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32 (R18)
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黒と白のカーテン。
辞書と教科書が並んでいるだけの簡素な勉強机。
参考書や好きな作家の本が敷き詰められている少し大きめの本棚と壁にかかっている絵画。
それくらいしか俺の部屋にはない。
高校生にしてはシンプルで面白みに欠けるとは自分でも思うけど、なにせ趣味という趣味がないから仕方がないと思う。
部屋の真ん中に置いているテーブルで千里と床に座り、向かい合って勉強するのも昔からの事で俺たちには当たり前の事だった。
外はもう暗くて、カーテンの隙間から見える窓の色は真っ黒に染まっている。
「 ねぇ、涼。ここの数式ってさ、」
「 ……違う。間違ってる、代入するのはこっちの数字」
「 あっ、そっかぁ。ありがと。」
黙々と熱心に机に向かってシャーペンを走らせる。
千里は容量が良いから一度間違えた問題は絶対に間違えないけれど、完璧主義だから最初に飲み込むのに時間がかかるタイプなのだ。
どんなに頭が良くても所詮は俺の年下なわけで。
分からない問題があればこうやって俺に聞いてくるし、
教えてあげれば素直にお礼を言われる。
昔から勉強はやった分だけ成果がでるので好きだった。
だから頑張ればテストだって結構上位に入れる自信はある。なにせ入気の時は首席だったのだから。
けれど本気を出して自分の満足いく結果を出しても、千里がまたそれを掻き消すほどのハードルをひょいと超えてくるのだろう。
そう思ってずるずると自分に言い訳をしながら、とっくに履修済みの問題を千里に教えることでギリギリの優越感を保っている。
我ながら惨めすぎる。
「 ねぇ、涼ー、これは??」
「 えっと、それは....... 」
このシーンだけ切り取ってみれば、只の「仲の良い兄弟」
なんだろうな。
いつもセックスしてるくせにこういう時に普通の兄弟の顔ができるなんて、お互いちょっと狂ってるんだろう。
ふとシャーペンを持つ右手に目線を落とすと、手首が露わになっていて、今日白石君に問いただされた例のアザが目に入った。
また今日みたいに色々聞かれたら面倒だから早めに言っとかないとな。
「 あのさ、千里。」
「 んー?」
数学の問題集に目を向けたまま、こちらを見ずに軽い返事が返ってくる。きっとあんまり聞いてないな。
「今度から手とか体に目立つ跡つけないで欲しい。」
千里の持っているシャーペンの芯がポキっと折れる音がした。
ゆっくりと顔を上げ、目を細めて俺の方を見る。
びっくりするくらい無表情なその顔は温度がなく、冷たく俺を見つめている。
一瞬恐怖を覚えるが、ここで引いちゃダメだと思って構わずに続ける。
「 今日、クラスの人に言われたんだ........その手どうしたんだって.......誤魔化したけど、これ以上余計なこと聞かれたくない」
「 へー。なんて言って誤魔化したの?」
「 弟と遊んだって.......」
俺がそう言うと、千里はとうとう堪え切れなくなったように吹き出した。
「 ふっ、.......なにそれ、あははっ、あはっ、えー、おもしろ.....」
肩を震わせて笑う千里がちょっと怖い。
「 ...... 」
「 絶対誤魔化せてないって、涼が悪いよ、それは。」
なんて言っていいかわからなくて戸惑う。
なにが?どうして俺が悪いの?
でもどうしてこの話を聞いて笑うのかが理解できない。
確かに自分でも無理がある嘘だと思うけど。
お前の所為でこっちは色々聞かれて大変だったのに。
「 と、とにかく。もう疑われるの面倒くさいから、そういうのはほんとに控えて欲しい。」
「 そうだよね、バレたら責められるのは涼だもんね」
不意に思ってなかった言葉をかけられてハッとする。
驚いて顔を上げると、千里はさっきみたいな温度のない顔で俺を見据え、口角だけを上げてニヤッと冷ややかに微笑んでいる。なにを考えているのか読み取れない静かな笑みに不安を掻き立てられる。
「 俺と涼が毎晩セックスしてるって知ったらみんなどう思うだろうね。」
脅すような口調で囁かれる。
「 きっとみんなが俺に味方して、涼を悪者扱いするだけだよ」
千里の言葉が頭の中で映像化されてクリアになる。
あぁ、きっとそうだ。こいつの言う通り。
絶対に千里の言葉をみんな信じて俺を異常者扱いする。
想像するのがあまりにも容易くて、現実で起こりうることだと思うと心臓が不規則に鳴り始めた。
千里はきっと理解してる。
俺がこいつに抱えている劣等を。
だからこそ俺が1番傷つく言葉で追い討ちをかけてくる。
「 そうなったら、涼はもうこの家にいられなくなるね。」
胸がドキンと嫌な音を立てて鳴る。
怖くなって呼吸が詰まる。
手先が冷たくなってカタカタと震えだしたのが分かった。
「 ご、ごめん。...... 」
焦点が定まらないまま謝ると、千里がクスッと笑って俺の顔をしたから覗き込むようにして見つめてくる。
「 涼の味方は俺だけだよ?涼も分かってるよね。」
「 わかっ、わかってる..…から、言わないで、誰にも。」
千里は慌てたように俺の方に身を乗り出して笑った。
「 あー、うそうそ。嘘だよ。ほら、そんな怯えないでよ。誰にも言うつもりないし。信用ないなぁ」
そう言って俺の肩に手を伸ばしてぽんぽんと叩く。
笑っているけどきっと心の中では笑ってない。
俺が千里に意見したから少なからず腹を立てたのだろう。
「嘘だよ〜」と言っている千里の目は笑ってなかった。
俺には分かる、本気だ。
あくまでも主導権を握っているのは自分で、俺は不利な立場にあると理解させるための脅し。
いつからこんなにおかしくなったんだ、俺たちは。
肩に触れている千里の手を払おうと、無意識のうちに体をよじる。顔が見れなくて俯くと、千里はふうっとため息をついて立ち上がった。
「 いったん勉強中断しよっか、少し休憩しよ。」
そしていつもの太陽みたいな顔でニッコリと微笑んだ。
テキパキと慣れた手つきでテーブルを片付けて綺麗にしていく。
「 ちょっとまってて、飲み物とってくる。」
そう言って千里は部屋を出てトントンと階段を降りて行った。
1人取り残されて、少し広く感じた部屋の真ん中で
ぎゅっと自分の膝を抱えて丸くなる。
もうやだ、息がつまりそう。
苦しい、耐えられない。
と言っても俺にはほかに行くところもなければ、ここから出て行く勇気もない。
何にも持ってない。
あるのはものすごく不名誉な「お兄ちゃん」という肩書き。
「 ダメだな」
しんどい。
ぽそっと呟いてみても、モヤモヤが消えることもないし
解決策が浮かぶわけでもなく。
ただただ、こんな生活が早く終わればいいのに、と思う。
この家に生まれてくるんじゃなかった.......。
はあっと息を吐く。
「 ダメってなにがぁ?」
かちゃっと音を立ててドアが開き、千里がトレーに2人分の紅茶を乗せて部屋に入ってきた。
どうやら俺のつぶやきが聞こえていたらしい。
不思議そうに首を傾げながら、紅茶が入ったカップと角砂糖が盛ってある小皿をテーブルに並べていく。
「 なんでもない、独り言。」
「 ふうん。」
千里はあからさまに興味なさそうに返事をして紅茶を飲み始めた。
俺もカップに手を伸ばし、2つ角砂糖を入れてくるくるティースプーンでかき混ぜて溶かしていく。
こくっと飲むと、ふわっと香る茶葉の鮮やかな風味が広がって気分が落ち着く。
千里が入れた紅茶は、いつも美味しい.......はず。
でも今日は少し違った。
おかしいな、..いつもと同じで砂糖2つしか入れてないのに妙に紅茶が甘く感じる。
心なしか味も変な気がするようなしないような。
疲れてんのかなぁ、
あんまり気にせずに、少しぬるくなった紅茶をぐいっと一気に飲み干した。
千里はまだゆっくりと、マイペースにお茶を楽しんでる。
休憩が終わったらまた勉強再開するだろうから、それまで少しゆっくりしようかな。
正直もう疲れたから寝たいけど。
なんとなく千里が紅茶を飲んでいるのをぼうっと眺めていたら、なんだか身体がぽかぽかしてきた。
「 ねぇ、なんか暑くない?」
「 そう?全然そんなことないけど.. 」
千里に聞いてみても澄ました顔で答えられる。
おかしいな、急に体温が一度二度上がったかのような猛烈な発熱を感じるけど俺だけなのか。
きっとあったかい紅茶を飲んだから体が温まったんだな、
そう思ってやり過ごそうとしたけど、どうにも我慢できない。
おかしい。
身体の内側が熱を持って仕方がないのだ。
クラクラするほど胸が熱くなって頭がふわふわする。
「 ごめん、窓開けてい?」
「 別にいいけど〜?」
なんで千里はこんなに平然としているんだろう。
暑くないのかな、俺だけ?
立ち上がって、ベット側の壁の窓を開け放す。
爽やかな夜風が入ってきて心が落ち着く。
......でも身体だけはどんどん火照っていく。
どうして??
暑くなって着ていたパーカーを脱いだ。
ハンガーにかけて綺麗にクローゼットにしまって、
タンスからTシャツを取り出して着る。
それでも熱は治らない。
おかしい、絶対におかしい。
足に力が入らなくなってきて、呼吸もうまくできなくなっていった。
「 はぁっ、は、ふぅ.......はぁ、」
一生懸命に息を吸おうとしても、どんどん身体の熱が増していくばかりで背筋がゾクゾクする。
「 どうしたの?」
千里が俺に向かって首を傾げて聞いてくるけど無視した。
座ってるのもきつくなってベットにゴロンと横になる。
「 はぁっ、は、.....ぅ 」
汗が流れてきて額を伝って落ちていく。
顔まで熱くなってきて目に涙が溜まり視界がぼやける。
下半身がむずむずして目をやると、履いているスラックスの
中心部分が突っ張っていて膨らんでいた。
え?、どうして、
「 ぁ、……なんで」
下着の中が濡れているのが分かる。
身体をもじもじ動かすたびに、ネチネチと濡れているような音が微かに聞こえ恥ずかしくなった。
自分の体が自分の体じゃないみたいだ。
ガチガチに勃ったままの性器がつらくて、どうしていいか分からない。
「 涼、」
千里が声をかけてきてベッドサイドにやってきた。
俺を静かに見下ろしながらくすくす笑ってる。
「 あ.......なんか、からだ 変で、」
「 大丈夫だよ、」
そう言って千里はTシャツの上から俺の腹を擦るように撫でた。
「わー、ガチガチ。こんな効果あるとか思ってなかったな」
ぼそっと呟いた千里の言葉に耳を疑う。
効果……?
なにそれ、何の話。
「 飲み物に、.......なにか、いれた......の? 」
「 さぁ、どうでしょう?」
肯定も否定もせずに、勃起したままの俺の性器を足で軽く踏みつけてくる。
そのままぐりっと足を捻るようにして体重をかけられたら、もうたまらない。
「 〜〜〜っつ.......んんっ、」
痛いのに気持ちいい。
どんどん下腹部に溜まる熱を早くどうにかしてほしい。
けれど、薬で無理やり高められた生理的な興奮は体に馴染みが無く、慣れない感覚に怖くなる。
呼吸もしづらくなってきて、怖くてぽろぽろと涙が溢れてきた。
千里はそんな俺を笑いながら恐ろしいことを言った。
「 さっき言ってた話だけどさ、他人に見えないところなら、どんな跡をつけてもいいってことだよね?」
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