アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
-
しばらく悩んでいると、また声が聞えた
声と言うよりは悲鳴に近い
窓に近付き、中の様子を伺う事にした
「カーテンは無いけど良く見えない」
それにやたらと音楽の音量が大きい
やはり中に入るしかなさそうだ
窓があっても通り抜ける事が出来るのは便利だね
そのまま部屋の中に入り、声の行方を探した
「お願いします、助けて」
「のこのこついて来るのが悪いんだろ?」
「お願いします」
「死にたいんだろ?」
「ごめんなさい、あれは冗談・・・」
「構わないさ、冗談でもね」
「ここから出して」
「君は死にたいとネットに書き込みをした、私は君を助けてあげたいと思ったんだ」
「お願いします、ここから出して」
「見てみたかったんだ、目の前で首を吊って死んで逝く人間を」
「やめて・・・お願い」
「すぐ楽になる、死ぬと言う事は決して楽しい事では無いし、夢の国へ行けるわけでもない」
「嫌っ!やめてーー!」
「こうやって首にロープをかけて・・・」
「お願い・・・やめて」
「その椅子の上に乗りなさい」
「嫌・・・」
「乗れ」
「ぎゃ!」
「何ならこのまま切り刻んでもいいんだよ?」
「ううっ・・・っ」
「そうそう、いい子だ・・・すごく可愛いよ、その泣き顔」
「嫌っ・・・助けて・・・ううっ」
「楽しませてもらうよ、私に感謝しろよ」
どうやら何かのプレイではなさそうだ
男は笑いながら椅子を蹴飛ばし、暴れる女の子を見つめていた
「ぐはっ!・・・ぐぅぅ・・・うっ・・・」
「なかなか死なないんだな、面白い」
「ううっ・・・・っ・・・」
「動かなくなった、やはりすぐに死んでしまうのはつまらない」
「さて、そろそろ食事をしよう・・・美味しそうな太ももだ」
「悪食だね」
「誰だ!」
「いつもそんな事をしているの?」
「どこから入った」
「そんなにお腹が空いているのなら俺がご馳走するよ」
「えっ?」
赤い舌で唇を舐め、腕を心臓に突き刺してまだ脈を打っている心臓を取り出した
「そうだった、人間は心臓が無ければ死んでしまうんだったね」
動かなくなった心臓を床に落とし、青白い魂を掴み口の中に入れて飲み干した
「まずいけど仕方が無い」
指を舐めながら壁に掛かっている写真を見つめた
どうやらこいつは人間を殺した後食べていたらしい
写真に写っている奴らはこいつが食べた人間と言う事かな
「確かに殺してもいいかもね」
これで当分は空腹から免れる
当分ってどれくらいなんだろう
「帰ろう」
大きな月に向かって飛び立ち、飴細工のような夜景を見つめた
これで俺は本当の悪魔になったと言う事か
不思議と罪悪感は無かった
殺された奴が可哀想だとも思わなかった
だってそうでしょ?自分で言った言葉なんだから責任を持たないとね
軽々しく死にたいなんて言うのが悪いんだよ
「お帰り」
「うん」
「その顔は・・・そうか」
「俺を嫌いになる?」
「ならないさ、だって悪魔だしな」
「変わってるね」
「みんなそう言うよ」
「ところであいつは?」
「家出した女の子や死にたいと書き込みをしている女の子を優しい言葉で誘い殺している」
「うん」
「家が金持ちだから決してその殺人が世の中に出る事は無い」
「どうして?」
「あのマンションはそいつの親のものだからさ」
「どうでもいいね」
「だな」
「でもどうやってあいつを見つけたの?」
「最近、仲間内で噂になっていたしね」
「仲間とかいたんだ」
「ネット上だけどね・・・で、少し探りを入れたら簡単に見つかったと言う訳」
「よくわからない」
「お前は考えなくてもいい」
「わかった」
きっと幻蝶には何か特別なルートがあるんだろう
パソコンの事はわからないから聞いても無理だしね
「ところでさ」
「うん」
「お前の姿を見られたか?」
「見えたらしい」
「と言う事は、俺以外の奴でもお前が見えるのか」
「相手に触れるには姿を見せなければ触れないみたい」
「成程」
「でも、見られても俺は人間ではないし捕まらないけど」
「だな」
「・・・・・・・・・・・」
「どうした?」
「幻蝶は人間だから」
「俺は捕まらないよ」
「どうして?」
「国家機密を握っているから」
「さすが」
「だから俺の事は心配しなくてもいい」
「うん」
実は少しだけ心配だった
幻蝶が犯人にされたらって考えてしまった
「楓」
「何?」
「明日遊びに行こうか」
「えっ?」
「退屈だろ?」
「でも」
「人間の姿になれるか?」
「多分」
悪魔の姿の俺は少し不気味
でも人間の姿にはなれるらしい
「どう?」
「完璧、生き返ったみたいだ」
「今気付いたんだけど」
「だな」
「うん」
死んで悪魔になった俺は、人間の姿になると裸のままだと言う事に気付いた
取り合えず自分の服を着てソファーに腰掛けた
「やばいな」
「ん?」
「そうやっているとお前が生きているみたいだ」
「死んでるけど生きてるね」
「相変わらず可笑しな事を」
「これで眠れれば言う事無いのにね」
「楓」
「なんてね・・・幻蝶は安心して眠ればいい、俺がいれば安心でしょ?」
「そうだな」
「あのさ、今思ったんだけど」
「うん」
「悪魔ならもしかしてギターも弾けるんじゃないのか?」
「でも」
「暇つぶしにはなるだろ?」
「うん」
動かなかった指は動くようになっていた
嬉しいけど悲しいな
その日から俺の夜の過ごし方はギターを弾いて過ごす事になった
時間ならたっぷりある
今まで弾けなかった分、思い切り弾かないとね
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
16 / 48