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44 桜木千里side
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「 ...............は?」
今なんて?
おにーさんと付き合ってる?もしくは好き?
綺麗な顔の彼が発した言葉は確かにそれで。
零がどういう考えで、どういう意味でその質問をしたのかとんとん検討もつかないが、きっとこいつもバカじゃない。
多分なにかを知ってる。それか零の中である程度の予測がついてて、それを証明させるために俺にカマをかけてるかのどちらか。
なんかすーごいめんどくさい人と友達になっちゃったなぁ。
俺に必要ないなら関係を切るだけだけど。
それでもいつもへらへらして何を考えてるのかわからない彼が、こんなに笑顔を捨てて真面目な顔をしているのなんて初めて見たから少し驚く。
それに、多分誰も知らない零のこんな顔を見たのは多分周りでは俺しかいないだろう。
「俺だけ」というその事実に、少し背中がぞくっとするような感覚を覚える。
依然として、零はじっと目を細めて俺の答えを待っているように黙ってる。
余裕のないその顔がなんだかおかしく見えてつい笑みが零れた。
「 ....零のそんな顔初めて見たよ 」
「 そりゃあ初めてみせたからね 」
みせた、という表現が気になる。
意図的に俺にいつもと違うことを悟らせようとしてるってことか?どこまでが零の計算で想定内の範囲なのかわからない。
ついでに何が言いたいのかも分からないから少し慎重になる必要があるな。
「 付き合ってる....ねぇ....。どうしてそう思うの?」
なんとなく探りを入れてみたくて、零に聞き返すと、
彼は一瞬目をぱちっと開いた後、にやっと片方の口角だけ上げて微笑んだ。
「 人が質問に対して質問で返す時は、『何も聞かれたくない時』『図星の時』『何かを隠してる時』のどれかだよ?ちさとくん。それか君はその全部なのかなぁ?きゃー、罪な男 」
その場で両手を頬に当てて、照れたように顔を赤くしてふるふると首を振ってふざけている零は、固まった俺を見ながらまた口を開く。
「 ちさとくんも思ったよりニンゲンなんだねぇ....もっとバケモノみたいな思考回路してるのかと思ったけど、きみの頭の中は一般人のそれと対して変わらない 」
もう全部分かったとでも言いたげな目に、多少なりとも苛立ちを覚えた俺は、はぁっとため息をついて否定する。
「 付き合ってないし、好きでもないよ 」
「 へぇ、それほんと?」
「 俺が嘘ついても多分零は分かるだろ 」
「 まぁねぇ〜。でもね、ちさとくん。大抵の人はこんな質問されたらまず『男同士』とか『兄弟』って関係をアピールして否定するものだよ。」
さっきまでの温度のない無表情が嘘だったかのように、
零の顔には綺麗な笑顔が貼り付けられていて、人形みたいにその笑みを崩さない。
「 今度は俺の質問に答えてくれる? なんで、....」
「 あぁ、良いよ言わなくて。聞きたいことはわかってるから 」
いちいち俺の考えを見透かしてるような発言。
場合によっちゃあそれ人の反感買うから辞めた方がいいと思うんだけどなぁ。
誰だって心を読まれるような行為は不愉快で本能的に嫌う。
いいよ、教えてあげる。
と言って零はぺらぺらと喋り始めた。
「 ちさとくんは気づいてないかもしれないけどね、 学校内でちさとくんがおにーさんを見つけた時、結構目で追ってるんだよ。
ちさとくんの行動にはいつも無駄がないんだ。
何をするのも何をされるのも全部自分の計算のうちなんだよね。まぁそれはちさとくんもわかってるだろうけど 。」
零が話しているのを、黙って聞く。
「 だけどたまに外にいる時とか窓際にいる時とか、ふと魂抜かれたみたいにどこかを眺めてたりする。気になって同じ方向を見たら、あら不思議。ちさとくんにそっくりで美人な男の子。」
「 涼が俺に似てるんじゃなくて、俺が、涼に似てるんだよ」
「 まぁどっちでもいいさ。そんなこと。
調べたらその人はすぐに君のおにーさんって分かったよ。やっぱり遺伝子ってすごいねぇ。2人とも頭がいいなんて羨ましいよ。おれだって....」
「 あのさ、話の展開が全く分からないんだけどさ。それでなんで俺が涼と付き合ってる、っていう結論に至ったわけ?」
だんだんイライラしてきて、零の話を途中で遮って
声を大きめにして聞くと、
零はまた俺がそんな反応をするのがわかっていたかのようにへらへら笑った。
余裕ないな、俺。
こんなの完全に零のペースだ。
「 だってちさとくん高校生にもなっておにーさんと手繋いでるんだもん。」
これまた零の予想外の発言に体が固まる。
「 先日、2年生の担任の先生が君たち兄弟を家まで送って行ってたでしょ??その時俺実は近くにいたんだよ〜。なんかちさとくんの、おにーさんへの執着が強そうな感じだったから、あれぇもしかしてこの2人?ってなったわけさ〜」
「 あの時は、涼の体調が悪かったから。支えるために手繋いであげてただけだよ。なんの他意もない。」
「 おにーさん『痛い』って言ってたのにちさとくん離してあげなかったよね。他意なく支えるなら今度からもうちょっと優しくしてあげな。」
「 ................ 」
「だからこの時点で、『付き合ってる』って選択肢はほぼ消えたの。だって見るからに相思相愛って感じではなかったしね。だから一方的にきみがおにーさんのこと好きなのかなって思ってた。ちさとくんは自分の欲しいものは例え相手が傷ついても手に入れる主義でしょ?おれと同類だからね。」
「 零......今日はよく喋るんだね 」
「 ふふっ黙って欲しい?」
「 うん 今すぐ。俺零のこと好きだから傷つけたくないもん」
黙らないと、傷つけるよ?
って意味を込めて、遠回しにそう伝えると、彼は心底可笑しそうにけらけら笑った。
「 あは、ちさとくんってほんとかわいい。当初とだいぶイメージ変わるねぇ。俺も傷はつけられたくないからそろそろお口にチャックしましょうかね。」
もうそろそろあいつらのところに戻ろっか??
笑顔で零はそう言って、さっきまで戯れていた仲間の所へ歩き始めた。
なんとなく動きたくなくて、その場で少しの間動かずにいたら、先に進んでいた零がふと立ち止まって、
俺の方にくるりと振り返る。
「ごめんね、もう黙るけど、最後に1個だけ助言しとくね。
今度からおにーさんとヤる時はカーテン閉めた方がいいよ」
そういった零は、また何事もなかったように
前を向いて歩き出した。
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