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ー卯月ー
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目が覚めたら腕の中にいるはずの翔がいなかった
部屋中捜したけどどこにもいない
まさか一人で?
そんな筈は無い、約束したんだから
「幻蝶?」
緊急用の携帯が鳴った
ー楓、今すぐそこから逃げろー
ーどう言う事?-
ーお前、今まで誰と居たんだ?-
ー誰ってー
ー翔と言う男か?-
ーごめん、ちゃんと話をするべきだったねー
ーそんな事は今はいい、とにかく今すぐそこを出ろー
ーえっ?-
ーそれと翔が・・・-
切れちゃった
翔がどうしたんだろう
携帯を見つめ、首をひねった
そして玄関のチャイムが鳴った
「楓、開けて」
翔?
「翔、どこに行ってたの?」
「とにかく開けて欲しいな」
「わかった」
俺はなんの疑いも持たず玄関を開けた
本当に甘い人間だった
「翔・・・そいつらは誰?」
「・・・・・・・・・」
「翔?」
翔の顔が一瞬、歪んだような気がした
「連続殺人容疑、及び臓器移植法違反で逮捕する」
「えっ?」
これはどんな茶番なんだろう
目の前にいる翔が俺を逮捕しようとしている
もしかしてまだ夢の中・・・?
「騙したの?」
「潜入捜査と言って欲しいな」
「だからいろいろ俺に尋ねたわけね」
「証拠が欲しかったから」
「そっか・・・でもよかった」
「えっ?」
「病気じゃなかったんだね」
「・・・・・・・・・・・」
「よかった」
「逮捕しろ」
まるで他人事のようにこの光景を見つめていた
テーブルの上に置かれたアネモネの花びらがはらりと落ちた
「ホント、可笑しい・・・見捨てられたのは俺だった・・・」
「楓、動くな」
「ホントはね、俺も一緒に死ぬつもりだった・・・翔が消えてしまうのならずっと傍に居ようと思っていた、もうこんな世界にうんざりしていたから」
「・・・・・・・・・」
「二人で死んで一緒にスノードームの世界で暮らしたかった」
「お前は罪のない人間を殺した」
「死にたい奴らを殺してあげても罪って事だね」
「連行しろ」
「でも、俺の心は凍り付いたままこの裏切りを忘れない」
ゆっくり後ろに下がり、窓が開いているベランダに向かった
「楓!動くな」
「俺は誰にも殺させない、殺して欲しいとも思わない、ちゃんと自分で死ぬよ」
「やめろ!」
「許さない・・・翔・・・でも愛していたよ」
「楓・・・楓ーーー!」
俺はベランダの手すりから身を投げ出した
何だ、俺の人生ってこんな結末なんだね
殺して欲しいと言う奴らを殺す事も罪
ホント、こんな世界消えてしまえばいいのに
「雪」
こんな時期に雪が降るなんてね
まるでスノードームの中にいるみたい
俺は吸い込まれるように落ちて行きながら真っ白な世界を見つめていた
「俺は・・・」
死んだはずだけど
「爪が真っ黒」
どういう事?
ー本物の悪魔になればいいー
「えっ?」
俺は立ち上がり、自分の死体から流れ出した血だまりに映る姿を見つめていた
俺は死んだ
そして悪魔になった
そういう事なの?
そして翔が俺の死体を泣きながら抱きしめていた
もうよくわからないや
裏切られたのか助けようとしてくれたのか
どちらにせよもう遅い
俺は死んでしまったんだし二度と翔を抱きしめる事も出来ない
そして記憶が薄れて行った
このまま翔の事も消えてしまうのかな
死後の世界はスノードームの中ではなく、住み慣れた場所だった
ーそうそう忘れてたー
「あのさ、一体誰なの?」
ーもうすぐ翔と言う存在が楓の心から消えてしまうからー
「えっ?」
ー愛していた人をその手で殺めないようにねー
「記憶が消えると言う事?」
ー裏切られた人の事など忘れてしまえばいいんじゃない?ー
確かに俺は死んでしまった訳だし二度と会う事も無い
でも、全てを忘れてしまうのは辛いな
ーじゃ、悪魔としての生活を楽しんでねー
「馬鹿じゃない?」
悪魔としての生活って何?
もう全てが面倒臭いな
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