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「い、い、いち、時に、よ、予約した、ざ、座々川(ざざがわ)朝陽、です」
高校受験の願書に同封する診断書を書いてもらうために、朝陽は幼い頃から世話になっている小児科に訪れた。
花井小児科の待合室の壁は薄ピンクの花柄で、どうも居心地が悪く体がもぞもぞする。
「朝(あさ)ちゃん、待ってたよ」
診察室から、花井が顔を出した。
相変わらず、うんざりする程の男前で、整えられた口周りのヒゲがよく似合っていた。
「聖美さんから聞いたけど、朝ちゃん、もう高校生になるんだね。人の子は育つのが早いと言うが、あんなに小さくて泣き虫だったキミが立派になって。僕もすっかり歳をとるわけだよ」
初めて会った日からほとんど変わらない化け物みたいな人間に歳のことを言われても、朝陽にはピンと来ない。
花井はそれほど、未だに若々しかった。
「やあ、朝陽くん」
診察室に案内されると、花井の息子であり、同じ小児科医の道弥(みちや)が検査の準備をしている最中だった。
「随分、雰囲気が大人っぽくなったね。髪色のせいかな?やっぱりイマドキの高校生って感じで、カッコいいね」
カッコいいなどと言いながら、道弥は当たり前のように朝陽の頭を何度も撫でる。
花井同様、昔からの付き合いだったせいか、彼も朝陽に対し、未だ小さい子どもを相手にするような口調や振る舞いが抜け切らなかった。
「朝ちゃん、書類持って来た?」
「も、も、持って、き、た」
聖美から預かったファイルを花井に渡す。
彼は笑顔でそれを受け取ると、丁寧に目を通し始めた。
「朝陽くん、先生が資料を確認している間に身長と体重を計測しよう。さあ、洋服は脱いで緑のカゴに入れて、下着はまだ履いたままでいいよ」
道弥に促され、朝陽はお下がりのパーカーを頭から抜き取る。
ジーンズも下ろし、靴下と一緒にカゴへ放り込んだ。
「足のマークにゆっくり立ったら、背筋をピンと伸ばして、あごは軽く引くんだよ」
朝陽は紺のボーダーが入ったボクサーブリーフ一枚だけを身に纏い、足型に合わせてゆっくりと身長計に体重をかける。
明善も、長男の千明(ちあき)も、中学時代にぐんと背が伸びた。
自分もそれにどうにかあやかろうと、精一杯背筋を伸ばし、息をたくさん吸い込んで、胸を張ってみる。
「ほら、ふらふらしないで。またいつもみたいに、背中とお尻がぴったりくっ付いてないぞ」
道弥が、朝陽の胸に触れ、優しく姿勢を整えた。
どうもバランス感覚が鈍いらしく、朝陽はいつもこうやって道弥から注意を受ける。
今度は両足でしっかりと踏ん張ってから、息を吸った。
ふと、胸に乗せられた道弥の手が、突起の周りで円を描くような仕草を見せ、違和感を覚える。
彼の手はそれからゆっくりと腹へ下り、へそを辿って、下着の上から股の膨らみを包み込んだ。
そうかと思うと、すぐに体から離れてゆく。
道弥はそれを数回繰り返した。
「大きくなってるといいね」
いつもと違う、妙な雰囲気。
しかしそこには、普段通りの道弥がにっこりと微笑んでいるだけだった。
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