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ショウマを無視してしまった。
「……っ…」
俺は胸が苦しくなり、ぎゅっと胸を押さえた。
「はぁ……謝りたい……。」
こんなに苦しいのは何でなのか、俺には分からなかった。
ふと、今朝のことを思い出す。
今朝、起きたら結構早かった。辺りがまだ暗いほどに。
そして、これから一日が始まると思ったら宮廷にいたくなくなって、あの場所、俺のお気に入りの場所へ行ったんだ。
ある日、たまたま見つけたあの場所。緑が好きな俺は、そこへ寝転がってみた。それが心地よくて、その日は寝てしまった。
それからはあの場所は俺の安らぎの場として、よく宮廷から抜け出してはそこで休んでいた。
今朝もそこへ着くと、やっぱり寝転がって、俺は寝てしまった。
ふと、目が覚めると、目の前に見知らぬ男の顔があった。
当然、俺は驚いて。
『……誰だ、お前。』
口をついて出た最初の言葉はそれだった。それを聞くと目の前の男は慌てて『……っ、悪ぃ!』と言って俺から退いた。
こいつは……やっぱり見覚えがないな。
と思って俺は目の前の男に問いかける。
『……で、お前は誰だ?』
そう問うと、目の前の男は素直に名乗ってくれた。
『俺は……っショウマ……』
ショウマ……か。やっぱり、知らないな。
そう思いながらじっとショウマを改めて見つめる。
明るい金色の髪で、金の瞳をした、一見不良のように見える目の前の男。
まだ辺りが薄暗くても分かるくらいに、目の前の男の瞳はキラキラと光っていて、俺はその目に見とれていた。
すると、ショウマは時間が経つにつれてソワソワしだして、頭にハテナを浮かべているのが目に見えた。
それを見て、俺はショウマの表情が何故だか面白く感じて笑いを堪えきれず、ふはっと吹き出してしまった。
『ふ、クククッ』
『な、なんで笑ってんだよ……。』
ショウマがムスッとしながら聞いてくる。
『ククッ、悪い。なんか面白くてさ。』
俺は初めて心から笑った気がした。
笑うって、こんなに気持ちがいいものだったんだな……。
『俺はレインだ。』
一般人に名前を名乗ることなんて、ほぼほぼゼロに等しいのに、何故かショウマにだけは、自分の名前を覚えてもらいたいと、思ってしまって無意識に名乗っていた。
「明日、もう一回だけ……。」
そう呟いて、明日のことを考える。
あの場所に、また現れてくれるのだろうか……。
いや、現れるまで何度も通い続けよう。
そう思った。
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