アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
49
-
俺を押し倒して、こちらを見下ろしてくる綺麗な顔は
薄い笑みを浮かべていて。
酷く動揺した俺は困惑のせいでなにも言葉を発することが出来ず、ただその整った顔を見つめ返すことしか出来なかった。
俺のそんな様子を見るなり、彼は可笑しそうに眉根を寄せる。
「 ..............抵抗の1つや2つすれば良いのに... 」
.........抵抗?
この子は今から俺になにをしようとしてるんだろう。
肩からずり落ちそうな彼のグレーのカーディガンがすごく気になるが今はそんなこと考えてる暇はない。
ただ、自分より華奢な体躯が覆い被さっているのを見ると、いざとなったら抵抗くらいできる力は持っているだろうと少し余裕なことを考えた。
「 きみは、、、、、だれなの?」
頭の中を占める割合が、
「困惑」より「疑問」の方が多くなった時
一番気になっていたことが自然と口から出た。
さらさらのグレーの髪を揺らして、彼が少しだけ首を横に傾ける。目を細めて片方の口角だけをくいっと持ち上げて、整った綺麗な形の唇を開いた。
「 れい、って呼んでください。ちさとくんもそう呼ぶから」
漢字で「ゼロ」の零です。と言ってニコッと笑って、彼の膝を俺の腰にトンと当ててきた。
肩を揺らして過剰に反応してしまった俺を、苦笑しながら見下ろしたその子は
今度は俺の胸にぽすんっと体重を預けてきた。
「 はー、いいにおい。ちさとくんと違うかおりがする」
そう言いながら、俺の胸元に顔を埋めてすりすりと擦り寄ってくるのがなんだか猫みたい。
そして彼は両腕にぎゅっと力を込めて抱きしめてきた。
突き飛ばしてきたり、すり寄ってきたり、抱き締めてきたり、
なんて忙しい子なんだろう。
だけど不思議と、嫌悪感は全くと言っていいほど無かった。
初対面で、今初めて顔を見て声を聞いて話す相手なのに。
こんな風にするりと懐に入って、なおかつ不快感を与えないなんてある意味すごい。
ただ、
今のこの状況はすごくおかしい。
...........なんか、変わってる子だなぁ。
普通の人なら、こんな可愛い男の子に押し倒されても
もっと抵抗したり拒絶したりするんだろうか。
そりゃ俺だって身の危険を感じたら全力で暴れるけど。
でも相手がこの子だから、つい警戒心がどこかに行ってしまって、逆に頭が冷静になる。
俺が比較的自分の体に触れられることには慣れてる、っていうのもあるかもしれない。
れい.....と名乗ったその子は俺の胸元から頭を上げて、
じぃっと俺の顔を覗き込んできた。
彼の瞳に、酷くつまらなさそうな顔をした無表情の自分が映っている。
この子の目に、今俺はこんな風に見えてるのかな。
「 ぜんぜん心拍数あがってないですね、おにーさん 」
不思議そうに首を傾げた零くんは、目をぱちくりさせながら
俺を見下ろして言った。
あれ、俺の胸に顔を埋めてたのって
匂い嗅いでたのかと思ったら心拍数確認してたの?
へんなの。
「 やっぱりこういう状況に慣れてるからなのかなあ.......
ふふ、いーけないんだぁ、男のコ同士なのに......?」
..........どういうこと?
独り言のように俺に向かって呟く零くんは、不敵な笑みを浮かべていて、その瞳は俺を試すようにきらりと光を灯している。
意味の分からない彼の言葉を理解しようと頭を回転させる。
零くんは俺の頬にそっと手を添えて顔を近づけてきた。
反対側の手は俺の腰辺りを撫でてきて、くすぐったくて身をよじらせると下腹部を押さえつけられて思わず声がもれた。
「 .......ん、」
え、ちょっとまってちょっとまって。
この子まじで何するつもりなの。
ここ保健室だよ?人普通に来るんだけど。
って、いやいや、
場所の問題でも無いし!
相変わらず整った顔を寄せてくる。
零くんのサラサラのグレーの髪が、俺の鼻先に当たって
くすぐったい。
頬と顎のラインを指でツーっとなぞられて、
首すじにも触れられる。
あ、まって。
これ、色々とやばい....かも。
視覚的にも肉体的にも、興奮材料が多すぎる。
しかもこの、保健室っていういつ誰が来るか分からない部屋でのこんな状況は余計に背徳的で、ゾクゾクとした感覚が背筋を通っていく。
「 ちょ、ねぇっ、これ以上は......だめ、だよ..... 」
このままされるがままになっているわけにもいかない。
擽ったさに声が震えながらも、フルフルと首を振って相手の動きを止めようとした。
いざとなったら力でどうにでもなりそうだけど、
それは、いよいよの時の最後の手段にしたかった。
零くんは俺の上でフッと笑みをこぼして、
そのあと満足そうにはぁっと溜息をついた。
「 あー、良い眺め。毎日おにーさんをこんな風に見てるちさとくんがうらやましい。」
俺の頭を挟むように両サイドに両手をついて、
肘を曲げて顔を近づけてくる。
え、、、、、、、、、まって。
、、、、今、なんて言った?
俺が明らかに表情を変えたことで、
彼は全てを悟ったのだろう。
零は今までで一番綺麗な顔で
にっこりと笑った。
「 は?、、な......んで、知って、」
頭が働かない。
ぐるぐると色々な思考が脳内を駆け回り、必死で考える。
じゃあ、さっきの『男のコ同士なのに』って言ってたのも
『こんな状況に慣れてる』って言葉もそういう意味?
最初から全部知っていた、、、?
いや、流石に全部じゃないだろう。
千里は自分だけに都合が悪いことや、自分を脅かす危険分子がいたら徹底的に排除する。
彼が千里の友達で常に一緒にいる存在なら、
きっととっくにそれなりの制裁を受けてるだろう。
いや、もしかしたら千里はこの子と仲が良いだけでなんにも知らないのかもしれない。
でも勘のいいあいつにそんなことあるか?
それなら、、、、
千里に俺のことを聞いてできたと言っていたその頭の傷は?
ドキドキと嫌な音を立てる心臓の音が聞こえそうだ。
「 焦ってますか?今のその顔すごくちさとくんに似てますよ。まぁ.......おにーさんはちさとくんと違って秘密を知られたからと言って俺の頭を壁に叩きつけたりしないでしょうけど 」
そして零くんは意味ありげに笑って、わざと自分の髪を俺の頬に当たるように頭を傾けた。
やっぱり、その傷はそういうことなんだ。
「 君は、何がしたいの........?」
俺が恐る恐る聞くと、彼は嬉しそうにパッと顔を輝かせて
スローペースながらも、力強く話し始めた。
「 おにーさん俺はね、すきなひとと一緒になりたいんです。
すきなひとと同じことをしていたいんです 」
「 ................ 」
「 だから、すきなひとと同じ景色を見て、同じ感覚を味わいたい。それって普通のセックスより数倍気持ちイイとおれは思うんです........!」
俺の上でうっとり恍惚とした表情を浮かべながら話す彼は少し不気味で怖かった。
そして嫌な予感がした。
「 だからね、だからね!すきなひとが抱いてる男のコも、俺は抱いてみたい。おんなじ感覚を味わいたい。それができたらどんなにしあわせなんだろうってずっっっっと思ってた 」
嫌な予感が的中したっぽいぞ。
らんらんと目を輝かせている零くんはもう若干狂気じみてる。
「 ........零くんは、その......千里が好き、なの? 」
彼の話から推測するに、
さっきから連呼していた「すきなひと」とは千里のことだろう。
「 ふっ、おにーさん何か勘違いしてませんか?」
零くんクスッと笑って否定した。
「 すきっていうのは俺の中ではあくまでも「興味がある」ってだけの感覚です。恋愛とは違うので.......ここ重要ですよ」
「 よく、、分からないけど、、、でも俺は君とセックスするつもりはないんだけど........ 」
「 そうですよね〜、気が変わったら言ってくださいね 」
そう言って、彼は意外にもすぐに俺の上から退いてくれてさっきまで彼が寝ていた隣のベッドに移った。
やっぱり彼のカーディガンが落ちそうで気になる。
「 なんでもいいんだけどさ、、、、俺が千里に似てるんじゃなくて、千里が、俺に似てるんだからね。」
彼のさっきの言葉で少し引っかかったことを
訂正した、
すると彼は、一緒びっくりしたような顔で目を瞬かせ、
そのあと堪え切れなくなったように笑いだした。
「 ふっっ、ちょっ、ぷっ、あはっ、あはははっっ!!!!」
さっきまでの口角だけで笑ってるような薄い笑顔じゃなくて、心の底からおかしそうな声。
戸惑って、ただ笑っている彼を見つめていることしかできなかった俺は何がそんなにおかしいのかと尋ねてみた。
「 だ、だって。今日の昼もちさとくんおんなじこと言ってたんですよ、、うける、やっぱり超そっくりです2人!」
どういう会話をしてそんなセリフが千里の口から出たのか知りたいと思ったが、とりあえず今はやめとこう。
今からこの子に聞きたいことが山ほどあるのだ。
「 どっちもすごく魅力的ですね」
と言って、また零は綺麗な顔で笑った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
50 / 70