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「あ、すみません先輩。まだ痛いです」
シンジは白々しく嘘を言う。
「誰か呼んで来るです」
英雄氏は心配でそう言ったが、シンジには余計なお世話でしかない。
「大丈夫です、初日からこんな風にお腹痛くなった事を他の人に知られたら、クビになるかも知れないんで」
「…そうかも知れんです。ここの人はしのめさんと照哉さん以外は冷たかですもん…良かです。黙っとくですよ」
英雄氏はそう言うとトイレ掃除を丁寧に終わらせた。
***********
喉が乾く…水、飲みたいかも。
東雲はベッドの中で何度も寝返りをうつ。
水が飲みたくて仕方ないのだけど、起き上がるのが面倒くさい。
「ほら、水」
声と共に頬に冷たいグラスがあたる。
ビクンとなって目を開けるとグラスを持った照哉の姿。
「起き上がれるか?」
照哉は心配そうに東雲の顔を覗き込む。
何で…照哉さんが水を持ってるんだろう?
確かに水を物凄く飲みたい。
東雲は起き上がり、水を受け取る。
「ありがとうございます」
「水、水言うからさお前」
照哉は水を飲む東雲の隣に座る。
あ、声に出してたのか…と東雲は思った。
「具合どうだ?」
照哉に聞かれ、大丈夫ですと東雲が答えると、照哉の顔が近づいた。
えっ?…
一瞬、体が硬直した瞬間に照哉の額が自分の額にくっついて、照哉の体温が伝わる。
「ちぇ、完璧下がってやんの」
額をくっつけたまま照哉は呟く。
「ててて、照哉さん」
東雲は慌てて照哉から離れる。
間近で見る照哉は相変わらず綺麗で、伏せた目蓋は睫毛が長かった。
「何今更照れてんだよ、ずっと一緒に寝てただろ?」
照哉は笑う。
「抱っこしてえ、とか…1人は嫌だとかさ、めっちゃ可愛かったぞ」
ぐはっ!なんだソレ!
そんな事…
きっと言った。
俺の悪い癖…。
熱があったり寝ぼけたらそんな事を言うらしい。
「忘れて下さい!」
東雲は顔を真っ赤にして言う。
「やだね!可愛かったんだからいいじゃん」
「忘れて下さいよ!」
必死に頼む東雲に照哉は、
「チュウしてくれたらな」
と言った。
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