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渓谷の仙人⑥
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「今日もおいしいよ!ありがとう」
「そっか、よかったな。」
いつ言おうかどうしようか迷っていると
エリックが、あっ、と声を出した
「明日は、午前中だけセントノレに
行ってくるよ。この前出したレシピに
訂正してほしいって言われちゃったから。」
セントノレ……ホテルパリ・セントノレ
パリの一流ホテルであり、
エリックが働くもう一つの場所
エリックがシエル・エトワールと
ここのホテルの兼業になった理由は
…まぁ、色々あったよな……
ちなみに今では若くしてパティシエ長に
なっていたりする。
「……わかった。別に急がなくて
いいから午後までいろよ。」
「うん、じゃあ、そうしようかな?」
そのうちエリックが今日あった面白いことを
話し始めて、その話に笑いながら頭の片隅で
タイミングを逃したなと舌打ちする俺がいた。
******
シュンは俺に何か隠している時とか、後ろめたいことがある時決まって首を触る
今日の夜ご飯の後にソファに座っていた時も、
話している時も触ってた
本人は気づいてないようだけど
あらかた予想はついてる
きっとさっきの電話のことかな?
あの様子じゃ、あまり俺にとって
よくないことなんだろうけど
詮索されるのを嫌うシュンだから、
自分からは聞かない
シュンが話したくれる時に
話してくれる分だけわかればいい
先にベッドに入っていたシュン
扉に背中を向けて携帯を見ていた
「こーら、シュン、目悪くするよ?」
そう言って携帯を取り上げると恨めしそうに睨み「この前メガネを買ったお前が言うかそれ」と
言ったシュン
俺が携帯をベッドサイドに置くのを
見守ってシュンが左手を出してくる
手を繋いで眠る
それが俺とシュンのあたりまえだった
相変わらず細い手を優しく握る
暗い部屋で2人で天井を見つめているのかな
シュンは…寝た?
そう思った矢先
「……エリック、あのさ」
「ん?」
「今日の夕方の電話…実は日本のカナリホールディングからでーーーーーーーーーーー」
そういうことだったのか…
シュンの実力は、本物だ
だから誰もがシュンの助けを、力を欲しがるのは知っている。
2週間は、長いけど
お店はしばらく閉めても今後に
影響することはない
「良いと思うよ?」
「そ、そんなあっさり?」
「あっさり…かな?でもそれは
間違いなくシュンにとってプラスになる
話だからね、断る理由が見つからないと思うよ。それに、店の方はなんとかなるし、
俺にできることはなんでも協力するよ。」
「2週間…なのに?」
少し寂しそうに聞こえるのは俺のエゴかな?
「……確かに、本音では離れたくないよ
行かないでほしいし、行かせたくない。
けれど、エリック=リホーウェン個人の
考えで、天才ショコラティエの道を
狭めるなんてことはできない。
大好きなシュンがまた一歩前に進めるなら、
相棒として応援しなくてはいけないよね。」
「エリックありがとう…!」
バッ!と起き上がり、布団の上から
抱きしめくるシュン
あまりないシュンの甘えに、
可愛くてサラサラの黒髪を撫でる
「お礼はこれだけ?」
「はぁ?調子乗んな、ばぁか…。寝る。」
ボスン!とマットレスが沈み込む
残念……そう思いながらも
やっぱり…離れるのは寂しいなって自分がいる
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