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毎日
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俺はなんのために生きてるんだろうと思うことがある
家は裕福で、一般的にはこれを幸せと呼ぶんじゃないか。
でも、俺にはこの家は大きすぎた。束縛される。自分を殺される。
期待の眼差し。妥協のため息。矛盾した周囲からの抑圧。
両親、教師、友達。周囲にはいつもいい顔をしてきた
成績はいつも1位だし、スポーツだってできる。
ただ、なにかを好きになったことが1度もない
食べ物も、色も、趣味も、場所も、人も
自己紹介は当たり障りのないことを言っていたけど、実際なにかに没頭したことなんて1度もないし
ああ空っぽだな、と感じる
何故か喪失感が常にあって
人生ってこんなもんかあ、と何故か達観している
将来何がしたいとかもないし、それは他人に既に決められているし。
入った高校は祖母に決められたものだ。
我が家は厳しく、小学校の頃から入るところは決められていた
将来は父の製薬会社をそのまま引き継ぐと決められていて、俺は今までに大きな選択を自分で決めたことが無い。それしか道はなくて。
どうしてだろうと考えても、多分周囲のせいにするしかないんだろう
小さい頃から自分を出すことができなくて。でも誰かに見て欲しかった。
兄は俺と違って自分のやりたいことをできる自由な人だった
周囲に何と言われようがやりたいことを貫いた
ダメだと言われてもインスタントラーメンを食べたし。
ダメだと言われても夜更かしをした。
ダメだと言われても違う高校に行ったし。
ダメだと言われても家を出た。
結局自由奔放な兄に周囲は振り回されていたけど、誰も止められなかった。兄はそれほどまでに優秀で、また美しく自分を生きているように見えた。
祖母は今度は絶対に俺を思い通りにしたかったらしい。もともと兄の替わりと呼ばれていた俺は、逃げようとは思わなかった。逃げ場はなかった。
小学生の頃から死ぬほどピアノを練習させられた。ストレスで吐いたことも何度もあった
お陰で俺は小学生の頃ずっと1人だった
遊んでいる奴が妬ましかった。彼らは何も知らずに笑っているんだ、と思った。
彼らはこの先苦労するんだと思った。でも違ったんだよ。彼らはこの先も好きに生きていく。俺はこの先も、敷かれたレールを進むだけだ
俺は無駄な苦労をしているんだと思った。
自分のしていることに意味を見いだせなかった。今やっていることは意味が無いのに苦しいだけだ。誰も俺を見てくれない。
鍵盤に手を乗せようとすると手が震えて、床に落とした足が震えた。譜面を見ると吐き気に襲われた。
トイレに逃げ込んだことがあった。その後祖母にすごく怒られて、電気を消した部屋に1日頭を冷やせと閉じ込められた
屋敷の奥に、勉強を完璧にできるまで閉じ込められたりもした。
母は弱い人だった。それ故に、俺に当たった。
父は家庭に興味がなかった。
俺はどんどん自分の行為に意味を見いだせなくなっていった。
誰も俺に期待なんかしていなかった。
常に「これくらいはできて当たり前」という、期待と妥協が入り交じったなにかを向けられていた。
1度、ただ1度、誰かに「頑張ったね」と言われていれば、こんなことを考えることはなかったかもしれない。
ああほら、結局俺は、変わることを願うのに、変わろうとしない。
俺は今日も、俺という化けの皮を被って、虚無感に苛まれながら息をしていた。
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