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警察に通報したのは隣の人だった
俺は罪に問われる事は無かった
幸い、俺が殺した男は前科があって執行猶予中だったらしい
世間ではその男が俺達親子を殺した事になっていた
俺は死んでいないか・・・九死に一生を得た子供になっていた
だけどそんな事はどうでもよかった
俺は腕の傷を見て夢など叶わないと知った
その後、皮肉にも俺は親が仕込んだ体を売って生活をしていた
ただ生きているだけの毎日
どうでもいい毎日
いつものように客を掴まえる為にバーに向かい、カウンターの椅子に腰かけた
ポケットの中からガラス玉を取り出し、ずっと見つめていた
別に金には困っていないからここに来なくてもいいんだけど行く所も無いしね
「スノードームだね」
「そう言う名前なんだ」
「うん」
「・・・・・客?」
「違う」
「そう」
「お金が必要?」
「どうでもいい」
「じゃ、出ない?」
「・・・・・・・・・」
おかしな奴だと思った
「どこへ行くの?」
「そうだな・・・あそこ」
そう言って指をさした場所は公園の噴水だった
「七色に光るんだ、綺麗だろ?」
「うん」
噴水のしずくが綺麗だった
ぼんやりと噴水を見つめ腰を下ろした
「俺は幻蝶」
「楓」
「いつもあそこに?」
「行く所も無いし、生きる為だから」
「生きたいの?」
「死ぬのが面倒臭いだけ」
「面白い事を言うんだね、それでいいと思うよ」
「変わってるね、どうして俺に声を?」
「楓の瞳が気に入った」
「・・・・・・・・・」
「真っ暗なんだな~って」
「そうかもね」
「俺も同じだからさ」
「同じ?」
「そう、夢も希望もない」
「じゃ、同じだね」
「うん」
確かに幻蝶の瞳も暗かった
理由はわからないけどそう感じた
そして幻蝶が言った
悪魔になれるかと
最初は意味が分からなかった
だけど、幻蝶は暗い瞳で俺に言った
ー夢を叶える仕事をしないか?-
夢を叶える仕事?
どうして俺がそんな事を
だけど、俺達の中には同じような憎しみしかなかった
別にお金が欲しいわけじゃなかった
ただ・・・命を自ら放棄するのが気に入らなかっただけ
俺は客を取るのを止めて幻蝶と暮らし始めた
幻蝶は天才的なハッカーだった
証拠が残る事も無い
だから俺達は死にたいと言う奴らの願いを叶えてあげた
ただ殺して肉の塊にするのは神様の罰があたると言い出したのは幻蝶
必要な人に分け与えようと・・・
考えてみれば都合のいい考えだったけど、俺はもう悪魔になっていたから笑って頷いた
気がむいた時にネットを探り、死にたいと言う奴らを捜した
俺だって心が無いわけじゃない
ちゃんと約束を交わして最後の願いは叶えてあげた
だけど本当に死にたい奴なんていない
やりたい事をやらせてしまうと心変わりする奴らばかり
でも、約束は約束だから・・・
躊躇わずに命を奪った
「楓?」
「昔の事を思い出しただけ」
「やめたいの?」
「そうじゃない、別に強制されてないじゃない」
「そうだけど」
「親って何だろうって」
「それは俺にもわからないな」
「うん」
「そんな顔をしないで」
「ごめん」
俺は母親を殺した
だから親が何かなんて知る必要は無い
「俺が家族だよ、それじゃダメかな」
「ううん、嬉しい」
心が壊れたもの同士、狂った世界の中で生きていた
「ところで何をしていたの?」
「いたずら」
「暇人」
「指先で何億もの金が動かせるのが面白いと思わない?」
「俺にはわからない」
幻蝶の悪戯はある意味正義
汚い金を暴いて奪い取る、誰にもばれない方法でね
幻蝶はそうやって一人で生きて来た
体ではなく頭脳を使って大金を手に入れる術を身に付けていた
「俺達この先どうなるのかな」
「バレたら死刑だね」
「それでもいいかな、法律に奪われる命だし」
「そういうどうでもいい考えしか出来ない楓が好きだよ」
「うん」
「でも俺はね、楓には幸せになってもらいたいからさ」
「それは無理かも」
「きっと行けるよ、そのスノードームの世界に」
「行けたらいいな」
「探すのは俺じゃない人とだね」
「ん?」
「楓が好きになった人と探すんだ」
「じゃ、死ぬまで行けそうにない」
「ったく」
そう言いながら笑う幻蝶
俺達は恋人ではない
恋人以上の何かで結ばれていた
好きでも愛ではない
でもそれで十分だったんだ
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