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神様はいるのかもしれない
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新宿から徒歩十五分。
表通りから路地裏へ入り、さらに何度か曲がった先の小さな交差点の角。
地下を含めると四階建てのビルの入り口の前で止まる。
一階はテラス席もある女性向けのカフェだが、その端に地下への入り口のドアがある。
ナチュラルテイストのカフェとは全く正反対の、黒く重厚なドア。
その横には「Attrait」と店名の書かれた表札程度の小さな看板が掲げられている。
ドアの鍵を開け、中へと入る。
数歩進むと螺旋階段へと続き、そこを降りると目の前にバーカウンター、その前のフロアは半個室になったソファ席が四席、さらに奥へと続く細長い通路。
その先は、VIPルームになっている。
場所が場所だけに、秘密の恋に溺れる業界人がデート場所として使うことも少なくない。
カウンターに荷物を置くとキッチンへと向かい、冷蔵庫から必要な食材を取り出すと、エプロンを腰に巻き気合を入れる。
「よし!んじゃ、仕込み始めますか!」
俺はこのダイニングバー「Attrait」のオーナー兼シェフ。
「今日は金曜日だからなー、そこそこ混むだろうし…」
いつもより多めの仕込みが必要だと思いながら手を洗っていると、誰かが階段を降りてくる足音が聞こえた。
スタッフが出勤してくるにはまだ早いし、宅配や業者なら声をかけてくるはず…。
不思議に思いながら、足音の主を確かめにキッチンを出ると、階段の途中に男が一人立っていた。
ちょうど螺旋階段の段差で顔が隠れてしまっているが、体格からして間違いなく男だ。
「すみません、まだ準備中で…」
ドアの鍵が開いていたから、営業中だと思って入ってきたんだろうと、男に近づき顔を見た瞬間、俺は言葉を失った。
マジか…。
俺、今まで微塵も信じてなかったけど、もしかしたら神様はいるのかもしれない。
そこには、俺の理想そのままが立っていた。
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