽつりと
響く。
寝返りをうって、千里と向かい合うかたちになる。
「 .......なに?」
「 あのさ、」
涼は俺のこと嫌い?、と目を伏せて聞いてきた。
正直驚いた。
そんなこと面と向かって聞かれたことなかったから。
自分で聞いてきたくせに答えを聞くのが怖いのか、千里は目を合わせずに俺の腰に回した腕に力を込める。
嫌い。
そう言ったら泣き出しそうな顔をしている。
学校ではいつも太陽みたいに輝いていて、自信に満ち溢れて
堂々とした王様なのに俺の前だけこんな顔する。
.......習慣って怖い。
どんなに劣等感を抱いていても、弟のこういう顔を見たら
つい手を伸ばして頭を撫でてしまうなんて。
多分長年「良いお兄ちゃん」やってた所為だ。
そうして発する「嫌いじゃない」って言葉。
嘘じゃないよ。
だってこんな劣等だらけで欠陥だらけの俺を見てくれるの
なんてお前しかいないだろ。
自虐めいた笑みがこぼれる。
俺の言葉を聞いてやっぱり不安そうにした千里は、
もぞもぞと俺の体に顔を埋めて寝息を立て始めた。
朝起きたら、きっとあの屈託のない笑顔で
「涼 」って呼ばれるんだ。
千里の肌が触れたところから、じわじわと熱が伝わってくる。
体温の高い千里は、気温が低い日には羨ましいと思う。
でもその温もりは
今はただただ虚しい。
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