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Ice-bound 4
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「っ…ぁ…」
自分の壮絶な生い立ちを話し終えた零奈は、とうとう口をつぐんだ。
話しすぎたためか、記憶を掘り起こしたためなのか、頭を抑えながら零奈はぽろぽろと涙をこぼし始める。
自分が涙を流していることに気が付かなかったのだろう。
落ちた雫を確認するように、目元に手を持っていき、
それでやっと自分が涙を流していることに気が付く。
「ぁれ?…はは…。
もう、泣けないくらい…っ…なぁ…いた…はず…なの、にな…っ…」
無理やりに笑う零奈の顔には、どんな表情をすればいいのか、困惑している仮面が張り付いた笑顔を自虐的に保ち、
行きどころの無い心のぶつけ所を探してさまよっているように見えた。
そんな状況の中、魅冬は1人冷静だった。
時計を見、もう診察終了時間までわずかだと知る。
「零ちゃん、苦しいのに話してくれてありがとう。先生、これからのことについて考えてみるから、今日は帰ろっか。」
まぁ、考えるまもなく対処方法は決まってるんだけどね。
そんな魅冬の心も知らず自分のことにいっぱいいっぱいの零奈はうん…と、小さく頷くことしかできなかった。
「じゃあ、部屋に戻ろっか。研しゅ…」
研修医に零奈を小児科医に送って貰おうと思った魅冬は目を疑う。
泣いている零奈を見ながら、うんうん。
と、頷き、研修医が静かに涙を流していたのだ。
自分に何かを喋れと、ジェスチャーを送られているのかと感じたのか、研修医は喋り始める。
「零奈ちゃん。苦しかったねぇ。でも、もう大丈夫だからね。先生たちが零奈ちゃんの苦しい心を取り除いてあげるから。」
何を言っているんだ。この人間は。
一瞬、研修医が何を言ったのか分からなかった魅冬は、その言葉の意味が分かった時、冷めた目付きで研修医を見つめる。
ぐっと涙を拭った研修医は、何かを決意したように、熱い視線を魅冬に向ける。
そして、自分に冷めた目を向けられていることに気がついた研修医は、自分が何か失敗でも、やらかしたのか。と、熱い視線を引っ込めて身を縮こませる。
今の状況の研修医に零奈を小児科医に送らせるのは、少し酷だな。と思った魅冬は、
自分が零奈を送って来るからPCにちゃんと入力してなよ。
とだけ言い残し、零奈と共に診察室を出る。
潔癖症の魅冬は、子供のいる場所が苦手なので白衣のポケットから袋に入れられたマスクをし、小児科医に向かう。
その間も零奈は動揺が治まらないのか、ずっと下を向いていた。
そんな零奈を見てもなお、魅冬は何も感じない。
小児科医の場所につき、零奈の部屋を聞こうとするが嗚咽が治まらず喋ることができない。
めんどくさいな。と、思いながら、誰かに零奈の部屋の場所を聞こうと近くにいた研修医に声をかける。
「ねぇ。この子の部屋分かる?」
子供達とじゃれあっている近くの研修医に聞いた。
「ん?なぁに?…っ」
魅冬の方を向き、ほんわかな返事をした研修医は一時停止する。
「???」
なぜ研修医が、一時停止したのか分からず(精神科医は人の心を読むのが得意)
とりあえず、後ろに誰かいるのかと背後を確認する。
でも、それらしい人はいない。
ますます疑問がふえ、その理由を聞いてみたい気もするが、これ以上子供のいる空間にいたくない。
「分からないの?じゃあ、ほかの先生かナース…」
「っ…いやいや。分かります。零奈ちゃん行こっか。」
そういい、研修医はさっきの態度を隠すかのような笑顔で研修医は零奈の部屋まで案内してくれた。
零奈の部屋にたどり着き、零奈をベッドに寝かせ、
「今日はゆっくりしてね。」
とだけ伝えると、放心状態の零奈から魅冬は離れていく。
「はぃ…」
と、か細い声を出した零奈の声は魅冬に届くことなく虚無の空間に消えていった。
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