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「ててて、照哉さん」
うろたえる東雲に照哉は、
「美味い」
とニヤリッと笑う。
「しょんぼりするからだよ、まだ具合悪いんだから、こぼしたりするだろ?」
照哉は悪戯っ子みたいな顔で笑う。
そして東雲の頭をよしよし、と撫でる。
「新婚カップルみたいだな」
会長の声に二人は同時に振り向く。
「人の部屋でいちゃつきやがって」
会長は上着を脱ぎ近くのソファーに投げる。
「おかえりなさい。どこから見てました?」
恥ずかしそうにする東雲と反して照哉は普通に話す。
「東雲がこぼしたくだりからだな。バカップルめ」
会長は鼻で笑い、テーブルにつく。
「東雲の手料理か。俺にも食わせろ」
「あれ?食べて来なかったんですか?」
照哉は立ち上がり、食器を取りに行く。
「あ、照哉さん俺が…」
東雲は立ち上がろうとするが、
「お前は座っていろ、病人が!」
と低い声で会長に言われ大人しく座り直す。
「外食は飽きた」
そう言う会長の前に照哉は料理を置く。
東雲は不安げに会長を見てしまう。
外食が多く、グルメと有名な彼の口に自分が作った料理が合うだろうか?
そんな心配。
会長は東雲の心配をよそに食べ始める。
「しーのーのーめぇ」
キラリと目を光らせ東雲を見る会長に東雲は恐怖を感じ、思わず照哉の服を掴む。
照哉はすぐにその様子に気付き、つい、嬉しく思ってしまう。
可愛い!と感じて、服を掴む手をギュッと握った。
手を握られ、東雲は…何だか安心した。
「はい?」
返事を普通に返せた。
「美味いぞ東雲。お前、どっかで習ったか?」
会長は怒るどころか褒めてくれた。
「あ、亡くなった父に」
そう答えると会長はそうか…と答え、出された料理を残さず食べた。
*******
「東雲さん…会いたいーっ!」
「うるせえ!」
休憩所で叫ぶ幸太にユウヤの注意が飛ぶ。
「だって、だって東雲さんに四日も会ってないんです!」
幸太な小さい子供のように駄々をこねている。
「たった四日だろ?」
ユウヤは呆れている。
「四日もです!」
幸太はテーブルをガツンと叩く。
そして、すぐにため息を吐くとテーブルに顔を伏せる。
「いいなあ照哉さんは一緒にいれて」
ため息と一緒に零れた言葉。
「なんで照哉さんが看病してるんスかね?俺でもユウヤさんでも良いじゃないですか?」
「会長は却下なのか?」
「会長はダメです!襲われます」
幸太は顔を上げた。
「看病してるのは二人が付き合ってるからだろ?」
「だから付き合ってません!」
幸太はテーブルを強く叩いた。
誤解なのに!
幸太は二人が付き合っているという誤解が嫌で仕方ない。
「幸太、認めたくない気持ちは分かるけどさ、お前…勝ち目ないぜ。なんせ相手は照哉だぞ」
「だって、本当に付き合ってないですもん!それに勝ち目ないとか言わないで下さい!そりゃ…照哉さんはカッコイイし…」
勢いよく言ったものの、虚しくなる。
照哉は誰が見てもカッコイイ!
「カッコイイよな照哉。二十代の頃のキムタクみたいだしな」
ユウヤも認める照哉のかっこよさ。
「世の中不公平です!あんなカッコイイ人反則です」
幸太は訳の分からない八つ当たりをしている。
「幸太も可愛いぞ」
ユウヤは幸太の頭を撫でる。
じわっとくる。
これが東雲だったらなあ。
なんだか泣きそう…と思った瞬間に、
ユウヤの顔が間近にあり、唇にチュッと温かいモノが触れた。
硬直する幸太。
触れたモノはユウヤの唇。
き…キスされたーー!
幸太は危うく叫びそうになった。
「ヤキモチやく幸太可愛いな」
そう言って、またチュウをされた。
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