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あろうことか七海にもたれかかってそのまま爆睡してしまい、自分の見張り時間前に起こされて目を覚ました。
ありえないことをしたと気付いて真っ青になる俺とは反対に、七海はやけに嬉しそうだった。
「寝顔可愛すぎて襲っちゃおうかと思ったんですけど、さすがに体調悪そうだったんでやめときました」
「いやそれ以前になぜこの時間まで起こさない。お前ずっとここにいたのか」
「そうですけど。だってみーちゃん連れて部屋に戻るわけにもいかないですし。それに今戻ったらカミヤンにバレるじゃないっすか」
確かに今戻るくらいなら俺の見張り時間になってからのほうがいい。
というかもう今更だが完全に俺が七海の抜け出しに加担してしまっている。
「…俺は生徒の前でなんてことをしてしまったんだ」
「別にそんな深く考えなくていいんじゃないっすか。俺相手だし」
それは自分を特別扱いして見ろということか。
ガックリと項垂れる俺とは反対に全く気にしていない様子の七海を横目でじろりと見遣るが、そもそも自己管理が出来ていない自分が悪いので責めることはできない。
というか俺が寝てる間ずっと隣で動かず待っていたのか。
色々思うところはあるがともかく七海は俺の見張り時間に部屋に戻すとして、時間もないので話をつけて先に戻る。
慌ててシャワーを浴びてから神谷の元へ行くと、じっと顔を見つめられた。
「少しは仮眠とれたみたいですね。お酒のおかげでしょうか」
「…そっ、そうかもしれないな」
また何か言われるのではないかと内心ハラハラしつつも、心配だからこのまま見張りを続けるという神谷に大丈夫だからと背中を押して部屋に戻す。
せっかく心配してくれているのに神谷に悪いことをしてしまった気がして、どうも顔を合わせづらい。
「ん、紺野先生また何か隠してます?何かありましたか?」
「何もないっ。いいから寝ろっ」
ニコニコと微笑みながら言われて心臓が跳ねたが、必死に平静を取り繕う。
なぜアイツはすぐに分かるんだ。
読心術でも心得ているのか。
その後また居座りそうだった七海を今度こそ無理矢理部屋に戻して、なんとか怒涛の三日目の夜を終えた。
修学旅行最終日は班行動ではあるが全体通して行く場所は同じで、世界遺産である城を見学してから大通りで土産屋等を巡る生徒を教師陣は見守っていた。
空港までの時間を最後まで余念なく話し合いをしていたが、一先ず生徒に大事もなく修学旅行最終日を迎えられたということでどこか空気は和んでいた。
「――え?数学教師?七海が?」
「そうだ。その相談を受けていたんだ。同じ立場になると知ったら嬉しくてな。アイツを贔屓しているように見えたのは悪かった」
昼食を終えて、神谷と一緒に戻りながら昨日の夜のことについて俺は話をしていた。
神谷に七海とのことをあれだけ疑われたままだし、これで少しは疑うのをやめてくれるかと思って話してみたわけだ。
どの道進路については担任ならそのうち分かることだし、神谷はなるほど、と顎に手を当てて俺の顔を見つめる。
ギクリとしたがそのまま耐えていると、少ししてから緩く息を吐き出した。
「…分かりました。では一先ずそういうことにしておいてあげます」
「な、なんだその物言いは。信じてないだろう」
「ふふ、どうでしょうか」
神谷は相変わらず読めない表情で微笑してみせる。
やはり俺の心の内を読まれている気がしてならない。
「それにしても七海が数学教師ですか。面白いですね」
「そうだろう。ああ、そういえばお前のようにバスケ部の顧問にもなりたいと言っていた」
「へえ、それはなんだか俺も嬉しいですね」
言いながらふと神谷は賑やかに騒ぐ生徒へと視線を向ける。
俺も一緒になって視線を向ければ、ブンブンと俺に手を振る七海の姿が見えた。
アイツめ。
だから神谷に疑われるから目立った行動をするなと言っているのに、何故全く学習しない。
周りの生徒は神谷に手を振っていると思っているらしいが、どう見てもアイツの視線は俺を捉えている。
サッと視線を逸らすと、クスリと笑い声が落ちてきた。
「ほんとどちらも分かりやすいですねえ」
それが一体なにを指すのかなんて、もう考えたくもない。
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