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----side七海『夏休み前に』
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「ストーカーってなに?」
昼休みが終わってみーちゃんとあーちゃんがしていた約束が気になって聞いてみる。
「んー、七海先輩には内緒にしときまーす。なんだかんだ仲良しだし」
「え?誰と?」
「それより期末テスト。お互い頑張りましょーねっ」
あーちゃんは茶目っ気たっぷりの笑顔を俺に向けて、機嫌良さそうに廊下を走っていく。
ぴょこぴょこと走っていく姿に女子よりも男子の視線のほうがあーちゃんに集まっている。
さすがはバスケ部の裏アイドル。
みーちゃんのおかげで数学教師っていう将来の目標が決まって、めちゃくちゃ勉強もやる気がでた一学期の期末テスト。
たぶんこんなに頑張って勉強してるのは中三の受験以来だ。
あの時は絶対にこの高校に入ろうって意地になってたな、なんて思い出す。
俺が超絶勉強してわざわざ特進科に入ったのは、特待生で入学すれば授業料免除制度があったからだ。
父子家庭だから金に関しては困ってないけど、正直親父のことはあまり良く思ってない。
なるべくアイツの金を使いたくない、なんて思ってこの学校に入ったけどそんな考えは子供だったなーなんて思う。
どう足掻いたって子供のうちは金が掛かるし、それに大学に行くなら結局アイツに頭下げないといけない。
「ま、いっか。最終的に全部返せばチャラってことで」
あっさりと割り切って前を向く。
思うところはあるけど暗い話は苦手だ。
終わりよければ全て良しってことで。
期末テストはあっという間だった。
中間テストはみーちゃんの気を引きたくてガッツリ数学だけ勉強したけど、受験にいよいよ成績も響いてくるからさすがに一教科だけってわけにはいかない。
今までやってこなかった分の遅れを取り戻すのは思ったよりしんどくて、気付いたけど部活もある俺には全然時間が足りない。
そういや去年バスケ部のエースだった憧れの先輩も特進科でめちゃくちゃ頭良かったし、こんな感じだったのかなーなんて思い出す。
部活後によく勉強してたっけ。
すげー忙しそうだった。
あそこまで頑張れるかと言われると微妙だけど、それでも最近はみーちゃんが会うたびに笑顔を見せてくれるから頑張ろうと思える。
みーちゃんは認めてくれないけど、あんな真っ赤な顔でぼーっと見られたらさすがに俺だってそうなんじゃないかなって気付く。
最近じゃ顔見せるだけで笑ってくれることもあるし、触れても前ほどには抵抗しない。
なにより嬉しいのは、みーちゃんが笑顔を見せるのは絶対にこの学校で俺だけだっていうことだ。たぶん。
「あー、やべ。ムラムラしてきた」
「お前いつもムラムラしてんな」
テスト後で部活が再開したバスケ部。
思ってることをそのまま口に出したら、隣りにいたキャプテンにドカッとケツを蹴られた。
地味に痛い。
「キャプテンだって男だからするっしょ。むしろゴリラの発情期って一年中って聞いたし」
「俺は人だっ。ゴリラじゃないっ」
ゴリラのように鼻息荒く言われた。
実際テスト勉強もあったけど、ここ最近みーちゃんがさせてくれないから相当溜まってる。
テスト後は教師の方が忙しそうで今は時間も合わないけど、落ち着いたら絶対に犯す。
「お前なんか不穏なこと考えてないか?引退試合近いんだからしっかりやれよ」
「あーあ、特進科はもう引退かー。もっとキャプテンとバスケやりたかったなー」
「な、何言ってんだお前」
急に上擦った声になったからちらっと隣を見たら、なぜか赤い顔で涙ぐんでる。
あれ、泣くの早くね?
「寂しくなるからそういう事言うのやめろっ」
キャプテンはどうやら情にもろいらしく、そう言いながら誤魔化すようにコートの中へ入っていった。
実際キャプテンのおかげもあって部活は楽しかったから、引退を惜しんでくれるのは素直に嬉しい。
つっても普通科のキャプテンも一ヶ月遅れで引退だけど。
開きっぱなしの入り口から入り込む風が、暑い体育館内をほんの少しだけ和らげる。
テストも終わって引退試合も終わったらいよいよ夏休みだ。
この間修学旅行が終わったと思ったらテストが来て、いつの間にか暑くなってて夏休みだ。
みーちゃんに会ってから時間があっという間だったなー、なんて思う。
俺が高校生でいられてみーちゃんと当たり前に会える時間には限りがあるけど、それでもこのまま何事もなく行けば、きっとみーちゃんも俺のことを見てくれる。
あれだけ意識してくれて、抵抗もしなくなってきていて、笑顔も見せてくれて。
このままいけば絶対好きになってくれるはずだ。
――と、スマホが鳴った。
キャプテンの怒る声が飛んできて、慌てて確認する。
やべ、ジャージのポケットに入れっぱなしで忘れてた。
俺に送ってくる人は結構いるけど、一番大事なみーちゃんからは思い返してもたぶん修学旅行の一回だけだと思う。
でも最近みーちゃんとはめっちゃいい感じだし、もしかしたら――と願いを込めてスマホを覗いてみる。
「えっ」
そこにある名前に驚いた。
めちゃくちゃ珍しい人からメッセが届いた。
残念ながらみーちゃんじゃなかったけど、大好きな人だからテンションが上がる。
『久々学校に行くわ』
スマホに届いたその文字は、俺の元運命の人。
単調な文章は相変わらずで、そういえばこの人もメッセ送ってもみーちゃんみたいに全く返してくれる人じゃなかったなーと思い出す。
卒業している先輩だからなんの用事で来るのかは謎だけど、会えるのはすげー嬉しい。
先輩に出会って過ごした去年の事を思い出して、キャプテンの怒る声も忘れて秒で返信してしまった。
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