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「こんな体でも痛みは感じるんだ」
赤く染まった体を見つめ、悲しく微笑んだ
本当に楓が思い出してくれたのかと嬉しかった
それなのに・・・
「心まで悪魔になってしまったの?」
昔の楓なら絶対俺の体に傷を付けたりはしなかった
嫌がる事もしなかった
だけど今はそれを楽しんでいるようにも見えた
すごく悲しいけど俺にはそう見えたんだ
「へぇ・・・本当にいたんだな」
「・・・・・・・・・・」
「もしかして俺を忘れたとか?」
「覚えてる、幻蝶でしょ?」
「正解、しかし本当にここにいるとはね」
「幻蝶も俺を許してはくれないんでしょ?」
「俺は生憎まだ人間なんでね・・・もちろんお前を許すつもりは無い」
「じゃ、どうしてここへ?」
「無駄だと伝えに来ただけだ」
「無駄?」
「今の楓は昔の楓では無い、お前の心を弄ぶ悪魔だ」
「・・・・・・・・・」
「その傷も楓にやられたんだろ?」
「いいんだ」
「別に心配してないさ、同情もね」
「わかってる」
「だけどお前にどうしても尋ねたい事があるからここへ来た」
「尋ねたい事?」
「何故楓ではなく兄を選んだ」
「えっ?」
「ろくでもない兄貴だったんだろ?血が繋がっているからか?それとも出世の為か?」
「確かにどうしようもない兄貴だったけど、見捨てる事が出来なかった」
「そしてお前はある意味、悪魔の契約をした」
「・・・・・・・・・・」
「それなのに何故ここにいる」
「ずっと後悔していた、何故楓を選ばなかったのかと」
「それは兄貴が自殺したからか?」
「違う、助ける価値など最初から無かったんだ・・・それなのに俺は」
「お前は楓の心を粉々に砕いた、その結果が今の楓なんだろ?」
「楓は最後に本当に嬉しそうに笑ったんだ・・・病気が嘘だと知って」
「最悪だな」
「わかってる」
「じゃ、尋ねるが・・・もし楓がお前を許したらどうするつもりだ?」
「わからない・・・もう死んでいるんだし」
「水と油のように、天使と悪魔は交わる事は出来ない」
「・・・・・・・・・」
「許してもらえればそれでお前は満足なのか?」
「ううん、心は空っぽのままだと思うよ」
「何故?」
「愛した人を裏切ったんだ・・・そしてこれからも永遠に愛される事は無い」
「だろうな」
「俺は天国へも行けないまま永遠にさまよい続けるんだろうね」
「すまないが同情はしない」
「うん」
「だけど・・・」
「何?」
「お前の粘りを見たくなった」
「諦めるつもりは無い」
「死ぬ前は楓がお前を追いかけていた、お前は心を見せないまま騙し続けた」
「見せたら心がぐらつきそうで怖かった」
「本当にお前の事を愛していた、毎日楽しそうで微笑ましかったよ」
「・・・・・・・・・」
「次はお前が楓を追いかける番だ・・・楓は心を決して見せる事は無い」
「わかってる」
「まぁいいや・・・どうせ泣きを見るのは目に見えているしね」
「そんなのわからないだろ」
「わかるよ、楓は悪魔なんだから」
「楓が人を殺していても知らん顔なんだろうね」
「当たり前だろ?俺にとって楓は命より大切なものだから」
「それって・・・」
「だから楓がこれ以上悲しまないように俺は黙っているだけだ」
「愛しているの?」
「愛よりも深い何かだろうな」
「何故もっと早く楓に・・・」
「残念ながら楓にその気はないのはわかるしね・・・だけどこんな事になるのなら無理矢理でもお前達を引き離せばよかったと思っているよ」
「・・・・・・・・・・」
「俺は悪魔でも構わない、楓を大切にしたいと思っている・・・だからちょろちょろ現れるお前が邪魔なんだよ」
「どうしたいの?」
「お前は死なないだろ?でも騙す事は出来ると思ってね」
「えっ?」
「気が変わった・・・俺も悪魔になったのかもな」
幻蝶は笑いながら俺の羽を抜き、自分の体に突き刺した
「やめろ!」
「俺はお前に傷付けられた・・・子供みたいな嘘だけどね」
「やめて・・・もうやめてっ!」
何度も突き刺す羽を掴み、血に染まった手を握りしめた
「これでお前はもっと楓に憎まれるな」
「えっ?」
「クスッ」
そう言って倒れ込んだ体を黒い羽が包み込んだ
「俺を怒らせたいの?」
「楓・・・」
「謝るふりをして幻蝶を傷付けるとはね」
「違う・・・楓」
「ムカつく羽・・・本当にムカつく」
「ああっーーー!」
楓は躊躇も無く俺の羽を切り裂いた
宙に舞う白い羽が赤く染まる
羽を奪われた天使はどうなるんだろうね
飛ぶ事も出来ないまま朽ち果てるのを待つしかないのかな
「楓が許してくれるまで俺はずっとここにいる」
「笑わせる」
「うわぁーーー!!」
切り裂かれた体の痛みよりも心が痛いのは何故だろう
「今度会ったら本当に切り刻む」
「なら今やればいいだろ?何故やらないんだ」
「面白い事を言うんだね・・・苦しめる為じゃない」
「楓・・・」
残酷な言葉を残し、消えた楓
それが本心なの?
だけど俺は消えるわけには行かない
嫌われるかも知れないけど俺はもう一度抱きしめて欲しいんだ
楓に笑って欲しいんだ
全て叶わない夢だとしてもね
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