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45 村崎 零 side (暴力・流血表現有り)
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今度からおにーさんとヤる時はカーテン閉めた方が良いよ
そう最後にちさとくんに言い付け加えて、くるりとUターンして数歩まえにすすんだ。
つぎの時間割なんだったかなぁなんてぼんやり思いながら、肩からずり落ちそうなカーディガンを片手で整える。
これ先輩からおさがりでもらったやつだからサイズおっきいんだよなぁ。まあ小さいよりはいいかもだけど。
顔を上げて、また足を踏み出そうとしたとき
背後から強く地面を蹴る音がした。
それと一緒に、手首に衝撃が走る。
身体は前に進もうとしていたのに、腕は後ろに引っ張られたもんだから首がガクンってなってとれちゃうかとおもった。
と思ったら今度は背中に激しい痛みと、後頭部に鈍痛が響く。
衝撃にあたまがくらくらしながら、なんとか顔を上げると
視界いっぱいに映るのはちさとくんの整ったお顔。
背中に当たる硬い感触のおかげで、校舎裏の壁に押し付けられているんだって気づく。
「 ....いっ....てぇなぁ.... 」
人に対してイラついたことなんてないけど、流石にこれはどうかとおもったから、ちさとくんをギロリと見上げながら低い声でつぶやく。
「 ちさとくんてほんとバイオレンスだよねえ 。おれが女の子だったら肩脱臼してたかも 」
「 さっきのどういう意味 」
「 さっきのって?」
「 ....ッチ.... 」
わざととぼけると、ちさとくんがあからさまに舌打ちをした。
いつもの品行方正なイメージとは程遠い彼のその行為に、新鮮さを感じて思わず微笑むと、彼はまた酷い顔をした。
ちさとくんさっきおれにそんな顔初めて見たよって言ったけど、おれもきみのそんな顔初めて見たよ。
どんな顔してもびっくりするくらい綺麗なんだけどさ。
吐息がかかるくらい近くにある顔をまじまじと見つめた。
ちさとくんの瞳に映るおれは薄気味悪い笑顔を浮かべていて、さらにそれが彼の怒りや困惑を煽っているんだろう。
両手首を、折れそうなくらい強い力で握りしめて顔の横で凹凸のある硬い壁に押し付けられる。
後頭部の鈍痛も次第に激しくなってきて、ガンガンと痛みが響いていく。血が流れるたびに血管が破裂しそうなくらいの痛みが駆け抜けて、でもそれを表情には出さない。
だから余計ちさとくんは今不安がってる。
おれの思考を読み取ろうと必死になって、おれが敵か味方かを判断する材料を見つけようとしてるんだ。
余裕がなくて焦って追い詰められたひとの見せる顔はどうしてこんなにも可愛いんだろう。
食べてしまいたいくらい愛おしい。
ただこのままだと食べられそうなのは確実におれの方なので、少しちさとくんに揺さぶりをかける言葉をひとつ。
「 きみはこんな風におにーさんも傷つけてるの ?」
真っ直ぐに彼の目を見て聞くと、案の定ちさとくんはハッと目を見開いた。
その一瞬で、少し手首を握る彼の手の力が緩んだのを見逃さなかったおれは、膝で彼のみぞおちを思いっきり蹴った。
勢いで身体が離れた時に、するりとちさとくんの拘束から抜け出して距離を取る。
「 っつ....ケホッ....ケホ....れい、ばか、みぞおちって 」
「 いや自業自得だから!すっごい痛かったんだからね!」
お腹らへんを抑えて咳き込むちさとくんをザマーミロって感じで視界に入れながら、眩む視界を正常に戻そうと頭をふるふると数回横に降る。
やっぱり頭に違和感があってそっと後頭部に手を回してみると、激しい痛みが走って、同時に手のひらにペタッとした感触があった。
やっぱりなぁ、と思いながら確認すると
手のひらにべっとりと付着していたのは真っ赤な液。
頭から血が出るくらいの力で、しかも手加減無しに咄嗟にひとの頭を壁に叩きつけるなんて結構やばいぞちさとくん。
ふわっと香る鉄臭い赤のそれを、嫌悪感たっぷりに見つめていたら、いよいよ目眩が激しくなって膝から崩れ落ちる。
硬いアスファルトに激しく膝と腰をぶつけるように倒れこんで、また全身が痛くなった。
下を向くと、後頭部から伝ってきた血液が額の方に垂れてきて、地面にぽつぽつと黒い染みを生産していく。
さらに開けていた目の中にまで血が入り込んできて、ジワリと嫌な痛みが広がっていった。
その場から動くことができなくなって、ぺたんと地面に座り込んで顔を抑えていると、おれの様子がおかしいことに気づいたちさとくんが、眉間にしわを寄せている。
「 え、そんな酷い?零って貧血もちだっけ 」
そしてちょっと心配そうに駆け寄っておれのとなりにしゃがみ込む。
そう、彼のいう通り出血自体はそんなにしていない。
もともと貧血持ちで体内の血液が少ないって言うのも少なからず今ダウンしてる理由としてあるんだろうけど、
ただおれにはほかの問題があって。
「 ちが......う、だいじょうぶなんだけど....
おれ、血液恐怖症....だ、から。ごめん、立てない。」
喘ぐように、やっとの思いでそう声を絞り出すと、
ちさとくんが「 あぁ....なるほど」って言っておれの肩を抱えてくれる。
どうにもおれは昔から、他人や自分の血液というものに酷く嫌悪感を抱く。
あの少し粘着質なところとか、目が眩むくらいの赤とか、鉄臭いところとかそういうの全部が大嫌いでたまらない。
「出血している」と自分が認識してしまった途端、視界が歪んで呼吸が浅くなる。ついでに吐き気と頭痛が止まらなくなって酷い時はひとりで立てなくなる。
「 あー、つら....ごめ、ん、ちさとくん。保健室まで....連れてって、くんない....かなあ?」
「 言われなくてもそのつもりだよ 。」
「ほら乗って」と言われて、ちさとくんの背中に体を預ける。軽々とおれをおんぶした彼は、早歩きで校舎の方に歩き始める。
彼が少し歩くたびに振動がダイレクトに体に響いて、またズキズキとあたまがいたくなる。
「 ん....ん〜、ちさとくんのばかぁ....しんどいよお....」
肉体的な痛みや、苦しさは、他の人よりも数倍耐性があるけれど、こんな時の精神的なマイナス要素からくる気持ち悪さは身体が受け付けないのだ。
吐き気を感じながら、必死でちさとくんの肩にしがみつく。
でも片手で口を押さえてないと簡単に嘔吐しちゃそうだから、なんとか耐えながら、呼吸も落ち着かせる。
今吐いたら完全にちさとくんの背中に吐瀉物噴出だわ....
それは流石にやばすぎるしおれがやだよ。
「 せん、せ、にはちさとくん、から適当に....説明しておいて、ね。....階段でころびました、とか言えば、俺よりきみの言葉を信用してくれる....でしょ、、」
「...........零。喋らない方がいいと思う。つらいんでしょ」
さっきまであんな風に余裕ぶっこいてへらへら笑ってたやつが、ちょっと出血したくらいで今みたいに動けなくなってるのが恥ずかしくて、気を紛らわそうと面白おかしくちさとくんに嫌味を言ってみたら、案外彼はまともにおれの体を気遣ってくれた。
「 ........ははっ、マジレス、かよ....恥ずかしい、、」
「 だから黙ってろって。」
元の原因はと言えば、ちさとくんがおれに乱暴したせいなのに、いまはなんだかおれが悪くて、ちさとくんが良いことしてるみたいになってる。
その状況が可笑しくてくすくすと笑いがもれる。
この子はこっちがほんとうの顔なんだろうな。
ほんとは優しくて人に尽くすのが上手なのにめちゃくちゃ不器用なんだね。
おれに痛みが響かないように、ちさとくんがなるべく体を揺らさないよう気遣って歩いてくれてるのがおれにも分かって、その配慮に素直に感心する。
そっとちさとくんの首に回した力に腕を込め、
そのまま彼の背中の中で意識を手放した。
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