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『僕』
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「あきー!朝よ!」
1階から聞こえる母の声を耳にし、着替えていた手がほんの一瞬止まる。
また『僕』の1日がはじまる。
リビングに入ると朝食のいい香りが漂う。
食卓に並ぶ料理と、椅子に座って笑顔でこちらを見ている母。
「あき、おはよう」
「おはよう」
一言朝の挨拶を交わし母の向かいの椅子に座る。
他愛もない話をしながら朝食を取り終えると、ピンポーンとインターフォンが鳴った。
毎朝迎えに来る僕の幼馴染だ。
鞄を手に取り玄関まで見送りに来た母は「行ってらっしゃい、気をつけてね、あき」と声をかけると笑顔で手を振った。
「うん、行ってきます。」
「あき、おはよ」
玄関を開けると幼馴染の氷山優(ヒヤマ ユウ)の姿。
「おはよう、優」
これが、僕、夜伽 暁月(ヨトギ アカツキ)の日常。
そんなある日、単身赴任していた父が帰って来たことによって日常は終わりを告げた。
『あき』と僕を呼ぶ母に怒りをぶつけ、泣きながら「ごめんな、暁月」と何度も謝る父になんて言葉を返せばいいのか分からなかった。
謝らないと行けないのは、俺なのに──────
それからはあっという間だった。
父は僕を全寮制の高校に転入させるための手続きを済まし、荷物を送ってしまった。
最後まで行かないでと泣きながら縋り付く母を父親が抑え、僕は母の叫び声を背に家を出た。
幼馴染には何も伝えなかった。
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