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「断る。生徒と個人的に付き合うような事はできない」
そう言ってスマホを引ったくろうとしたら、ひょいと上に持ち上げられる。
慌てて手を伸ばしたが、座っていることもあり届かない。
「今時生徒とメッセのやり取りくらい先生だってしますよ?カミヤンだってクラスのグループ入ってるし」
「人は人だ。俺はしない。いいから携帯を返せ」
「わっ。ちょっと、危ないですって」
七海が高く持ち上げているため椅子から腰を浮かせて俺も追いかける。
ギシリとパイプ椅子が音を立てて、だが後ろに逸らすコイツのせいでその身体に覆いかぶさるような形になってしまう。
「ちょっ――」
「うわっ」
グラリと七海の身体が後ろに浮く。
突然の浮遊感に、ひやりと背筋に冷たいものが走る。
そのまま七海の座っているパイプ椅子が後ろに傾き、俺ごと後ろになだれ込んだ。
――ガシャン、とすごい音が室内に響く。
「…いって」
七海が呻いて、だが俺の方は七海に乗り上げるような形で転んでいるため衝撃はなかった。
横になったパイプ椅子が隣に転がっている。
「す、すまない。大丈夫か」
慌ててそう言って顔を覗き込む。
俺のせいで生徒に怪我をさせてしまうとか、あってはならない事態だ。
「え…ああ、大丈夫ですけど…って心配してくれるんすか?」
「当たり前だろう。お前はバスケ部のエースでもあるし、怪我を追わせてしまったら大変だ」
そうなったら神谷に合わせる顔もない。
真面目にそう言ったら、七海はふっと表情を緩める。
「大丈夫ですよ。みーちゃん軽いですし」
その返答は少し心外だが、それでも何でもないようでホッとする。
が、不意にその手が俺の尻を撫でた。
慌てて身体をどけようとすると、逃げないように腰を抑えつけられる。
「――何を」
「なんだかこれ、始業式の逆ですね」
「は?」
言われて気付く。
確かにこの体勢は、七海が遅刻寸前で俺に飛びかかってきたあの始業式の日と同じだ。
だがそんな言葉で騙されない。
「この手はなんだ。尻を撫でるな」
「いやー、乗っかられたらムラムラしちゃって」
「――は?ふ、ふざけるな」
身の危険を感じて、慌てて退こうとする。
だが七海はガッチリと俺の腰を逃さないまま身体を起こした。
当然抱きかかえられるような形で対面するわけだが、この体勢はまずい。
というか数学準備室の鍵は閉まっていないし、こんなところ誰かに見られたら本気で懲戒免職待ったナシだ。
「は、離せっ」
「せっかく捕まえたのに離しませんよ。みーちゃん気持ちいいこと好きみたいだし、そっちのほうが俺の話聞いてくれますかね」
「おいっ、やめ――」
顎を取られ、噛み付くようにキスをされた。
必死に抵抗しようとしたが手首を掴まれる。
ものすごい馬鹿力だ。
さすが現役で運動しているだけあって、高校生男子の力は馬鹿にできない。
いや感心している場合か。
「…っふ、やめ…っ」
口の中を這う舌が薄い粘膜をくすぐり、知ってしまった気持ちよさが呼び起こされる。
ふわりと意識が浮き、堪らない感覚に眉根を寄せる。
コイツにこんなキスをされたのは三回目だ。
それでも全く慣れない。
あっという間に意識を持ってかれそうになり、慌てて俺は唇を離した。
「わ、分かった。お前の話は聞いてやるから…っ。ちょっと待て…っ」
「んー…?話、なんでしたっけ」
トボけたようにそう言って、俺の手首を掴んだまま再び口付けられそうになる。
「連絡先っ、連絡先知りたいんだろう」
慌ててそう言ったら、気付いたようにパチリとその目が開いた。
「えっ、いいんすか?やった。嬉しいですっ」
あっという間に喜んだ顔になると、あんなに離さなかった俺の腕をさくっと離して自分のスマホを取り出す。
コイツが単純な奴で助かった。
自分のスマホを返してもらって、仕方なく連絡先を交換する。
そもそも連絡先交換から始めると言ったが、俺にあんなことをしておいてコイツの中ではまだ始まってなかったのか。
「余計なことを送ってくるなよ」
「というか今時メールですか?アプリ取ってくださいよ」
「何だそれは。面倒だ」
きっぱりと言ったら、可笑しそうに笑われた。
そんなに笑われるような事を俺は言ったか。
「頑固親父みたいなこと言わないで下さいよ。メール送るほうが面倒だと思いますよ?」
「…そうなのか?」
「俺は連絡先知れれば別になんでもいいですけどね。簡単なんでやってあげましょうか」
そう言われて、それならとスマホを差し出す。
少しの操作の後、スマホを返された。
簡単な説明をされて、なるほどと頷く。
仕事では到底使えないが、教師同士でも質問程度ならこっちの方が間違いなく楽だろう。
そういえば前からよく、このメッセージアプリを取っていないのかと言われていた気もする。
やっぱり若者だけあって、こういうことには詳しいなと素直に感心する。
「じゃあ連絡先も交換したことだし、続きしますね」
「――はっ…?」
そう言われて、再び七海に押し倒された。
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