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高級マンション最上階、それが俺の居場所
大きな窓から見渡せる東京の夜景
でもカーテンが開く事は無い
暗い部屋で見つめるパソコンの画面
相変わらず毎日毎日、死にたい奴が書き込みをしている
「死ぬ勇気もないくせに」
半分以上は寂しいからかまって欲しい書き込み
そんな書き込みを淡々と見つめ、手を止めた
「君はホントに死にたいのかな?」
17歳、男性
誰でもいいから殺して下さい
「馬鹿なの?殺したら殺人罪じゃない」
煙草に火をつけ、クスリと笑いながら返信をした
返事が戻って来たのは5分後
本当にバカな子
適当に相手をして会う約束をした
「幻蝶、後はお願いね」
「ああ」
彼はビジネスパートナー
と言っても裏方かな
ネット社会の今、俺には必要な相手
彼が全てを塗り替える
さっきのやり取りも無かった事にね
「出掛けて来る」
「わかった」
「後はよろしく」
「客なら腐るほどいる」
「一番高値を付けた奴らに売りさばく」
「了解」
札束を無造作にポケットに入れて待ち合わせ場所に向かった
目印は黒のニット帽か
あそこに立っている奴に間違いないだろう
俺は極上の笑顔を作り、俯いていた奴に声を掛けた
「こんばんは」
「あっ、どうも」
「場所を変えない?」
「あのっ!」
「・・・・・・・・・・」
「あのっ!!」
「死にたいんでしょ?」
「えっ?」
「男でがっかりさせてごめんね」
「いえ、顔を知らないから驚いただけ」
「どうせならやりたい事をやってからでも遅くは無いはず」
「・・・・・・・・・」
「何がしたい?何でもいいよ」
「何がって・・・」
「一つぐらいあるでしょ?」
本当に夢も希望も無いのかな?
人間なんだしあるに決まってる
「無理だよ」
「どうして?」
「金がかかるし」
「言ってみて」
「料亭で食事をして綺麗な女としたい」
「じゃ行こう」
「えっ?」
こいつは馬鹿だね
死ぬ前にそんな事を考えるのは馬鹿しかいない
でも、それでもいい
「乗って」
「すごい車・・・」
「乗るの?乗らないの?」
「乗る」
「どうぞ」
車は単なるアクセサリー
黒いジャガーはこいつにとって霊柩車かもね
助手席に乗せてアクセルを踏み込んだ
「すごい!気持ちいい~」
「確認なんだけど」
「何?」
「本当に死にたいの?」
「死にたい、もうこんな世の中で生きるのはごめんだ」
「そう、死にたいんだね?」
「死にたい」
「約束だよ?」
「もちろん」
彼とそんな約束をしながら微笑んだ
そのまま高級料亭に連れて行き、好きなだけ食事をさせた
「うまい!さすが料亭の味!」
「お酒もどうぞ」
「うん」
死にたい奴が料理を食べて酒を飲むなんてね
でも、約束は約束だから
「隣の部屋は何?」
「女の子を適当に用意したから朝まで遊べばいい」
「えっ?でも俺なんか相手に・・・」
「じゃ、俺は朝迎えに来るから」
「えっ?」
「全て支払いは済ませてあるから安心してね」
「わかった」
そのまま部屋を出て裏口に車を止めた
人間には欲がある
命だって惜しいはず
ラジオをつけると葵のバンドの曲が流れた
煙草をふかしながらしばらく曲を聞き星の見えない空を見つめた
深夜過ぎ、携帯が光った
ーはいー
ー商品は?-
ー17歳男性、病気は無いみたいだからー
ーわかった、全てお買い上げだー
ー了解ー
短い会話を済ませ、夜明けを待った
そして・・・
迎えに行くと言ったのに困った奴
裏口から逃げる事なんてお見通しなのに
車を降りてそっと近付き微笑んだ
「どこへ行くの?」
「あっ・・・ごめん、やっぱ死ぬのやめ!」
「どうして?」
「生きる喜びを感じたと言うか・・・あはは」
見向きもされないような女とやれた事を勘違いするのは馬鹿な証拠
全て金で動いているのにね
「なんかごめんね」
「・・・・・・・・・・・」
「てか、殺しなんて出来ないでしょ?普通から考えてさ」
「・・・・・・・・・」
「生きる希望を与えてくれてありがとう、じゃ・・・」
「約束したでしょ?」
「何を・・・やめ・・・」
男を眠らせ、そのまま車に乗せた
嘘つきは嫌いだよ
幻蝶に連絡をしてある場所に向かった
その場所は絶対にばれない場所
眠っている男を部屋まで運び、ベッドの上で拘束した
起きるまでの時間、楽しい夢でも見るといい
目が覚めたらそこは現実
暗闇しかない未来の見えない現実が手招きをしているから
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