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人の体も消耗品なんだと思う。
簡単にすり減るくせに、取り替えたり補充したりできないからその分タチの悪い消耗品。
使い終わったシャンプーみたいに、詰め替えないとただのボトルだけになってしまう。
多分今の俺がそれ。
あるいはその逆か。
なみなみに注がれすぎて、表面張力のギリギリ働くところで
保たれていていつ決壊するかわからない腫れ物みたい。
どっちにしろ救われないのはわかりきってる。
全部悪い夢ならいいのに、と頭の中で考えてみても
目に映るのは見飽きた部屋の天井で。
意識がぼんやりと覚醒した時、千里の顔が視界に写り込んできた。
体が思うように動かないし、喉がかすれて声も出しにくい。
ゆっくりと目だけで千里を見ると、
首を傾げて「起きてる?」と聞かれた。
「 ......おき、てる。」
「 そう。......大丈夫?顔色ゾンビみたいだけど。」
「 ...... 」
顔色は自分では確認できないけど、確かに頭痛が酷い。
寒気がするのに体の芯は熱をもって変な感じだ。
「 今日は休んだ方がいいって先生も言ってたし、家でゆっくり寝てた方がいいね。」
そう言いながら千里は鏡の前で制服のネクタイを締めている。
鏡の中の千里と目が合ってしまって、なんとなく気まずくなり目線を逸らす。
昨日あれだけしたのに、表情に出さずケロッとしている千里の体力が不思議でならない。
チラッと部屋にかけてあるカレンダーに目をやる。
あぁ、今日から5月か......
窓から差す明るい光を見て、ようやく今が朝なのだと気づく。
「 涼。」
呼ばれて顔を上げると、千里は自分の額と俺の額をコツンとくっつけて、うーん、と唸った。
「 やっぱ熱いねぇ、熱中症継続中?」
「 .......違うと思う。多分普通に風邪ひいただけ......。」
やんわりと千里の体を押し返しながら答える。
風邪なら、こんなに近くにいたら絶対うつるから。
それでもし千里が熱でもだしたら、俺がどやされる。
それはなるべく避けたい。
まぁ、昨夜のセックスでとっくに風邪菌は千里の体内に侵入してるとは思うんだけど......
「 朝ごはんはー?食べれそう? 」
「 ...... 」
風邪薬を飲むなら、その前に何か腹に入れた方が良いのだろうけど、朝ごはんを食べるとなるとリビングに降りないといけない。そしたらお母さんとお父さんと顔を合わせることになる。
きっと疎まれて、煩わしいと思ってる目で見られる。
だから一階には降りたくない。
幸いなことに食欲はこれっぽっちもないので好都合。
首を振ってまたもそもそと布団に潜り込むと、
千里が苦笑いで声をかけてくる。
「 ごめんね、昨日無理させて。体辛いよねぇ 」
本当に悪いと思ってるなら今度からもう少し加減してよ。
.......と心の中で思いながら無視して目を閉じる。
一階のリビングから、「 千里ー、ご飯ー!」という
お母さんの声が聞こえた。
「 今行くー!」
千里は部屋を出ようとドアノブに手をかける。
そして、何か思い出したようにふと俺の方へ振り返った。
「 そういえば...... 」
「 ......?」
「 昨日、涼が保健室で寝てる間、圭介先輩に聞かれて涼の
連絡先教えちゃった。」
ニコッと笑って言う千里を、は?という目で見返すと
千里は構わず続けた。
「 教えてくれって言われたから....別にいいかなって。」
「 え、いや......圭介先輩って誰.......?」
「 あの人だよ〜。ほら、涼とおんなじクラスのー、昨日一緒に
保健室にいた人だよ。知らないの?」
首を傾げて聞いてくる千里の言葉に戸惑う。
思い出そうとちょっと考えこんだ時、ハッと思い当たる人物が脳内に浮かんだ。
「 ......もしかして、白石君?」
「 あ、そうそう!その人。下の名前知らなかったの?」
「 あぁ、.......まぁ、うん。逆になんでお前知ってんの?」
「 部活見学行った時に、お世話になった二年生だからだよ〜。あの人陸上部なんだよ。」
それは知ってるけど......
白石君、圭介っていうんだぁ.......。
初めて知った......
新学期始まって結構経つのに名前覚えてなくて申し訳ない。
それにしても、なんで俺なんかの連絡先を教えてって言ったんだろう。
昨日初めて喋ったばっかりなのに。
「 涼、今顔がちょっと明るくなったよ?」
「 ......なってない。」
「 はいはい、とりあえず今日は寝てな。行ってきます〜」
「 ......いってらっしゃい。」
千里が荷物を持って階段を降りて行くのをぼうっと見ていた。
早いとこ自分の部屋に戻らないと.......
でも睡魔と疲労が襲ってきて起き上がる気にならない。
こうやって千里のベットで目覚めるのは何回めだろう。
あいつはいつも俺の部屋で俺を抱く。
そして寝る時は千里の部屋で一緒に寝る。
セックスをした後はそういうサイクルで朝を迎える。
なんで親は不思議がらずに黙認してるんだ。
普通高校生にもなって兄弟一緒に寝るとかないでしょ。
千里が完璧すぎる所為で疑いの余地もないのかな。
頭から離れないあいつの顔が焼きついた脳裏を憎む。
でも目を閉じる前に瞼の裏に浮かんだのは千里ではない。
どうしようもなく俺を真っ直ぐに見つめてくれた
白石君の瞳が思い出される。
あぁ、良かった。
寝る時に思い出すのが彼の顔で。
もう一度あの目で見つめて欲しい。
きっと夢の中なら叶うかもしれない。
微かな希望を抱いて睡魔に溶けていった。
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